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明日休むかも。
【万能感知】に強烈な危険な反応があって焦ったのだが、なんとか間に合った。
こうして街が滅ぼされるまでに帰って来れたのはエステルのおかげだ。
「助かったよ、エステル」
「そうね。崇め奉りなさい」
何て事を言ってるが、これも照れ隠しだろう。
エステルの空間魔法【長距離空間転移】はどんなに長距離でも拠点を残しておく事でいつでも転移、つまり瞬間移動が出来る魔法だ。
凄まじい魔法でかなり魔力を使うらしいが、本人曰く「この程度なら余裕」だそうだ。
俺がダイナに危険が迫っていると話したところ、すぐに助けに戻らないと!とこの魔法で一緒に救援に来てくれた。
本当にありがたい話だ。
「さて、と」
『うわっ!?』
ーーーー《大氷剣》。
巨大な氷剣で怪物をブッ刺す。
が、どうやら効いていないらしい。
表面は少し削れたがその程度だ。
刺さりすらせずに、氷剣は地面に落ちて砕け散った。
異様に硬さを見て、ヒュールは顔を顰めた。
「なんだあれ、魔法無効化か?」
「いえ、魔力の流れはそんな風には見えないけれど」
「単純に馬鹿みたいに硬いだけだろ。そのうち剥がれる」
「まあ確かに」
「それが一番手っ取り早そうね」
何よりもあの中身の方がやばそうだ。
早々に外を潰して、中身も捕らえておきたい。
おそらくは魔族の幹部か。
このタイミングで襲撃を仕掛けて来るなら、遺跡を取り戻しに来たのか? 捕虜にした魔族は王都に連行されて行った。捕虜の解放が目的なら、そちらに向かうだろう。
まあ目的は分からなくても、やることは変わらない。
アレを倒す。
開戦の火蓋を切ったのはエステルだった。
「《ファイアボール》!!」
十七連射。
炎熱の弾丸が怪物を襲う。
爆発によって表面の内臓がボロボロと落ちて行った。
凄まじい衝撃波にユラユラとバランスを崩し、片足が宙に浮いた。
「んんっ!!? どぅぅぅりゃあああ!!」
続けて、ヒュールだ。
宙に浮いた足を力だけで無理矢理持ち上げ、薙ぎ倒した。正しく、漫画でしか見たことない『空中巴投げ』だった。
それによって、街から離れた場所に投げられた怪物。
その中にいるルシファーも怪物の中で何度も回転して大惨事となった。
『痛てて……。滅茶苦茶だなぁ、それじゃ次は僕がーーーー!?』
瞬間、ルシファーの目に映ったのは鋭く尖った氷だった。何十、何百もの数がルシファーの合成獣の上で、ルシファーの命を狙っていた。
「削るなら、これが一番良いだろ」
『……うっそぉ』
思わず漏れた驚愕はシルヴィアにまで伝わったが、見逃してやるわけも無く、容赦無く、無慈悲に攻撃を放った。
「錐雪時雨」
瞬間、合成獣に落とされた無数の氷の槍。
キュィィィン!とかん高い音が響いた。
技名の錐とはまあ、簡単に言えばドリルだ。穴を開けるやつ。
俺のこの技は鋭く尖らせた氷を高速で回転させて、一点集中で削る。
このままやれば中身まで到達出来そうだったが……。
『あんまり僕を舐めるなぁ!!』
少し頭に来た、ルシファーが合成獣をこれまでの中で最も速い動きで腕を振るわせたのだ。
かなり硬い合成獣の腕のよって、氷の槍はいとも簡単に砕かれた。
だが、そのおかげで顔面に隙が出来た。
「斬撃!」
「《風切》!」
ヒュールとエステルが全力の『斬撃系』の技で目玉を切り裂いた。
そこは俺が【万能感知】で最も危険度が強い場所で、二人にそこを切り開いてくれと指定した地点でもあった。
そして、ルシファーが剥き出しとなる。
シルヴィアの目に映ったルシファーは子供だった。
黒髪黒眼で、生意気なクソガキ。
そして心の裏側が読めない。
それがルシファーの第一印象だった。
「お前か! 街を襲ったのはーーーー」
「ほら、退くわよ」
「え、ちょま…………」
街を襲われて怒ったヒュールがさらに攻撃しようとしたが、エステルの空間魔法で街まで連れ戻された。
うん。助かる。
ヒュールまで巻き込む可能性があったからな。
これで思う存分、凍らせれる。
「永久凍土」
それは凍結だった。
氷で剣や槍を作ったわけでもなく、ただ敵を凍らせる技。しかしそれは体外側を凍らせる技では無い。
触れた箇所から次々と凍結領域を拡大させ、最終的には全ての体温を氷点下まで下げる。
ミクロン単位で細胞、身体の芯まで凍らせて動きを停止させた。
見た目では変わっていないが、そのうちは氷の石像と同じだ。
指で打てば砕け散る。
粉々に。
「…………逃げられたか」
砕けた合成獣の跡には何も残っていなかった。ルシファーもだ。
普通なら合成獣諸共、砕け散ったと考えるだろうが、あの魔族は簡単には死なないだろう。
逃げたと考えるのが必至だ。
まあ、流石に永久凍土の影響は受けてるはずだ。
身体の部位が凍結してるだろうし、しばらくは動けないだろう。
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