14 ふたり
身支度を整えたら、早朝の出立。
お見送りしてくれた宿の人たちにご挨拶。
今度はルルリエさんといっしょに来ますね。
それでは、出発です。
……
天候良好、絶好の旅日和ですね。
歩幅が広いヴォルさんは、僕のペースに合わせて進んでくれています。
口数は少ないですが、優しい人なのです。
そういえば、ヴォルさんは武器を持っていないようなのですが。
「拳闘士だ」
すごいな、さすがは獣人さんですね。
「カミスさんも相当鍛えているようだが」
僕自身は全然まだまだですけど、すごい人たちとの鍛錬の経験が宝物、です。
「ぜひお会いしたい」
僕も、ヴォルさんをみんなに紹介するのが楽しみです。
……
旅の途中、何度か魔物に襲われましたが、危なげなく撃退出来ました。
ヴォルさんの強さはもちろんなのですが、視野が広いと言うのかな、いっしょに闘いやすいように導いてくれる感じです。
もしかしてパーティーリーダーの経験も豊富なのですか。
「いろいろやった」
うん、人に歴史あり、なのですね。
とても頼りになるヴォルさんなのですが、完璧超人ではないのです。
えーと、方向音痴と料理音痴、でしょうか。
「申し訳ない……」
いえいえ、ひとり旅では得られない経験が出来るのって、楽しいですよね。
……
やはりふたり旅だと、道行も野営もとても楽なのです。
って言うか、すごく楽しいですね。
この安心感はヴォルさんだからかも知れませんが。
それに、いつもと同じものを食べても、より美味しく感じられますよ。
「この惣菜パンも美味い」
ソースが自慢なんです。
「孤児院の子たちにも食べさせたい」
旅を急ぎましょうか。




