11
「凄すぎますよ、シルヴィアさん!」
ギルドに戻ると今回の事の詳細を説明すると急に興奮し出したエリーにそう言われた。あまりの勢いに俺は「え、ええ……?」と困惑する。
「どうして魔族を倒せるんですか!?」
「どうしてって言われても……」
「ヒュールさんに聞いたら魔族の将校もたった一人で倒したって言うじゃないですか! 凄すぎます!」
「そ、そうか? ありがとう……?」
若干、エリーの勢いに押されてしまい、後半は疑問形になっていた。
何故エリーがこんなに興奮しているかと言うと、そもそも魔族は下位の存在でも冒険者におけるBランク程度の強さを持ち、百魔将と言えばAランクと同等と言われている。
そんな百魔将を冒険者になりたてのBランク冒険者が倒し、さらには百の魔族を捕虜として捕え、彼らの目的の一つである遺跡についての情報も持ち帰ったのだ。
興奮するなと言う方がどうかしている。
「もう、これだけ活躍してAランクに上がれないなんて本部はどうかしてますよ!」
そしてもう一つ、エリーが興奮している理由がこれである。
これだけの活躍をすれば即ランクアップ間違い無しだ。それなのにギルドの上層部が却下したのだ。
それを聞いてエリート同じくランクアップ間違い無しだと思っていたヒューも驚きの声を上げた。
「何、駄目だったのか?」
「はい。今、許可を申請したら「【鉄壁】の力によるところが大きいだろう」とか言って突っぱねられました!」
「はあ。またか……」
「本当に上層部は老害ばかりですよ」
ギルドの受付嬢がそんな事を言えば即クビになってもおかしくないが、この会話を聞いている人間は皆無だった。
「ですが上層部も流石にこの活躍は無視できなく、次のランクアップはかなり早まると思いますよ」
「分かった。ありがとう」
短く感謝の言葉を告げる。
その後、今回の件での報酬+魔族を捕らえた手柄で臨時報酬の金貨五百枚を受け取った。臨時報酬はヒュールと分けて与えられる予定だったのだが、ヒュールが断り全額が俺の懐に入った。
一瞬にして大金持ちだ。
これで少し贅沢が出来る。
ギルドから出て少し。
後ろに何かつけてくる。
その正体に気付きながら、あえてスルーしていたが良い加減に鬱陶しい。はあと溜息を吐き、「そこで何をしている?」とそいつに問いかけた。
「ははっ。流石に気付かれたか」
建物の影から出てきたのは、バレバレな追跡を続けていたヒュールだった。
本人も気付かれていると分かっていた上でつけていた様だ。理解できん。
「それで何の用だ?」
「いや、特には無いんだけどさ」
「なら帰るぞ」
「ちょ、待ってくれ!」
「はあ。一体何なんだよ」
「ええ、っとだなー……。この後、飯行かね?」
飯? それだけの為に?
そんなの断るに決まって……。
いや、今回はかなりの金が手に入ったし、旨い店を知れる良い機会か。
「良いぞ」と了承すると道端のど真ん中でガッツポーズされるものだから、恥ずかしくて帰ろうかと思った。
結局、ヒュール行きつけの居酒屋に案内された。
そこは酒も美味いが店主の料理の腕前は相当なもので、下手なレストランに行くよりも美味いものが食えるらしい。
ステーキと酒を頼む。
この世界に来たのだから、別に未成年だとか細かい事を言う輩はいないだろ。
「「乾杯」」
一口、酒を煽る。
口の中に少しの苦味と甘さが広がった。
しかし決して嫌な味では無い。
むしろ好みで続けて三口ほど飲んでしまった。
「良い飲みっぷりだな!」
「うるせぇ」
さて、次はステーキだ。
一口大に切った肉を頬張る。
噛むとじゅわぁと濃厚な肉汁が溢れて来た。
これ何の肉だろう?
前世で食べたどの肉よりも美味しい。
「美味いだろ?」
「ああ。これは何の肉なんだ?」
「ゴールドバッファローだ。気難しい性格だから滅多に人前に姿を現さず市場にも出回らないんだが、ここの店主が飼育に成功してな。この店でだけ食べられるんだ」
「へえ」
それは素直に凄いと思った。
前例のない事を成し遂げたんだ。
店主は尊敬に値する。
肉を頬張り、酒で喉越しをさっぱりさせる。
その繰り返しだけで三回もおかわり出来た。
またこの店に来よう。
そう思うほど、この店の料理も酒も美味かった。
店の会計は全てヒュールの奢りだ。
断る理由もなく、有り難く奢られた。
「ご馳走様」
「おう!」
ヒュールが嬉しそうに笑う。
奢られて何がそんなに嬉しいんだろう。
マゾなのか?
そんな事を思いながら、お互いの分かれ道まで進む。そして橋の上でヒュールが言った。
「俺とパーティを組まないか?」
ブックマークや高評価、感想などよろしくお願いします。




