05
他の冒険者と会いたくないので、ギルドから遠く離れた《小山羊のお髭亭》と言う宿を借りた。
そこは若い親子三人で経営している宿だったが、エリーからの証言で清潔感の保たれた良い宿だと言う事も知っていた。
「いらっしゃいませ〜!」
出迎えてくれたのは日本なら中学生、十四歳くらいの女の子だ。
「とりあえず二週間くらいかな」
「かしこまりました! えっと、金貨三枚と銀貨四枚になります!」
「えーと、はい」
慣れない手つきで金貨と銀貨を麻袋から取り出しす。
女の子も満面の笑みで接客してくれる。うん。めっちゃ可愛い。
「お姉さん綺麗ですね!」
「そ、そうか?」
部屋に案内するために二階へ階段を上がっていると女の子からそんな事を言われた。
綺麗って、ちょっと照れるな。
「私もお姉さんみたいに綺麗になりたいなあ」
「? もう十分可愛いだろ」
「本当ですか? えへへ。嬉しいです」
え、何これ天使ですか?
純粋過ぎて可愛過ぎるめっちゃ可愛い。
「……俺はお姉さんじゃなくて、シルヴィアだ」
「あ、私はミアです!」
「そうか、ミア。これから俺はしばらくここに住むし、名前で呼んでも良いかな? 出来れば友達になりたいんだ」
「も、勿論です! シルヴィアさん!」
「ふふ。嬉しいな」
こうして、俺はミアは友達になった。
部屋に案内されて、ミアは仕事があるのですぐに下に戻ってしまった。
部屋はワンルームでベッドが置いてあるだけの質素な部屋だったが、清潔感は保たれて窓からは綺麗な川の景色が見える。さらに頼めば朝食と夕食を下の酒場で食べれる。俺にはこれで十分過ぎる最高の宿だ。
部屋をじっくりと観察しているとあるものに目がいった。
鏡だ。いや、正確にはそこに映し出される美少女。
雪が積もるかのような白髪だ。腰あたりまで伸びているが、身長が小さいせいもあってより長く見える。
気怠そうなタレ目をしていて、そこだけは前世の俺によく似ていた。
体系的にはまだ少女だが、それでも整った容姿のせいもあって子供とは思えない。
鏡に映ってきたのは百人いれば百人が美少女だと認めるくらいの完全美少女なのだから。
なるほど。冒険者達があれだけ騒ぐわけだ。
こんな美少女がいたら、俺だって声をかけてしまうかもしれない。
まあ何はともあれ、これから俺は女として、シルヴィアとして生活することになる。
「この容姿にも慣れないとな」
にこりと微笑んでみると僅かに口角が上がった。
表情筋が硬いのかもしれないな、俺。
さて、話は変わるが魔法の確認だ。
生活魔法と言うくらいだから、これから生活するうちに必要になるスキルがあるかもしれない。
「【光源】」
呪文を唱えると手から光の球が浮かんだ。
ふよふよと宙を浮遊する光は俺の思う様に動いた。
ただし俺から2メートルを超えると消えてしまった。三時間を超えても余裕で光を放っていたので、時間的な制限は少なそうだ。
「【洗浄】」
続けて使ったのは洗浄の魔法。
これを使うとその名の通り、身体の汚れが消えた。
一度では服までは綺麗にならなかったので、もう一度使うと服が綺麗になった。
部屋全体に魔法を掛けると、完全に綺麗になるには十一回の魔法を使う必要があった。
さて、問題は魔力の消費量だ。
しかし、光源は時間によって魔力消費が変わり、洗浄は一度で綺麗にできる範囲も決まっているために魔力消費量も決まっている。
【光源】は一時間で5。
【洗浄】は一度で1。
俺の魔力量は体感した感じだと200ってところだ。
魔力が回復するのも一時間あれば10は回復する。
故にその気になれば【洗浄】は二百回使える事になる。【光源】なんて永遠に使えるだろう。
この二つの魔法はこれからの冒険で使えるな。
その後、今日の疲れが溜まっていたのかベッドで横になるとすぐに眠ってしまった。
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