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絶対零度のシルヴィア〜TS転生したら美少女だった件〜  作者: 近藤ハジメ
三章 ボルテジール火山
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 あれから一週間が経った。

 Bランク冒険者とは言え俺は新人だ。

 簡単なクエストを何度もこなしてランクアップの条件に届く様に頑張っていた。


 この一週間での大きな出来事といえば、ソニックバッドがオークションで金貨七十二枚で売れた事だ。

 どうやらなんちゃら伯爵が購入した様で、仲介料も取られずに全額が懐に入って来た。

 

 本当に大金持ちだ、これでは。

 その気になれば家の一つも買えそうだが、しばらくは小山羊のお髭亭に留まるつもりでいる。

 せっかくミアや旦那さん、奥さんとも仲良くなれたからな。


 ただ一定の場所に留まっていると面倒事も増えた。


 それはストーカーができた事だ。


「なー、パーティ組もうぜー?」


 この男、《鉄壁のヒュール》だ。“Sランク冒険者がBランク冒険者を狙っている”と噂になって本当に迷惑している。


 何度も断っているんだが、それでも諦めようとしない。


 諦めるどころか最近は勧誘も激しくなっていて、小山羊のお髭亭までつけてくる始末だ。


「いい加減どうにかしないとな。はあ……」


 今も物陰でこちらの様子を伺っているヒュールにどうやって諦めさせそうかと思案して、また面倒になりそうだとため息を吐いた。






 と、思っていたんだが。


「シルヴィアさーん、お願いですからヒュールさんと一緒に行ってくださいよー!」

「い・や・だ!」


 幸先、悪。


 今日のクエストを受ける為にギルドに向かうとエリーが涙目になりながらしがみついて来た。

  

 事情を聞くと最近、ボルテジール火山帯にドラゴンが住み着いたそうだ。

 そこは近くに街や村々があり、下手すれば大量の人が死ぬ。


 しかし、ギルドは冒険者のかなりの数を魔族の一件の調査に駆り出しており、完全に人手不足だった。

 その中で比較的暇そうで、さらにドラゴンを倒せる実力を持っているのは俺とヒュールだけだった様だ。


「私だってこんな時だけシルヴィアさんを頼りにするなんて都合良すぎるだろクソジジイ!って思ってますけど!」

「いや俺は別にそんな事思ってないんだが……?」


 勝手に不満を爆発させるエリー。


「とにかく、臨時でも良いのでパーティを組んで下さい〜!」

「嫌だぁああ!」


 外聞も気にせずに、俺の足に縋り付いて懇願して来た。

 柔らかい感触に「あ、好き」とか思ったが、心を鬼にして少し強引にエリーを振り払う。

 完全に拒絶された事に動揺してエリーはガクッと倒れた。


 これで諦めてくれるかな?と思ったが、甘かった。


「ふ、ふふふ、ふふふふふふ」


 ユラユラと陽炎の様に笑いながらエリーが立ち上がった。

 何故か目に見えないオーラを感じて、少し寒気を感じる。

 何だ、何をする気なんだ?


「……この前、買い物に付き合いましたよね?」

「うっ」

「……その恩を忘れるんですか?」


 まさかの売った恩を出しに使って来るなんて……。


 それだけ必死ということか。


 まあ実際、エリーには買い物に付き合って貰ったりしたからな。それに冒険者になってすぐの時にも世話になったし。


 結局、仕方なく受け入れる事にした。


「はあ、分かったよ」

「本当ですか!? やったぁー!! ありがとうございますー!!」

「ちょ、ふわっ。むが、息が……!」


 感激のあまりエリーが抱きついてきた。

 俺は身長が柔らかいせいで、ちょうどエリーの胸の辺りに頭がいく。

 巨大な双丘が当たってとても柔らかい。幸せ。

 

 幸せと言っても呼吸が出来なくちゃ死んでしまう。脱出して「ぷはっ」と酸素を確保して、何やら満面の笑みのヒュールと向かい合った。


「……不本意だが、今回ばかりの臨時パーティだ。前衛は任せるぞ」

「おう! 任せとけ! よろしくなシルヴィア!」


 臨時パーティだが、パーティを組めるという事実がヒュールの喜びを頂点まで誘った。


 すでにテンションマックスなヒュールを見てこれから益々面倒になりそうだと、これからの旅路を想像しながら溜め息を吐いた。


(なんか俺、ヒュールに対して溜め息吐いてばっかりだな)


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