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ブックマークがたくさん来ててびっくりしました。

明日出せるかわからないけど、応援ありがとうございます。


 街並みはよくある異世界ものと同じで中世ヨーロッパの様だ。ただ、この街には商人が世界各地から集まって出店を開いているため、そこだけ見ると面白いものもたくさんあった。  


 目を引いたのは『着物』だ。色鮮やかな花柄や金魚の絵が描かれた着物が売られていた。この世界にも日本の様な国があるのかもしれない。いつか行ってみたいな。


「で、お前は何の目的でここに?」

「別に目的というほどの事は無い。だが、身分証は作って置きたいな」


 ずっと無いままだと何かと不便だからな。


「ふむ。それなら冒険者になるのがいいな」

「冒険者っ」

「何だ、知ってるのか?」

「まあ、名前だけは」

「冒険者ってのは世界各地に飛び回る仕事だからな。各国に入国する時に、冒険者組合が作る“ライセンスカード”は身分証の代わりになるんだよ」


 なるほど。

 確かに冒険者にとって、便利な仕組みかもしれない。




「ここが冒険者ギルドだ」 


 そして到着した、これまで街を歩いて来て一番デカい白いタイルの建物。

 その看板には異世界語で《冒険者ギルド ダイナ支部》と書かれていた。


 ギルドの中に入ると次の瞬間に来るのは熱気と酒の匂い。そこは半分居酒屋の様になっていて、冒険から帰って来た冒険者達が酒を飲んで楽しんでいた。

 血濡れた剣や槍が抜き身で立て掛けられている所を見て、俺は恐怖よりもワクワクが湧いて来た。

 冒険者だ。物語でしか見れなかった、冒険者達がここにいるんだ。


 そして、ヒュールに続いてギルドの中を進んだ。ヒュールは人気者らしく、あちこちから声を掛けられる。


「ヒュールさんだ!」

「おう」

「おかえり!」

「ただいま」

「あの氷塊はどうだった!?」

「特に異常は無かったし、氷河竜帝が目覚めた形跡も無かった。おそらくは封印が一時的に急激に弱まったんだろう」


 氷塊?


「ん、ああ。ついさっき巨大な氷塊が現れたんだ。それこそ山脈くらいの巨大なやつがな。だから封印された氷河竜帝が目覚めたんじゃ無いかって大騒ぎになって、俺が向かったんだ」


 …………うん。それ、俺だ。


 良く考えてみると近くに街があったら、普通大ニュースになる。日本で言うなら突如近所にピラミッドが建った!みたいな感じだからな。

 

 ん? だが、何でヒュールがそんな危険な場所に?


 話しかけようとするとカウンターから一人の美女が飛び出して来た。


「ヒュールさん!」

「おう、エリーちゃん。異常無しだったぜ!」

「ふふっ。流石はSランク冒険者ですね!」


 ニッコリと笑うオレンジ髪の美女、エリー。

 綺麗なオレンジ髪を後ろで束ね、眼鏡をかけていかにも仕事が出来る女って感じだったが、天真爛漫に笑う姿に印象を変える。


「危険な仕事をありがとうございました」

「いや、俺も暇だったしちょうど良いよ」


 って、待て!

 重要な事をさらっと聞き逃してたぞ!


