アリーシャ・下【6】
アリーシャの言葉に、オルキデアは「なんだそんなことか」と安心する。
アリーシャにとっては大事なことだろうが、何を言われるのかと身構えていたオルキデアからしたら、大したことでは無かった。
ーーやっぱり、契約結婚を止めたくなったと言われたら、どうしようかと思った。
オルキデアはほっとして肩の力を抜いたのだった。
「それなら、今度から君の分は紅茶を用意しよう」
「すみません……。手間をかけることになって……」
「いや、こっちももっと早く気付けば良かった。……そういうことは、遠慮なく言ってくれ」
契約とはいえ夫婦になった以上、これまでよりもアリーシャと生活を共にする時間は増えるだろう。
もっと相手についてーーアリーシャについて知る必要がある。
「すみません……」
「何も君を責めているわけじゃない。これからは、俺一人で生活するわけじゃないんだ。俺の気が回っていないところがあれば、遠慮なく言ってくれて構わない」
むしろ、これまで他人に興味を持ってこなかったオルキデアが、誰かと生活を共にする以上、遅かれ早かれ、こういう問題には直面していた。
今回はアリーシャ自ら言ってくれたが、今後はこちらから気づく必要がある。
場合によっては、アリーシャにーー仮妻に、恥ずかしい思いをさせかねない。
「分かりました。今度からはそうします」
「ああ。そうしてくれると助かる」
夫婦生活は始まったばかり。
クシャースラの言う通り、先はまだまだ長いように感じたのだった。