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冒険者の街 ダイナ。
その名の通り、多くの冒険者が集まる街である。
だからか世界中から商人が集まり、今では都市と遜色無いほどの経済の潤いを得ていた。
当然、人口も多い。ダイナを拠点に定めている冒険者や商人も合わせれば十万人を軽く超える、大規模な街だ。
魔界に近い位置にあることもあり、ダイナは人間界の防衛拠点でもあった。
だが、だからこそ、この街を攻め落とせば魔界側にとって大きな戦果となる。
最初にそれに気が付いたのは、仕事で外回りをしていたエリーだった。
「何、あれ……」
エリーの驚愕は伝播し、辺りの住民達にまで及ぶ。そしてそれを視界に収めて初めて、住民達は恐怖した。
巨大過ぎる化け物。形は人の赤ん坊に似ているが、その実情は大きく違う。
皮と内臓をぐちゃぐちゃに繋ぎ合わせた様な身体をしていて、まともな臓器があるかも定かでは無い。
次に目だ。位置的には人間と同じだが、その数が尋常じゃ無い。大小さまざまな大きさの目玉を無理矢理詰め込んだそれは、
口は身体中にある。手のひらや腹、膝、目に見えるだけでも十七箇所だ。今見えていない箇所も合わせれば、その数は三十を超えるかもしれない。
とにかく恐ろしい見た目をした、その化け物はゆっくりと確実にこの街を目指していた。
冒険者の街は騒然となり、一気に絶望に落とされるのだった。
「あははははっ! たまにはこういう仰々しいのもいいね!」
ルシファーは化け物の頭の上に乗っていた。正確には頭の上に結界を張った、操縦室の様な場所にだが。
あれからルシファーはシルヴィアが一番絶望するちょっかいを掛けるために作戦を考えていた。
色々と考えた。
シルヴィア本人を捕らえて、屈辱して陵辱してぐちゃぐちゃにするのも面白そうだったけど、僕としては怒ってるシルヴィアが見たいんだ。
次はシルヴィアの目の前で人間の子供を殺してやろうか? 激昂するだろうなぁ。でもそれだけだ。絶望とは程遠い。
ううん、どれも面白くないな。
「あ、そうだ」
魔族の少年はニチャアと邪悪に笑った。
ならば彼女の日常を破壊してしまおう!と。
街には愛しい恋人もいるだろう。
大切な人もいるだろう。
仲間もいるだろう。
それが全て死んだらどうなるかな?
泣くかな? 怒るかな?
想像するだけで涎が止まらない。
嗚呼、早く見たい!
絶望の表情は最高のワインのつまみなんだ。
でも流石に自分が手を下すのは面白くない。
結果が決まった劇ほどつまらないものはないから。
そしてルシファーはフルフルには内緒で長年開発していたこの合成獣を使う事にしたのだ。
「さあ、愚かな冒険者達よ。どうか退屈させないでくれよ? 僕のとっておきのデビュー日からね! せめて、傷一つくらいは負わせてくれよ?」
化け物ーーーー合成獣が赤ん坊の鳴く様に咆哮した。
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