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報告【7】

「正式にアリーシャと結婚することにした」


 隠れ家の様な二人のお気に入りのカフェに入って、空いていたボックス席に座ったオルキデアは、二人分のコーヒーを頼むなり、向かいに座る親友にそう告げた。


「そうか」


 けれども、クシャースラはただ端的に返しただけであった。


「驚かないんだな」

「驚くも何も、最初からこうなるって、おれはわかっていたからな」

「最初から?」

「お前さんは気付いていなかったかもしれんが、今回は手元に置いておくくらい、彼女を気に入っていただろう」


 コーヒーが届けられると、一度、話を切る。

 このお店のコーヒーは挽き立ての豆が香る濃い目の味ながら、注文してからすぐに届けられる。

 提供されるまでの時間だけでなく、値段も安価であり、多忙な身である軍人になってからは、こういった店は非常に重宝していた。


 また軍部近くの店ではあるが、軍部からここに来るまでに、人気のカフェが複数軒あり、この店は知る人ぞ知る店となっていた。

 退役した元軍人の店主が営むので、万が一、軍事機密に関する話が出ても、口を固くしてくれる。

 それもあって、秘密裏に話したい時には丁度いい店でもあった。


 コーヒーを一口飲んで、変わらぬ味に安堵すると、オルキデアは口を開く。


「最初からは気に入っていないさ。最初は監視と保護が目的だったからな。なんせ、アリーシャは『訳あり』娘だ」


 アリーシャと出会ったばかりの頃、アリーシャは記憶をなくしており、更には女性捕虜ということもあって、その身を狙われていた。

 あのまま放っておいたら、いずれは餌食となっていただろう。


 新聞で正体が判明してからは、その身が政治や軍事的な道具にならないように、監視をする必要があった。

 ただそれだけだった。他に理由はない。


「いーや。それだけじゃない。お前さんがアリーシャ嬢を特別扱いしたのは、それだけが理由じゃない」

「それじゃあ、どんな理由なんだ?」

「ズバリ、一目惚れだろう?」


 その言葉にオルキデアは咽せてしまった。コーヒーを飲んでいる時じゃなくて良かった。

 そうじゃなければ、今頃、吹き出しているところだった。


「一目惚れだと……?」

「そうだろう。これまでだって、お前さんは『訳あり』の捕虜や、女性捕虜を扱ってきただろう。

 それなのに、どうしてかアリーシャ嬢だけ特別に扱っている。これはどう見ても、一目惚れに違いない」

「馬鹿を言うな。そんなはずは……」


 ない、とは言い切れないことに、オルキデアは気づく。


 最初にアリーシャを見た時、政治的にアリーシャが利用されないように、自分側に取り込もうか考えたことがあった。

 シュタルクヘルトの捕虜から、ペルフェクトのーーオルキデアの身内へと。


 今思えば、あの時から、アリーシャに気があったのだろうか。

 誰にも利用されないように、自分だけのものにしようと考えた、あの時から……。


「そんなはずは、なんだって?」


 半分面白がって続きを促すクシャースラに、「何でもない」と返して、コーヒーに口をつける。


「とにかく、話はそれだけだ」

「本当に?」

「どういう意味だ?」

「他にも話すことがあるんじゃないか。例えば、母親のこととか」


ストック切れに伴い、10月からは更新が遅くなります。すみません<m(__)m>

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