11 遭遇
魔灸の森をケルミシュの村の周辺から探索中。
この辺は魔物討伐の冒険者たちが始終通ってますので比較的安全なのですが、油断せず慎重に、ですよ。
もちろん『トラペゾ』での魔導探索も忘れずに、です。
各地のギルドには周辺の魔物や採取物に関するガイドブックやパンフレットが置いてありますが、
ケルミシュのガイドブックはかなり分厚いのです。
魔灸の森の豊かさが分かりますね。
脅威も多いってことなんでしょうけど。
それにしても、お目当てのきのこ、見つかりません。
シナギさん曰く、
『素人はきのこに手を出してはいかんのです』
きのこはまぎらわしい類似種が多くて、食用と猛毒とを見分けるのはベテランでも難しいのだとか。
幸い『アグラタケ』と紛らわしい毒きのこは無いそうなので、ただひたすらに探すべし、なのです。
……
夢中になって探していたら、いつのまにかお昼を過ぎてました。
この辺で休憩しましょうか。
森の中にある小川のほとり、宿のお姉さんが作ってくれたお弁当を取り出しましてっと。
それでは、いただきます。
ぐー
はて、どこからかお腹の鳴る音が。
僕じゃないですよ、たぶん。
魔導探索に敵対的な表示はないのですが、いわゆる生体反応があっちの方向に。
じー
えーと、目が合っちゃいました。
獣人さんですね。
体格の良い男の人ですよ。
こんにちは。
「……」
警戒しているのかな。
良かったら、これ、食べます?
がつがつむしゃむしゃ
夢中で食べてますよ。
良かったら、お茶どうぞ。
ごくごく
すごい食べっぷりですね。
うん、あの宿の食事、美味しいですもんね。
「……ありがとう」
どういたしまして。
もし足りなかったら、干し肉もありますよ。
「……すまん」
干し肉、どうぞ。
もぐもぐもぐ
お茶、おかわりどうぞ。
「この恩は、忘れん」
いえいえ、困った時は助け合い、ですよ。
「なにか困っていることはないか」
えーと、まずは自己紹介かな。
なんだか、シナギさんがヒメルミネアさんと出会った時と状況がそっくりなんですけど。
もしかしたら、森の精霊さんだったりして。