6話 進展
「これは……お父さんと………誰?」
俺は、2つ折りにされた写真を真っ直ぐに直す。現れたのは、品城高校の制服を着た、男女。母さんと、仲良さそうに並んでいる。
「やはりか……じゃあ、この女に合う必要があるな。もっとも、もう居なくなっているかも知れないが」
「私にも見せてくださいよ」
飛鳥は位置的に俺の腕で写真が見れなかった。なので、俺は腕をどかし飛鳥にも写真が見れるようにする。
「あ」
「ん? 何かあったのか?」
飛鳥は写真を見た瞬間に変な声を上げた。
「い、いえ。何も3人とも仲良さそうだなぁと」
「そうだな。特にこの女は母さんと仲良さそうに肩を組んでる……」
「手掛かりになりそうね。眼鏡にショートカット、覚えておくわ。その写真もう一枚無いの?」
「あぁ、あるぞ。そう言うと思ってた持ってきた」
俺は鞄から新しくコピーした写真を渡す。
「あ、私も貰えませんか?」
「すまない。一枚しかコピーしてないんだ。次学校で合ったら渡すよ」
「そ、そうですか。お願いします」
◆◇◆◇
「私はお手洗いに行ってくるわ」
冷夏は立ち上がると、トイレの方向に向かう。
「あ、じゃあ私も行ってきますね」
飛鳥も行ってしまう。俺は時計を確認する。
「もう、遅いなぁ……」
俺は伝票を持ってレジに向かう。店員に伝票を渡してお会計をしてもらう。
「全てご一緒でよろしかったですか?」
「あぁ。いくらだ?」
「合計で2530円になります」
「え?」
「な、何かお間違えが有りましたか? アイスコーヒー1点とアイスティー2点で?」
店員は焦った様子で伝票の物を読む。
「あ、合ってます」
俺は財布を取り出しお金を取り出す。
「有り難う御座いました」
俺はそのままお釣りとレシートを握るとポケットに突っ込む。
◆◇◆◇
「お待たせ。あれ? 飛鳥さんはまだ来てないのね」
「あぁ、まだこもってる」
「今日はありがとうね。色々進展が合ったわ。どう、これからは協力関係と言う事で?」
「あぁ、俺も勿論そのつもりだ。君は品城の内部から探ってくれ」
「えぇ。それと、君じゃ無くて冷夏で良いわ」
「そうか。宜しく冷夏」
俺は握手を求めようと服で手を拭い手を出す。冷夏は迷わずに手を出して握手をする。
「お待たせしました。あれ? そんなに仲良くなったんですか?」
飛鳥が戻ってくる。冷夏は顔を赤くして手を下げる。
「い、いいえ。ただの握手よ。深い意味なんて無いわ」
「ふーん、そうですか。ま、今日はお開きにしましょう。伝票どこですか?」
「お前らがトイレに行ってる間に払っておいた」
「お、先輩流石ですねぇ」
「私は払うわ。幾らだったの?」
「別に良いさ。まぁ、情報提供料だとでも思ってくれ」
「それなら貴方も提供したはずよ? 私はあくまで対等でいたいの」
面倒くせぇ女だなぁ。俺はそう思うがこらえ、あくまで紳士的に答える。
「じゃあ、今度は奢って貰おうかな」
まぁ、そんな気はさらさら無い。
「そ、そう……分かったわ。ご馳走様」
◆◇◆◇
「今日はありがとうね」
「あぁ、こちらこそ。だいぶ進展したよ。後で今日のまとめを飛鳥から送らせる」
「えぇ、私がですか? まとめるの大変なんですよ?」
飛鳥が抗議するが俺は無視をする。
「快く引き受けてくれるそうだ。まぁ、何か進展が合ったら教えてくれ」
「えぇ。まぁ、あなた達が納得するのなら良いわ。じゃあ」
冷夏はそのまま駅に向かって歩いて行った。
◆◇◆◇
「送ってもらってありがとうございます」
「あぁ、構わないさ」
俺は飛鳥の家の前に居る。まだ、暗くはなっていないが、飛鳥可愛い。何かあってからでは遅いのだ。
「それにしても、先輩って意外と紳士なんですね」
「意外は余計だ。じゃあな」
俺は飛鳥に別れを告げると、家に向かって歩き出す。鞄からイヤホンを取り出してスマホに挿すと、”リリック”の”ライム”と言う曲を流す。古い曲だが、母さんが良く車の中で流していた曲だ。そして俺は今日の事を振り返り希望に満ちた。最近は停滞気味だった母さんの件がかなりの進展が起きたからだ。”ライム”も心なしかいつもよりいい曲だと思えた。
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