5話 カモン自販機
土曜日。俺は、例の俺と同じ状況かも知れない人の待ち合わせ場所に来ていた。勿論、飛鳥同伴である。
「っち。おっそいなぁ」
「まぁまぁ。先輩落ち着いて下さい。相手は女の子ですよ?」
「女か男かなんか関係ねぇよ。まぁ、後20分待って来なければ帰る」
「まぁ、その時は私が待っときますから」
そして、10分程してから相手からRAIL(24時間どこでも、誰とでも通話ができる無料アプリ)が届く。
『すいません。少し遅れてしまいまします。今着きました。黒い帽子を被っています。そちらはどんな格好ですか?』
俺はそれを見て、辺りを見回すが、それらしき人物は見当たらない。正直、少しの領域を超えている気もするが、あくまで紳士的に自分達の場所等を送信する。
「大丈夫ですよ。私は、眼鏡の女子と一緒に居ます。噴水近くのベンチに居るのですが、どこら辺に居ますかね?」
相手が合う場所として指定して来たのは公園。この辺だと、1番有名な公園だろう。しかし、かなりの大きさがあるので、人を探すのも一苦労だ。しかし、俺は歩き回る気など毛頭無かった。そもそも、少し苛ついているのもあるが、両者が歩き回るより、片方は動かない方が案外見つかるものだ。と、そんな事を考えていると不意に後から肩を叩かれる。
「泊内さんですか?」
◆◇◆◇
喫茶店。俺的にはコーヒー1杯に何百円も出すなど馬鹿らしいと思うが。カモン、自販機。しかし、女子が2人だ。意識高い系喫茶に行かされるよりましと考える。
「先輩は何にします?」
「俺は……アイスコーヒーで。シロップ、ミルク無しね」
「畏まりました」
店員が、オーダーを取るとメニューを回収して行ってしまう。
「先輩コーヒー飲めたんですね」
「そんな事はどうでもいい。さっそく、話し合おうじゃないか」
「そうですね。まずは……自己紹介からですか?」
「そうだな。俺は、泊内遊。と言っても、あのサイトに送るぐらいなら全て読み込んでいるだろう?」
「えぇ。私は木霊 冷夏。高校3年生よ」
冷夏は、そのまま一礼する。その時に、綺麗な黒の長髪が揺れる。
「で、本題だが」
「その前に」
冷夏が俺の話を遮る。
「何だ?」
「この子は誰? 私は、貴方のハーレムに付き合いに来たわけじゃないわ」
気に入った。俺が、何処かのラスボスなんかだったらそう呟くだろう。飛鳥の事を口撃したのは好印象だ。
「こいつは、森飛鳥。訳あって俺の手伝いをしてくれている」
「あ、どもぉ」
飛鳥が頭を下げる。
「そう……まぁ、良いわ。で、まずは貴方のお母様の年齢。36でしょ?」
「あぁ、もっともあそこのサイトに書いてあっただろ? 今更、凄いでしょ感出しながら言う意味は無いと思うが?」
「えぇ、そうね。まぁ、単刀直入に言うわ。貴方のお母様と私のお父さんがほぼ一致している。そして、私と貴方の状況もね」
「ふむ」
飛鳥は鞄から出したノートとペンを取り出すと事細かにメモして行く。まぁ、書記係位には使えそうだ。
「驚かないのね」
「別に、今更驚かないさ。と言うことは、お父様は品城高校に通っていたという事か? それも、あの伝説とも言える男子が入れた時期に?」
「えぇ、多分……同級生で同じ科だったはずよ。多分、部活もカメラ部」
「あ、そういうことか(無駄に甲高い)」
俺は、頭の中で辻褄が合いアホの子っぽい声を上げる。
「どうしたの? 何か分かった?」
「あぁ、こいつを見てくれ」
俺は、財布から、1枚の写真を取り出す。その写真は真ん中から折れ曲がっており、綺麗に後ができている。
「女性? それが、お母様?」
そこに写っていたのは、カメラを首からかけた女性だった。
「あぁ、そうだ。俺の母さんだな」
「で、何よ。あぁ、そう言う事ね。首からカメラをかけている……やっぱり、カメラ部」
「いや、違う。こういう事だ」
俺は、折れた写真を直しまた見せる。
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