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どうして【5】

「私もこっちに来たばかりの頃はこんな失敗を沢山したわ。沢山して、主人に怒られてばかりだった」

「こっちに来たばかりの頃?」

「主人かラナンキュラス少将から聞いてない? 私は元々捕虜だったの。シュタルクヘルト軍の女性兵士だったわ。前線で戦っていたんだけど、他の部隊とはぐれて気付けばペルフェクト軍に囲まれて孤立していたの。いくら援軍や救助を呼んでも誰も来なくて、味方の数だけどんどん減って……。この時になってようやく悟ったの。私たちの部隊は敵を引きつける捨て駒にされたんだって」

「そ、それでどうなったんですか……?」

「上官はその場で自決、残った私たちは捕虜として捕らえられたの。捕虜としてペルフェクト王国に連れて来られて、そこで主人に出会ったの。書類上は夫婦だけど、実際は国のために戦ってくれる兵士を生み出す種馬として引き取られたわ」


 アリーシャは始めて知ったが、ペルフェクトでは気に入った女性捕虜がいれば、身元を引き受けることを条件に、女性捕虜を自分の妻や愛人として娶ることが出来る制度が存在するらしい。主に士官以上の兵士に向けた制度らしいが、多額の金さえ支払えば貴族も利用可能とのことであった。

 これまで捕虜を沢山抱えても、軍部では食糧や収容場所の問題から面倒を見きれず、たまに両国の同意の上で行われる捕虜同士の交換まで持て余すしかなかった。

 そこで男性捕虜にはペルフェクト軍に情報を提供し、今後はペルフェクト軍人としてペルフェクト王国に忠誠を誓うことを条件に、ペルフェクト軍に寝返ることを許していた。

 男性捕虜はそれで良かったが、問題は女性捕虜であった。


 ペルフェクト王国は男性優位の国のため、女性の社会進出は未だ許されておらず、女性が就ける職業には限りがあった。軍もその一つであり、ペルフェクトでは女性は軍に入れなかった。

 その為、シュタルクヘルト軍の女性捕虜が一番持て余されており、捕虜の交換の時には真っ先にシュタルクヘルトに帰してきたが、それでも捕虜交換までの間はどうすることも出来ず、女性捕虜の牢だけが埋まっていくのを、ただただ憂うことしか出来なかった。

 殺すことも出来ず、だからといって放逐するわけにもいかない。

 そうする内に、やがて捕虜たちに配給する食料問題以外にも収容場所の不足問題が出て来る様になった。


 そして戦争の長期化に伴い、女性捕虜と同じく、兵士の不足と国の少子化も問題になっていた。

 戦場で命を落とす兵士の数に対して、国内で生まれてくる子供の数が年々下回っており、戦争で後継者を亡くした理由から、廃業する農家も増えていた。

 何年も続く戦争の影響で、国の担い手だけではなく、兵士に志願する者も減ってきていた。このままでは兵はおろか、人手不足から食料や武器の生産が行えなくなり、やがて国の運営が上手く回らなくなってしまう。

 それらを解決するために軍が考えたのが、軍の士官たちによる女性捕虜の引き取り制度ーー洗脳と監視、そして強制子作り制度であった。


 書類上は「夫婦」として女性捕虜を引き取り、ペルフェクト王国側に寝返るように教育を施す。

 ペルフェクト王国がシュタルクヘルト共和国よりいかに優れた国家であるか洗脳しつつ、逃げ出さない様に監視をする。

 洗脳したところで、ペルフェクト王国の為と言い、身体を重ねる。

 そうして何人もの子供を産ませて、国の担い手を増やすといった制度であった。

 洗脳が上手くいかず、逃げ出そうとするなら、男が無理やりにでも子供を孕ませてしまう。

 子供を妊娠している状態では遠くまで逃げることは敵わなくなり、やがて夫に依存するしかなくなる。

 そこをついて、またペルフェクト人として洗脳教育を施していくというものらしい。

 生まれてきた子供を本人たちが望んでいなければ、女児は後継者がいない農家に養子に出し、男児なら将来的に軍人になるように子供を望む軍人家庭で軍人としての教育を受けさせるといったものであった。


 実際にこの制度を始めたばかりの頃は、女性捕虜問題と少子化問題を一気に解決まで導くことが出来た。

 最近では女性捕虜への人権の問題からこの制度はあまり使われなくなったが、今でもこの制度を利用して「愛人」を増やそうと目論んでいる者が貴族を中心に少なからずいるらしい。

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