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採掘しよう!

『深部への道は全て閉ざしてある。用があるなら地下道を使って入ること』


 難しい言葉で色々書いてあったが、要約するとこういうことらしい。

それをお嬢様から聞いた私は、すぐさまピンと来た。

この文章が表すところは、おそらく「【採掘】スキルを使って地下の入口を掘り出してね」というものだろう。


 いや、間違いない。私の勘がそう言っている。

そのことについてユユキちゃんやお嬢様に伝えても良かったが、確定はしていないから、もし違った時若干申し訳無いので伝えなかった。


 そして、他の瓦礫の山を吹っ飛ばしてもヒント等は出てこなかった。という訳で久々に本気が出せて楽しかったというユユキちゃん、そしてその文字列に頭を悩ませるお嬢様と別れて私は返す刀で炭鉱へと舞い戻ったのだった。


「ん?おぉ、お嬢ちゃんじゃないか!また来てくれたのか!」


 おじさんが話しかけてくる。

やっぱりこのおじさんが今んとこ一番の癒しだ。なんというか、下心を感じない。


「道具はレンタルで。入場お願い」


 私は【採掘】スキルをセットしながらおじさんに伝える。そろそろ道具もレンタルじゃないのにした方が良いかもなぁ。


「分かったぜ。それで……お嬢さんの【採掘】レベルは4だから、入場料は1000ゴールドだな」


「えっ上がるの?」


「おう。レベルが上がればその分入場料も上がっていくぜ」


 アミューズメントパークかよ。いやアミューズメントパークはそんなことしないか。

こっちの方が余程悪質だな。まあおじさんが悪い訳ではないし、ヘイトは運営にしか向かないけども。


「はい、1000ゴールド」


「おう。今回のノルマは石炭10個だな」


「そこは変わらないんだ」


 タスク欄に石炭10個と記載される。確か前回もそうだった気がするんだけど、ここは変わらないのかな?


「こっちは【採掘】レベル5づつで変わるな。それと、情勢によっても変わってくるから注意した方が良いぞ」


「ういっす」


 まあ変わるよね。そんなヌルい訳がない。

という訳で、私は借り物のツルハシとランタンをひっさげ炭鉱に入場したのだった。



――――



 一度採掘した場所は記録に登録されているために、自動でトロッコを向かわせることができる。私はそのシステムを使って昨日よく分からんものを発見した場所へと赴いた。


「うーん……この模様、やっぱり」


 ウィンドウに〔パライオン遺跡〕でこっそり撮っていたスクリーンショットを表示しながら、私は呟く。

あの場所の壁にあった模様と、今目の前にある模様がかなり似ているのだ。まあ案の定、って感じだけども。


 おそらく、この物体は壁だ。この中が深部なんだろう。

……まあ、それが分かったところでこの向こう側に行く術が無いからそこまで意味は無いんだけど。


 私はツルハシで叩いてみる。ツルハシが吹き飛ばされた。

いやどうなってんの?


 まあね。分かってたよ。強がりとかじゃないからマジでこれ。

多分、この壁を破壊することはできない。だって、破壊して入場するのならわざわざあの文章に「地下道を使って入ること」なんて書かないだろう。


 私はそう考えてクールダウンした。おそらくそうしなかったら貴重なパクってきた爆弾を使うことになっていただろう。


 さて。その地下道とやらを探すためにどんどん掘っていきますか。

私はツルハシを構えた。覚悟しな。



――――


[【採掘】のレベルが5になりました]


[〈疲労軽減〉のレベルが2になりました]


[『石炭』を3個入手しました]

[『鉄鉱石』を1個入手しました]

[『銅鉱石』を1個入手しました]


――――



 軽くその壁の周りを掘ったところ、どうも壁は上下に伸びていることが判明した。

なのでとりあえず下に向けて掘っていたのだけれど。途中で掘ることができなくなり、こんなシステムメッセージが流れてきた。


[「炭鉱第二層」を掘るには採掘力が不足しています]


 ……採掘力?何それ。

そう思っていると、ゲーム側から「採掘力について」と銘打たれたヘルプが流れてきた。

私は早速そのヘルプを読む。


 ……なるほど。要約するとこういうことらしい。

採掘力は【採掘】自体のレベルやツルハシの質等で上がる値で、それが文字通りプレイヤーがどれだけ掘れるかを表しているそうだ。で、それがエリアごとに決められた値に達していないとなんと掘ることすらできない。


