06
次の日、俺はクエストを受注するために冒険者ギルドへ向かった。他の冒険者達は既に出掛けたらしく、ギルドにいたのはまばらだった。
俺はクエスト用紙が張られた掲示板に向かう。そこには冒険者に向けたクエスト用紙が貼り出されていて、この中から冒険者は自分のやりたい仕事を選ぶ事になっている。
俺は一通り目を通した後に初心者向けのクエストを選び、受付嬢のエリーがいるカウンターに向かう。
「おはようございます、シルヴィアさん」
「おはよう、エリー」
「ふむふむ。ポロロン村の洞窟調査ですか。でもEランクの依頼ですよね?」
「まあ俺は飛び級でBランクになった様なものだし、最初は簡単なやつから始めて行こうと思ってな」
「なるほど」
他にもドブ掬いなどの仕事もあったが、流石にそちらはやりたく無かったので見なかったことにした。
だがこうして
さて。後はある程度の装備や道具が欲しいな。服や靴はこのままで良いとして、非常食の一つや二つは欲しい。
と言うことで街一番の商業施設にやって来た。
そこはまるでデパートの様に賑わっていて、鮮肉の売り場では女性達が争う様に良い感じの肉を取り合っていた。どこの世界でも主婦は似たようなものだな、と思いながら俺は「冒険者向け」のコーナーへと向かう。
そこには剣や弓矢、ロープやリュックなどが売られていた。
ただ、これらは量産型の安物だ。ちゃんとしたものを買うならば、本当の鍛冶屋やら道具屋に行くのが一番良いだろう。
まあ今回は安物で済ます気だから良いのだが。
俺はとりあえず大きめのリュックを買う。さらに十メートルくらいのロープを一本、火おこし用の火打ち石を一セット、鍋と食器類を念の為に二人分、後は非常食の干し肉と硬いパンを買った。
まあ多分、これだけあれば足りるだろ。うん。
購入時に掛かったお金は金貨一枚と銀貨四枚、銅貨が七枚だった。
何となくこの世界での硬貨の価値も分かってきた。
金貨・・・一万円
銀貨・・・千円
銅貨・・・百円
ってところだろうな。
この上にさらに大金貨と白金貨なるものがあるらしいが、一般的なのは金貨までだ。その上は貴族や王族などの上流階級の人間しかお目にかかれることは無いようなので俺には関係の無い話だ、と頭の中からすっぽり消えた。
ただ、この時俺は完全に忘れていた。
ギルドに仲介してもらってソニックバッドをオークションに出店してもらっていると言う事を。
そして、そのソニックバッドがとんでもない値段で競り落とされると言う事を、この時はまだ知らない。
リュックに荷物を入れて、門へ向かった。
ライセンスカードを見せると昨日の門番が青褪めた顔をしたので気分がいい。
ただ、そこで意外な人物に出会った。
「あれ、シルヴィア? クエストか?」
「ああ。そっちは?」
「仕事が無いから散歩だ」
そこにいたのはSランク冒険者のヒュールだった。
「Sランクがそんなことしてて良いのかよ」
「良いんだって。Sランクのクエストなんて滅多に来ないし、大抵は緊急事態のために待機している事が多いんだよ」
そんなものか?
まあ、Sランクが動くような事柄が無いってことはそれだけ平和ってことか。
「それよりシルヴィアは何のクエストを受けたんだ?」
「これだ」
「ふうん。ポロロン村の遺跡か。……よし、俺も行く!」
「は?」
「暇だからついていくわ」
「いや、でも緊急の為にーーーーー」
「いいからいいから」
んんん。良いのか、これ?
いや、まあ、Sランクが着いてきてくれるのなら、何かあった時には安心か」
「……まあ、いっか」
「よっしゃあ!」
怒られたらヒュールのせいにしよう。
ヒュールは俺が何を考えているかも知らずに楽しそうに門をくぐり抜けた。
俺もそれに続く。