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絶対零度のシルヴィア〜TS転生したら美少女だった件〜  作者: 近藤ハジメ
二章 ポポロン村の遺跡
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二章終

 そこにいたのは村長の後ろで控えていた、秘書の村娘だった。


 しかし、【万能感知】は危険を告げている。

 

「ただの村娘じゃないな。何者だ?」   

「あらそうね。では名乗らせてもらおうかしら」


 その瞬間、村娘を中心に濁流の如く魔力が吹き荒れた。砂埃が巻き上がり、村娘の姿を隠す。

 

 羊の様な角。

 蝙蝠のような羽。

 ギラリと光る赤い瞳。

 先がスペードの形をした尻尾。


 徐々に顕になるその姿は、正しく悪魔そのものだ。


「私は百魔将がリリビア。来る今日、この地に眠る魔王様の右腕を回収する為に魔王四天王様からの命令で守護しておりました」


 リリビアは丁寧な口調で話していたが、その目の奥に宿る狂気を俺は見逃さなかった。

 こいつは自分の目的のためならば、か弱い市民達をも犠牲にする様な究極のクズだ。


「さて。細かい説明は無しで行きましょう。お二人とも、死んで下さい」


 ニコリと微笑むリリビア。と同時に四方八方周囲に無数の魔族が出現した。

 そこにはさっきの村で見た顔がちらほらとある。


 あの村に招かれた時点で敵地のど真ん中だったって事か。


 とにかくここで囲まれてしまっては戦闘は避けられないだろう。


「最後に聞きたい事がある」

「あら。良いでしょう。冥土の土産に答えて差し上げますわ」

「あれは何の肉だったんだ?」


 ずっと心の底に引っかかっていた疑問。その疑問が徐々に確信に変わり、しかしまだ勘違いであってくれと願う自分もいた。


 頼むから、そうであったと言わないでくれ。間違いだったと言ってくれ。そう願いながらリリビアの話に傾けたが、望んだ答えは返ってこなかった。


「人間の肉ですわ」


 ニタァと邪悪にリリビアが笑った。そして同時に俺の微かな希望も潰えた。


「美味しいんですよ? 愛する者の目の前で喰われる女の肉は特に……格別ですわ」


 ゲラゲラと魔族達が高笑いを上げた。


 その高笑いがどうしようもない雑音に聞こえて、怒りを我慢出来ずに冷気が漏れてしまった。

 足元が僅かに凍り付き、周囲の温度も下がる。

 幸いだったのは馬鹿な魔族達はそのことに気付いていない点だ。


 本当に良かった。これで首を刈れる。


「名残惜しかったですけど、これで最後よ。さようなら」


 しかし、そんなリリビアの声は俺には届いていなかった。

 ただただ怒りが心中に渦巻き、身体を支配していた。


 コイツらが何を企んでるのか、裏に誰がいるのか、それを暴くためにも捕虜は必要だ。

 しかし、この女だけは殺す。何が何でも殺す。力の限り殺す。そう決めた。


「手助けはいるか?」

「いらん」


 一歩、前衛であるはずのヒュールの前に出る。


 すでにヒュールは盾を構える気すら無い様だ。簡単に前に出させてくれた。


「縮地・氷剣ソード


 瞬間的に発動したのは闘気法の縮地だ。

 一瞬でリリビアとの距離を詰める。

 それはすでに俺の射程圏内だ。


「え?」


 刹那の間際、リリビアと視線が交差する。   

 驚愕と焦り、そして死を予感する死相、様々な色が混ざり合ったその瞳を無視し、剣を抜く。


「死ね」


 悲鳴を上げる間も無く、リリビアの首と胴が別れた。鈍い音をして地面に落ち、そのままコロコロと転がって行く。


 そして魔族の一人に向かってギョロリと光無い瞳が魔族達を見た。

 そしてようやく、自らの上司が死んだ実感が湧いた様だ。


「ヒッ、ヒィイイイ!!?」


 情けない悲鳴を上げる魔族達。

 百魔将としてリリビアの実力は本物だった。

 下級悪魔である自分達など木端のような存在で、息を吹き掛けられれば飛んでしまう様な、それほど圧倒的な存在だった。


 故に魔族達の動揺は激しく、すぐに全体に広がった。


「なんなんだあいつ!」

「リリビア様があんなに簡単にやられるなんて!」

「が、合体魔法だ!」

「そうだ、それがあった!」

「早くしろ!」

「消し炭にするんだ!」


 魔族達が一箇所に集まって魔力を集中し出したが、何をする気なのか作戦がバレバレだ。

 だが思ったよりも魔法を放つ準備が早く終わり、今にも放つ勢いだ。


 さて、どうするかと悩んでいるとヒュールが前に出た。


「ようやく俺の出番だな!」


 そしてようやく、ヒュールが背中に背負う大盾を構えた。


 百の魔族による合体魔法に真っ向から立ち向かうヒュールを見て、少し心配になり声を掛けようとしたが遅かった。


「「「合体魔法炎水風土砲エレメント・マジック・ストレート!!」」」


 流石は百体の魔族による合体魔法だ。

 その威力はかなりのものだ。

 

 ヒュールは大丈夫か?と心配したが、それも杞憂に終わった。


「《絶対防御ザ・シールド》」


 迫る四色の砲撃にヒュールは一切動じずに、盾を構えた。そしてスキルが発動される。

 

 原理は分からないが、盾に衝突した瞬間に魔族渾身の合体魔法は消滅した。


「ば、化け物……!」

「男の方はただの傭兵じゃ無かったのかよぉおお!!」

「悪いな、俺はSランク冒険者だ」

「っ」


 魔族に絶望がやって来る。

 渾身の一撃は無効化され、Sランク冒険者まで現れた。

 彼らの戦意はズタボロだ。


「に、逃げろ……!」

「逃すと思ってんのか?」


 まあ、だからと言って逃すつもりなんて毛頭無いんだが。


 彼等を包んだのは、氷牢プリズン

 氷牢に閉じ込められれば、内部にいる者を凍り付かせる。勿論、殺しはしない。後でちゃんと捕虜としてギルドに渡した。


 こうして初クエストは遺跡調査のはずが、魔族との戦闘、そして九十九人の捕虜を確保する事になってしまったが、何とか初クエストに幕を降ろす事が出来た。


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