「お前、Sランク冒険者だったのか」

「ああ。言ってなかったから?」

「聞いてない!」


 そうだっけ?と首を傾げて、申し訳も無く笑いながら言った。


「改めてSランク冒険者のヒュールだ。よろしくな。てか、俺もお前の名前知らねえや」

「……っ、シルヴィア」

「そうか! よろしくな!」


 この名前は名乗り慣れないな。少し言い淀んでしまう。


 するとエリーがやっと俺の存在に気付いた。


「あら、そちらの美少女はどちら様ですか?」

「ん? ああ、冒険者になりたいんだってさ。さっき門番に絡まれてるのを助けて、連れてきた」

「あら。そうでしたか。ではこちらへどうぞ」


 スッと仕事モードになったエリーに連れられて、カウンターに移動する。


「こちらの受験票にご記入下さい。字は書けますか?」

「いや、すまない」

「大丈夫ですよ。字が書けない人は沢山いますから。代わりに私が代筆しますね」

「よろしく頼む」


 それからエリーに代筆してもらった。


 と言っても、記入項目はほとんどが任意で名前と種族、性別、年齢くらいしか無かった。

 後は使う武器や戦闘スタイルなどを聞かれて、エリーがどの職業ジョブに当てはまるのかを調べてくれた。

 結局、俺の職業は魔術師だった。


 あと二十歳とエリーに伝えた時の反応は面白かったな。びっくりしながら仕事だから真面目にしなきゃと、驚きと真剣の混ざった表情に思わず笑ってしまった。


「わ、笑わないで下さいっ」

「ははっ。ごめんって」


 可愛いなあ、この子。


「え、天使の戯れ?」

「いや天女だろ」

「女神様だ……!」

「俺、ちょっと便所行ってくる」

「てかマジで美少女だろ、エリーちゃんも可愛いけどよ」

「ああ。下手すると姫様にも匹敵するんじゃ無いか?」

「それ以上かも」

「あり得る……!」


 さっきから周りが煩いな……。


「さて、後は実技試験何ですが教官が今日は休みで、誰か臨時でーーーー」

「「「「「はいはいはいはいはい!!!」」」」」


 猛烈に手を上げる冒険者達。

 なんだこいつら。


「貴方達はダメです。絶対に下心があるので」

「そんなぁ!」

「冷たいぜ、エリーちゃん!」

「そりゃないぜ!」

 

 一際騒ぐ冒険者達。

 だが、ヒュールの一喝で一斉に黙った。

 流石はSランクだ。


「はあ。ヒュールさん、お願いします」

「おう。任された」


 と、試験官はヒュールで決まったらしい。

 まあ客観的に観てもSランクのヒュールなら、適切な判断ができるだろうしな。


 それから俺はギルドの裏の広間に移動した。

 そこはかなりの大きさで、普段は冒険者達が鍛え合う訓練所としても使われているらしい。


「基本的にこの試験は私が冒険者になるための十分な実力があると判断した瞬間に終了します。勿論、ヒュースさんは攻撃もするので、シルヴィアさんはそのつもりでお願いします」

「了解」


 短く告げた。

 実際、エリーは分かりやすく説明してくれたのですぐに理解できた。

 要するに実力を認めさせればいいって事だ。


「よーし、本気で来い!」


 すると盾を構えたヒュールが驚きの言葉を言って来た。


「……本気で良いのか?」

「ああ!」

「……本当に?」

「バッチ来い!!」


 本気で来いって本人が言うんだから、多分良いんだろうけど。

 だが、本気でやるとヒュールは死ななくても周りに被害が出る。下手をすれば街ごと氷漬けにしてしまう。

 そんな事態は避けたい。


 だから、必要最小限の小範囲に全力の一撃を叩き込む。


 ヒュールは五メートルぐらいの距離にいる。

 まずは近付かなければ話にならない。


 だから俺は【闘気法】の“縮地”を発動した。

 これは簡単な歩法術なんだが、一瞬で敵と距離を詰める事ができる。


 まさか俺が“縮地”を使うとは思っていなかったらしく、ヒュールの表情に驚愕の色が浮かんだ。


 驚愕。それは紛れもない隙だ。


 何者をも穿ち抜く鋭さを持て。

 どんなに硬い鎧にも負けぬ硬度を持て。

 ヒュールにも負けない様に、何よりも強い威力の一撃を。


 その思いを込めて、空中に一本の氷の槍が出現した。それは禍々しい氷の槍。たっぷりと俺の魔力を込めて作られた氷の槍が、今放たれる。


 

ーーーー“氷河絶槍”。



 

 俺が今使える、一点突破の最強技だ。


 氷の槍がヒュールを襲う。

 瞬間、“ガキィィン”と言う金属音が響いてヒュールは吹き飛んで行った。

 途中で塀にぶつかって停止したが、崩れた塀に押し潰された。


 盾の上からぶつけたので、致命傷にはなってないはずなんだが。


 まあ、これで十分実力の証明になっただろう。


「これでどう?」

「え、あ、合格です……」


 呆気に取られて、エリーが告げた。

 合格の二文字が火種となって、試験場が湧いた。


「スゲェ! あの《鉄壁のヒュール》を吹き飛ばしたぞ!」

「ヒュールはドラゴンの体当たりを受けても、真正面で一歩も動かずに耐えれるんだぞ!?」

「とんでもない化け物だ!」

「「「「「シルヴィア! シルヴィア! シルヴィア!」」」」」


 一気に大合唱となる。

 正直名前を叫ばれるのは恥ずかしいし、鬱陶しい。


 でも、こうして認められるのは悪い気はしなかった。


↓エリーのステータスです↓


エリー 人間 二十三歳 女

称号・・・《ダイナの受付嬢》《仕事の鬼》

技能アーツ

【筆記 レベル11】

【管理 レベル9】

【体術 レベル3】



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