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かくれんぼ

作者: 稲作稲穂

『かくれんぼ』


 

もういいかーい


まーだだよー


もういいーかい


まだだよー


もーいいか


まだだよ!


もういい、、


まってよ、、、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「かごめかごめ」


ジメジメとした、草が生い茂る廃墟で私はゆうちゃんとかくれんぼをしていた。

いつも、じゃんけんで鬼役を決めてジャンケンの強いゆうちゃんが勝って、私が鬼になる。


ゆうちゃんは私が十数えている間にどこかへかくれる。

イーチ、ニーイ、サーン、ヨ、、


もーいーよー


と、声が廃墟のそばにある森の方から聞こえてきたので私は向かった。


どこー?


などと声をかけて居場所を探るが、ゆうちゃんはいつも気配を隠すのが上手いもんだ、なかなか見つからない。

かくれんぼも10回ぐらいやるが、日が落ちるまでにゆうちゃんを見つけれたことは一度もなく、中々ゆうちゃんは手強い。


しっかし、ここっていつもいろんなものが落ちてるなあ。

お皿にコップ、おもちゃに女の子のワンピース。どれも欠けていて使えそうにはないが、

この廃墟は昔、お金持ちの家族が住んでたとか大人たちが言ってたのを思い出し、お宝がないか下を向きながら私は歩いた。


すると、一本の木の枝にぶら下がった木の板と今にもちぎれそうなチクチクした縄が視界に入ってきた。


「ブランコか、、」

と私はそこで立ち止まり、ゆうちゃんを探した。







「はあ、はあ、はあ、、、」


どこにもいない。もう日が落ちて少し経ったがそこらじゅう探しても、声をかけても静かな森の中のまま。


ーいったいどこに隠れた?

いつもならゆうちゃんの方から「もうおしまいにしよ!」って出てきてくれるのに。



「どこにいちゃったのゆうちゃん!」



すると、廃墟の方から男の人がゆうを呼ぶ声が聞こえた。私は焦りながら廃墟の方へと走り出すとそこには多くの大人たちがいた。


そして、涙ぐむ二人の大人の腕の中にゆうちゃんはいた。

「ゆうちゃんだ!見つかったぞ!」

「よかった!」

「怪我はなさそうだ」

周りの大人たちが大声で喜んでいた。




「あ、、」

ゆうの方に私も行こうと森から出ようとしたが何故か出れない、まるで見えない壁があるかのようで、私もゆうちゃんのいる方へ行きたいのに。

「ゆうちゃん、、ゆうちゃん、、、ゆうちゃん!」


まってよ、、、私も連れてってよ。


なんで?私は?


ゆうちゃん見つけたよ、、まだ終わってないよ、、


かくれんぼ、次はゆうちゃんが鬼の番でしょ。


変わらなきゃいけないんだよ、


変わってよ!変われよ!!


ほら、、


 

「帰ろう。ゆう」

大人達に抱きかかえられながら、一人の少女は去り際に森の方を振り返り、もう一人の少女は何度も、何度も、届くことのないその言葉を彼らに叫び続けた、悲しみの表情で。




「おままごと」


 

 続いてのニュースです。

5年前、家族でキャンプをしに川へ訪れ、行方不明になっていた当時8歳の少女が近くの山の中で発見されました。

少女に怪我はなく、健康状態にも問題はなく、現在は病院で経過観察中とのことです。


と、そのニュースを探偵のあかりは見ていた。

「あの山ってまさか、、」

 彼女は電話を取り、知人の警察に連絡を入れた。

「あ、轟さん?あかりです。ちょっと確認したいことがありまして、、」





 三日後、あかりは今回行方不明だった少女に会いに彼女の家に行った。

家に入ると、両親が出迎えてくれた。軽く自己紹介をしたあかりは、席に座るなり話し始めた。


「すみませんね、探偵が急に来て。驚かれましたよね」

「いえ、刑事さんから説明はされましたので。で、聞きたいのは見つけた場所の事ですよね」

「はい、実はあの山には色々と謂れがありまして。私はその、見つけた時の状況についてお聞きしたいんです」


と、夫婦は庭で祖父母たちと遊ぶ少女を見た。一番に見つけたという父親が曇った表情で話し始めた。


「あの日はいつもみたいにキャンプをしていた川の周辺を探していたんです。声が聞こえたんです。『もーいーよー』って、すると川を挟んだ反対側の山の上から声が聞こえて、そっちの方に顔をあげたら頂上に人影が見えたんです。」


