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夫婦らしく・中【6】

 そうして二人が話している間も、店内には入れ替わり立ち代わり、客が入っているようだった。

 客の入りが盛況なようで、店外で順番を待つ列が途絶えることはなさそうだった。


「さて、マルテに夕食の連絡も入れたいことだ。先に食べてしまおう」


 慌てて食べようとするアリーシャに「ゆっくりでいい」と声を掛けて、先程の戦争孤児と養子縁組の話を思い出す。


 仮初めとはいえ結婚した以上、いずれはオルキデアたちにもその話はやってくるだろう。

 昔は、「子供の教育上、必ず夫婦揃っていなければ引き取れない」といった決まりがあったが、近年では引き取り手の不足もあって、品行に問題がなければ。片親だけでも養子縁組が出来るように決まりを改変したらしい。


 オルキデアは品行も悪くなければーー女性関係は別として。ラナンキュラス家の借金を返済した今となっては、引き取り手の候補に挙がっているだろう。

 加えて、アリーシャと結婚した話が軍が知られれば、ますます養子縁組の話はやって来るにちがない。


 だがこの結婚は、目的が達成されれば、いずれは離縁する関係である。

 そうすれば、オルキデアも屋敷に住む必要がなくなり、今まで通り執務室に寝泊まりする生活になるだろう。

 これでは、子供など到底引き取れない。何かしら断る理由が必要であった。


(片親だけでもいいと、言われてもな)


 片親だけに育てられた子供が、どんな思いをして、どう成長するかは、自分とアリーシャを見ていればよくわかっているつもりだ。

 そんな自分たちと同じ思いを、養子とはいえ子供にまでさせたくなかった。

 だからこそ、これまでそういった話が出た時、オルキデアは仕事を理由に断り続けてきたのだった。


(新しい理由を考えなければならんな)


 その前に、まずは目先の問題である母のティシュトリアをどうにかしなければならない

 それが終わったら、アリーシャの今後についても。


 空になったカップを置くと、アリーシャが食べ終わるまで、購入した本を読もうかと紙袋から本を取り出す。

 そんな二人のテーブルの横を、幼い男子の手を引いた母親と、荷物を持った父親が仲睦まじく通って行った。

 その姿が、まるで片親にしか育てられなかった自分たちに、正しい家族の形を見せつけているかのように感じられたのだった。


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