表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/347

やけ酒した夜【4】

「やっ! どこを触って……!?」


 どうにかして腕の中から抜け出そうと、じたばたと足を動かす内に、スカートが捲れてしまったのだろう。

 その中にすっと手が入れられる。

 オルキデアの冷たい手が、アリーシャの太腿を撫でたのだった。


「や、やめて下さい!」


 何度も懇願するが、ひんやりとした手はアリーシャの太腿を撫でていき、やがてショーツの後ろにたどり着く。


「起きて下さい! オルキデア様!」


 ショーツの上から布地に包まれた二つの山を愛撫していたが、最初に指先が、やがて掌までも、するりとショーツの中に入ってきたのだった。


「や、やめて……」


 後ろの穴へと伸びる手を、アリーシャはどうにか後ろに手を回して、ペシッと軽く叩く。

 乾いた音が室内に響いたかと思うと、今度はその指先が前の穴へと近づいていく。


「ひやっ!?」


 オルキデアの冷たい指先が触れた途端、ピリッと軽い痛みが走った。

 今まで感じた事がない痛みだった。

 次の衝撃が来る前に、無我夢中でオルキデアの指先を手探りで探す。

 涙目になりながら、ようやく指先を見つけると、もぞもぞ動きながら全ての指を掴む。

 そうして、自らの指を絡めると、これ以上触られないように、強く握ったのだった。


 酔いが回っているからか、さほど力を入れなくても、オルキデアの手は呆気なくショーツから抜けた。


「はあああ……」


 肩で大きく息を吸う。何度か深呼吸を繰り返す内に、だんだんと痛みは引いていった。


 ようやく気持ちに余裕が出来ると、オルキデアの手の感触が自らの手に伝わってくる。

 厚い皮に覆われた大きな手であった。

 男の人の手に触れるのは、軍事医療施設以外では始めてだったが、オルキデアの手は今まで触れた手の中でも、特に大きく、固い手の様に感じた。軍人だからだろうか。

 手の大きさ、皮の厚さから、これまでいくつもの戦場を駆け抜けて来たのだと、改めて実感させられる。


 その手が動かないように、アリーシャは更に両手に力を入れて押さえ込む。

 おそらく、この手を離してしまえば、この手は更に奥へとーー秘所の奥深くに伸びるだろう。

 あの痛みの先を知りたいような、知りたくないような……知るのが怖かった。

 知ってしまったら、後には引けなくなってしまうような、気がしたのだった。


 それよりも、一番思うのは。


「い、嫌……」


 たとえ、信頼するオルキデアが相手であっても、こんな形で触れられたくなかった。

 どうせ触られるなら、捕虜として、性欲の捌け口として、犯された方がまだ良かった。

 そうすれば、下卑た顔をして、嫌がるアリーシャを犯してくる相手の横っ面を殴る事も、生涯にわたり、憎み、恨む事さえ出来る。


 けれども、酔った勢いで、それも相手の意識が朦朧なまま、犯されるのは嫌だったーーそれも「最初」を。

 だからこそ、息も絶え絶えに抵抗したのだった。


「アリーシャ……」


 名前を呼ばれて顔を上げると、オルキデアが小声で呟く。


「俺は、お前の事が……」


 やがて、オルキデアの力が緩むと、自然と絡んだ手が解ける。

 アリーシャはそっと見上げる。

 その時には、既にオルキデアは寝息を立てていたのだった。ーーアリーシャを抱きしめたまま。


「お前が、何ですか……?」


 その言葉の続きが聞きたかった。

 オルキデアはアリーシャの事をどう思っているのだろう。


(このまま、ここにいたら続きが聞けるのかな)


 ここにーーオルキデアの腕の中にいたら、その言葉の続きが聞けるだろうか。


 ーー例え、その言葉の続きが、アリーシャが望んでいなかった言葉だとしても。


 今だけは、ここに居たい。居させて欲しいと、アリーシャはそっと目を閉じたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