「人影、、」


「はい、私が気づくとその人物は手を振り続けてて。一瞬、ゾッとしましたがまさかと思い、近くの橋からその山に入ったんです。」

「私も主人から電話が来たときは驚きましたけど、おじいちゃんたちとかにも声をかけてその山に向かったんです。」


 そこからは刑事の轟から聞いた内容と同じで、家族と近所の者たちで山の頂上付近に行くと見た事のない廃墟があり、そこの入り口で5年前と全く変わらない娘が立っていたと。

他に何か気づいた事はないか尋ねると


「少し気に掛かっただけなんですが、、再開した時、娘は泣きながら私たちのことを何度も呼んで、震えてたんですが。あの場を離れて警察に事情聴取をしてもらってる時のあの子の対応が明るくて、、その、なんというか別人なんです」

「なんのお話してるの?」

と、さっきまで庭で遊んでいた少女が隣に立っていた。少女の急の登場に怯えた顔をする夫婦の顔。

「お姉ちゃんも遊んでくれるの?」

「うん、いいよ。さっきはおじいちゃん達と何してたの?」

「おままごとだけどあとはパパとママとやるからお姉ちゃんとは別のがいい」


私はそこで鬼ごっこを提案した。


「鬼ごっこ?」

「うん、お姉ちゃんが鬼やくやるから逃げて」

「わかった!あっそういえばお姉ちゃんの名前って何?」

「あかりだよ」

この時、あかりは探っていた。かつてこの町にいた女の子が少女の中にいるのかを、、




「鬼ごっこ」

 

 20年前、あかりにはれいというクラスメイトがいた。

れいは小学3年生の時にこの街に引っ越してきた。当時、豪邸に住む子としてクラスと町では噂の的だった。

つまらない小さな田舎にとってもいいネタとされていた。

 隣の席にたまたまなったあかりはれいの案内係から話し相手になり、よく遊ぶ友人となった。

 それからと言うもの、あかりはよくれいの豪邸に遊びに行くようになった。

そう、ここがのちに廃墟となり今回の事件が起こった場所なのです。

 

 あの日、私はここで20年前にれいちゃんとかくれんぼ、かごめかごめ、おままごと、鬼ごっこ。と、その日はれいちゃんの両親と四人で暗くなるまで遊んだ。

とっても楽しく、私たちはまた遊ぼうねと、約束してそのまま別れた。

しかし、その次の日にれいちゃんが学校に来ることはなかった。

 

 れいちゃんが行方不明になってから捜索隊が出たが、一年が経つと大人たちは捜索する人数を減らし、その一週間後には捜索が打ち切られてしまった。

私はれいちゃんの両親に探すのをやめてしまった理由を聞きに屋敷に向かったがもうそこには誰も住んでいなかった。

 大人たちの噂ではあの両親がれいちゃんを虐待してて都合が悪くなったから隠したのではと、当時は言われていた。

私はそんなの信じられないと親や先生たちに言ったが、誰も聞く耳を持ってはくれず、噂話に妄想を膨らませて楽しんでいた。



「あれから20年か、、」

私はその後、一時間ほど滞在した後事務所に帰ろうと帰路に着くと、

「あかりちゃん!」

後ろから声がし、振り返ると庭の柵でこちらに手を振る彼女が笑顔で覗いていた。

「もういいかい?」

そういうと彼女は家に戻ってしまった。

「れいちゃん、、、もーういーいよ、、」


  

続いてのニュースです。

以前、行方不明になって5年後に見つかった少女の一家が先月から行方不明になっていることが警察の取材で判明しました。

近隣住民の話によれば一家が出かけているところを見た人はいなく、親戚の男性が自宅に向かったところ家には誰も居らず、荷物もそのままだったそうで、警察に捜索届けを出し、現在も行方は掴めないそうです。


「5年もかかったけど、ゆうちゃんがかくれんぼを成功させてくれたおかげでれいちゃんに会うことが出来たよ。」

感謝の言葉を呟くと、事務所の窓の外から夕方の風に乗り子供達の声が聞こえた。



かくれんぼする人この指トーマーレー


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