01 冒険者
『リヴァイス 48 特使勇者と漆黒のまっしぐら』の続きで、
『若旦那』カミスのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、カミスです。
異世界に召喚されてから、いろいろなことがありました。
スゴい人たちと知り合えたり、びっくりするような体験をしたり。
ただ、身の回りで普通じゃない出来ごとばかりが起きていたので今まで気が付かなかったのですが、どうやら僕には冒険者として足りていないことが多いみたいなのです。
先日、冒険者ギルドの依頼で初心者向けダンジョンに潜ったのですが、とてもワクワクする楽しい冒険でした。
今までもチームカミスとして討伐や採取などの依頼をこなしてきましたが、それとは違うワクワク感だったのです。
理由はたぶん、経験不足でしょう。
仲間たちが優秀過ぎて、本来冒険者として段階を踏んで経験しておくべきことをすっ飛ばしちゃってたのではないかと。
もちろん、今の僕が楽しい生活を送れているのはみんなのおかげなのですが、ちょっともったいないかなって。
まずは冒険者活動について基礎から学んでみたいと思ったのです。
というわけで、冒険者カミスとして身の丈に合った活動をするための準備を始めました。
まずはみんなに、僕の決意を話してみます。
「身の丈に合った冒険活動って、ひとりで依頼を請けたいってこと?」
ちょっと違うよ、モノカ。
自分がやりたい依頼を選んだら、自分で考えて準備して、必要ならみんなの手も借りたいなってこと。
今の自分の実力を確かめながら冒険者としてスキルアップしたい、って感じかな。
「今のカミスの実力は、修練を共にした者なら皆理解しています」
「必要なのは経験に裏付けられた自信を持つことでしょう」
「私は賛成ですよ」
ありがとう、シェルカ。
たくさん冒険して、いっぱい経験を積みたいな。
「つまりカミス君が冒険者として一皮剥けたってことかな」
「これは、メリルさんにお赤飯をお願いしなくては」
もしもし、アランさん。
ちょっと大げさじゃないですか。
えーと、なんだか大ごとになってきちゃいましたけど、
みんなが好意的に受け止めてくれてうれしいです。
それでは、まずは装備の見直しをしたいのでアリシエラさんのところに行ってみましょうか。
……
かくかくしかじかなのです。
よろしくお願いします、アリシエラさん。
「つまり、異常に強力な武器や過剰に便利な道具ではなく、冒険者活動をいい感じに後押ししてくれるモノを御所望なのですねっ」
おっしゃる通りです、さすがはアリシエラさん。
理解の速さも天才の証し、ですね。
「むふっ、ダメですよっ、おだてると調子に乗っちゃうのは良くご存知でしょっ」
「少しだけ待っていてくださいね、今のカミスさんの装備を再検討して、改善点が判明次第バッチリ改良しちゃいますからねっ」
よろしくお願いします。
手持ちの魔導具を全部預けたら、後はアリシエラさんにお任せなのです。
さて、お次は、と。
冒険者暮らしに必要なアレコレを、先輩方に学びましょうか。