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アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ  作者: 夜霞(四片霞彩)


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謀反の疑い【4】

 次の日、朝から屋敷の前まで出迎えてくれた兵たちに連れられて、また取り調べが始まった。

 前日と同じ内容を繰り返し聞かれ、オルキデアも「心当たりがない」と前日と同じ答えを返し、また同じ内容について聞かれて、オルキデアも同じ答えを答えるだけの、そんな一日。


 屋敷に帰してもらえないかと思っていたが、最初の二、三日は深夜遅くに帰宅させてもらえた。

 女性らしい家具が揃った部屋のベッドで、読みかけと思しき小説を傍らに眠るアリーシャの穏やかな寝顔に安堵する。

 自室に戻って軽くシャワーを浴びて、朝まで少し寝ては、また取り調べに連行される。


 深夜遅くまで休みなく軍部に出掛けるオルキデアを、心配そうに見つめてくるアリーシャの視線を感じるが、我慢して欲しいと言ったからか、何も声を掛けて来なかった。


 心配そうに、けれどもオルキデアに心配を掛けさせないように、いつもと同じ笑みを浮かべて、見送りの口付けを交わしてくれるアリーシャに心温まったのも束の間、口を割らないと判断されたのか、とうとう治安部隊に拘束されて、屋敷にも帰してもらえなくなったのだった。


「今日で三日目か……」


 拘束されてから三日目。

 取り調べを担当する兵がそう呟いた。


「まだそれしか経っていないのか」


 アリーシャと会えなくなって、かなりの時間が経ったように感じていた。

 それなのに、まだ三日しか経っていないとは思わなかった。


 一人で屋敷で待っている間も、寂しいは思いはしていないか、食事は摂れているか、怖い思いはしていないか。

 自分のことよりも、そればかりが気になってしまう。

 それに比べれば、三日しか拘束されておらず、身体も流していなければ、無精髭が生え、多少、乱暴をされただけの自分など、大したこともなかった。


「なかなか口を割らないな」

「割るような口もないからな」

「まだしらばっくれるのか?」

「知らないものは知らない。俺はそのシュタルクヘルトの元高級士官と、一切面識がないからな」

「ずっとそればかり……いい加減にしたらどうなんだ!」


 兵は声を荒げると、机を殴りつける。

 威嚇しているつもりなのか、オルキデアは何にも感じることなく、ただ机を殴りつけた拳をじっと見つめる。

 すると、取り調べ室に入ってきた兵が、オルキデアを怒鳴りつけた兵を呼んだ。

 部屋の隅で何やらコソコソ話すと、入って来た兵は退室し、怒鳴りつけた兵は戻ってきたのだった。


「ラナンキュラス少将。朗報だ。本日、貴殿の母親が郊外に輸送されたそうだ。これより国境沿いの基地に行き、国外に追放となる」

「そうか」

「貴殿の仲間であるあの間諜だが、裁判の結果、死罪が決まった。我が国の機密を漏らしたのだから当然の報いだな」


 オルキデアを共犯者としてでっち上げてから、裁判の閉廷まで随分と早い。

 通常の裁判なら、閉廷まで一年以上の時間がかかる。

 余程、治安部隊はこの件を早々に終了したいのだと考える。

 何か不都合があるのだろうか。裁判を長引かせられない理由がーー。


 そんなオルキデアの疑問に答えるように、取り調べを担当する兵が続けたのだった。


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