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やけ酒した夜【3】

(喉が渇いたし、お水を飲もうかな)


 ティシュトリアが帰ってから、ベッドでずっと泣いていた。

 ラカイユが訪ねてきたところまでは覚えている。

 その後、寝てしまったのだろう。


 もう一度、目元を指で拭うと、仮眠室からそっと出る。

 仮眠室内にはベッドとベッド脇に積まれた本、クシャースラが持って来てくれた鞄しかないが、初日にアリーシャが整理する前は、本も乱雑、シーツと掛布はぐちゃぐちゃになって捲れたままであった。

 掛布は最初にアリーシャを部屋に案内してくれた兵が、後ほど清潔なものと交換してくれた。

 本に関しては、とりあえず似た内容ごとに分けて、部屋の隅に置く事にしたのだった。


 本は読んでいいと言われていたので、時間がある時は読んでいたが、ほとんどが軍用書や兵法書であった。

 なんとなく、オルキデア・アシャ・ラナンキュラスという人物が見えた気がした。

 アリーシャは微笑ましい気持ちになったのだった。


 仮眠室から出ると、執務室は真っ暗であった。

 もう、オルキデアは寝てしまったのだろうか?

 水が飲みたいだけなので、洗面台から水を貰えばいいか、とアリーシャが執務室内を横切った時だった。

 ソファーに座って眠っているオルキデアを見つけたのだった。

 オルキデアの周りには、大量の酒瓶が置かれていた。酒を飲んでいる内に寝てしまったのだろう。


(このまま寝たら、風邪を引いちゃう)


 上着が脱ぎ捨てられていたので、オルキデアは薄着のまま眠っていた。

 アリーシャは洗面所で水を飲むと、執務机の下に適当に重ねられていた掛布を持つと、ソファーに近づいたのだった。


 オルキデアに掛布をかけると、鼻を突くような酒の臭いがしてきた。

 一体、どれほどの量を飲んだのだろうか。

 オルキデアの周りに倒れている酒瓶の数から、相当数を飲んだと考えられるがーー。


 そう考えながら、アリーシャは転がっていた酒瓶を集めて、テーブル脇に置く。

 集める際にいくつか酒瓶のラベルを確認したが、どれも度数が高いもので驚いた。

 これだけ、度数の高い酒を一度に大量に飲んだのなら、明日はきっと二日酔いに悩まされるだろう。


 オルキデアの足元にあった酒瓶を拾っている時だった。


「んん……」


 アリーシャの頭上で、オルキデアが呻いた。


(目が覚めたのかな……)


 膝立ちになって、オルキデアの顔を覗き込む。

 額に汗が浮かんで、魘されているようにも見えた。

 アリーシャは洗面所からタオルを持って来ると、オルキデアの額をそっと拭う。


(一度、起こした方が良いよね)


 魘されている時は、一度起こした方が良いという話を聞いた事がある。

 だから、アリーシャは立ち上がって、ソファーに片膝をついて、オルキデアの肩を揺すった。


「オルキデア様」


 すると、「アリーシャ……」と、オルキデアが呟いた。


「えっ……?」


 肩を揺すっていた手を、オルキデアに掴まれた。

 そのまま身体が傾いで、アリーシャごとソファーに倒れたのだった。


「オルキデア様……」


 オルキデアごとソファーに倒れたアリーシャが身体を起こそうとすると、背中に腕が回ってきて、強く抱きしめられた。


「は、離して……!」


 抱き竦められたアリーシャは、もぞもぞと動いて、どうにかオルキデアの腕の中から抜け出そうとする。

 けれども、抱く力は弱くなるどころか、ますます強くなったのだった。


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