 んで、私が今さっき掘ろうとしていた場所は今いる「炭鉱第一層」ではなく「炭鉱第二層」。ネットで調べたところとりあえず【採掘】レベルが10は無いと掘ることすらできないらしい。


 ……結構いやらしいな、このシステム。

私としてはさっさとパライオン遺跡の深部に入ってみたかったんだけど、どうもシステム的に入るためにはめっちゃ良いツルハシを手に入れて【採掘】レベルを上げるしか無いみたいだ。


 はーめんどくさ。どれくらい面倒かって言うと友人付き合いで興味ない映画見る時くらい面倒だわ。まあ採掘は楽しいから良いんだけどさぁ。今の関心は深部なんだよね。


 とはいえどれだけ文句を言っても仕方が無いので、私は運営に意見だけ送って文句をたれるのをやめた。とりあえず深部へ行く、っていうのはかなり先の目標にするとして。折角来ちゃったんだし、今は掘るか!


 私はツルハシを思いっきり振り下ろした。


――――


[【採掘】のレベルが6になりました]

[【採掘】のレベルが7になりました]


[〈疲労軽減〉のレベルが3になりました]

[補助スキル〈採掘範囲増加〉レベル1を習得しました]


[【採掘】のレベルが8になりました]

[【採掘】のレベルが9になりました]


[〈梁強化〉のレベルが2になりました]

[補助スキル〈マルチプル〉レベル1を習得しました]


[【採掘】のレベルが10になりました]


[『石炭』を21個入手しました]

[『鉄鉱石』を9個入手しました]

[『銅鉱石』を5個入手しました]

[『不思議な石』を1個入手しました]

【『不思議な石』を2個入手しました】


――――


 意外と早く【採掘】レベル10にできたわ。まだ30分も掘ってないんだけど。

この体の筋肉の使い方には慣れてきたし、もっと掘れるな。


 けれど、私はここで一旦採掘を切り上げることにした。

ネットで見ていたところ、「炭鉱第二層」からは事故死の可能性が生まれるらしいのだ。もし炭鉱労働中に死んだ場合、炭鉱で入手したアイテムの半分ほどを失うらしい。普段はそんなことないのにどうしてなんだよ、とツッコミたくなったがすんでのところで我慢して運営に意見を送った。


 今回、結構アイテム入手してるしね。失いたくはない。貧乏人の性だ。後まあ普通に寝る時間が近いってのもある。

という訳で、私は未知のアイテムを入手したからお嬢様の住み着いている露店エリアへと向かうことにした。


「お嬢様ー!居るー!?」


 完全にオータムフォールお嬢様とフレンド登録することを忘れていたので居るかどうかは分からない。けどまああいつユユキちゃんによれば廃人らしいし居るでしょ。


「あらシィさん。何か用でして?」


 居たわ。いやー良かった良かった。


「このアイテム鑑定して!」


 私はお嬢様に炭鉱で入手した『不思議な石』2種類を突きつける。


「ええ、問題無いのですが……ご自分で鑑定は?」


「してない」


 お嬢様は私をジトっと見つめてきた。分かりました分かりました、やりますよっと。どうせ無理だろうけどさぁ。

だって〈鑑定〉のレベル1だよ?絶対無理じゃん。


[『光石』の鑑定に成功しました!]

[{0%}→{40%}]


「ごめんできたわ」


 お嬢様はため息を吐いた。

いやうん、ごめんて。本当マジで。


 私はその流れでもう1つの『不思議な石』も鑑定してみることにした。

システムメッセージが流れる。


[鑑定に失敗しました]


 ほらな。私はドヤ顔をした。まあこの未来は見えてたんで。だからお嬢様のとこに来たんだよね。

という訳でお嬢様、鑑定よろしくゥ!


「ウザいですわ……」


 オータムフォールお嬢様は渋々アイテムを手にして〈鑑定〉をした。そしてそのまま額に手を当てた。


「しかもまた知らないアイテムを持ってこられましたわ……なんなんですかこの人……」


 えっ?私、また何かやっちゃいました?


 私は思いっきりお嬢様に叩かれた。ごめんて。

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