22 謁見
『決闘』は無事終了しましたが、なにやら大ごとになってきました。
突然現れたルシェリさんからのメッセージは、ツァイシャ女王様からの至急のお呼び出し。
立会人の人たちに事情を説明してから、すぐに『システマ』転送、
モノカたちやヴォルさんといっしょにエルサニア王都へ。
ツァイシャ女王様との謁見で、今回の件は単なる冒険者同士の揉め事では終わらないと知りました。
エルサニアとキルヴァニアは、不可侵の取り決めこそ結ばれていますが同盟国ではないそうです。
軍事的な脅威に関係しないのなら人や物流などの経済活動は自由に行いましょうという、ユルい取り決めからの活発な交流だったそうなのですが、
最近キルヴァニア国内で、冒険者を束ねて大きな勢力を持つようになった"ファミリー"という組織が台頭して、様々な問題を引き起こしているとのこと。
軍隊ではなく冒険者集団なのでエルサニア側としては対応に苦慮していたみたいです。
オーバンの街の住人に直接の被害が出ていることが正式な『決闘』の場で明確になったことで、騎士団派遣による治安強化などでエルサニアとして正式に動くことが出来るようになったそうです。
"ファミリー"への対応の件はキルヴァニア側から正式な声明が無いため、今はまだこれ以上は積極的に動くことが出来ないのだとか。
あの地域での冒険者活動はくれぐれも慎重に、とのお言葉をいただいて謁見の間を退出。
その後、モノカ邸にて今後の相談を。
もちろんヴォルさんのみんなへの紹介も兼ねてだったのですが、さすがはヴォルさん、あっという間に乙女たちから取り囲まれちゃいましたよ。
すみませんヴォルさん、ここを訪れた殿方には回避不能のイベントなのです。
「カミスは冒険を続ける?」
ヴォルさんたちが困っているなら手助けしたいな。
突然呼び出したり、わがままばかりでごめんね、モノカ。
「冒険するなら準備をきちんと整えること、約束して」
うん、今回の旅で良く分かったよ。
優先すべきは何かを考えて、いざという時に全力が出せるよう準備を怠らないことが重要、だよね。
「あと、私たちにはキルヴァニア国内での『転送』許可が降りていないこと、忘れないで」
了解です。
「それと、可愛い獣人さんたちには要注意、だよ」
えーと、肝に銘じます。
「それじゃ、そろそろヴォルドルフさんを救出しないとね」
ヴォルさーん、お待たせしました。
「……感謝します、カミスさん」
大人気ですね、さすがヴォルさん。
ごめん、クリス。
ヴォルさんとの立ち合いは、また今度ね。
妹さんたちが待ってると思うんだ。
「カミスパパ、また行っちゃうの?」
ごめんね、ハルシャちゃん。
ツァイシャ女王様から、オーバンの街への『ゲートルーム』の設置許可をいただけたから、すぐにまた会えるよ。
それじゃ、行ってきます。