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遺跡を探検しよう!

「ここが〔パライオン遺跡〕の入口ね」


「分かり良~」


 ユユキちゃんがいかにも何かありそうです感溢れる、朽ちたまあまあデカい建造物を指差す。

まあダンジョンの入口が分かりにくかったら困るしね。何のためのダンジョンだってなるし。


 そんな中、私が思いついたことを口走る。


「そういやお嬢様居ないし別に〔パライオン遺跡〕って行く必要無くない?」


 そうじゃん。お嬢様の頼みで来たけど今なんでか知らんが居ないから行く意味が無いじゃん。

だが、そういうことでも無いらしい。ユユキちゃんは私に言う。


「いえ、〔パライオン遺跡〕はオータムフォールさんの良くわからない動機抜きにしても初心者には丁度良いダンジョンよ。〔ケルサ密林〕はここより少し必要なレベルが多いから」


「なるほど」


 私は狩りによってレベル5にまで上がっていた。

後で調べたところ、〔パライオン遺跡〕の推奨レベルは4、〔ケルサ密林〕の推奨レベルは7らしい。ならここに来るのも頷けるか。


 ちなみに、レベルアップの仕様はスキルレベルの上昇によって手に入る経験値が貯まると本人のレベルが上がる感じだ。よって今の私のスキル欄は戦闘ではスキルが上がらない【採掘】を捨てて【体術】と【短剣術】の二つを設定している。


「待っていましたわよ」


「えっ」


 私は思わず声を上げた。

え、なんでお嬢様ここに居んの?


 お嬢様はふっと笑ってカッコつける。


わたくしが捨てられたことには気づいておりましたわ。なので出待ちですわね」


 こ、こいつ……。

そんなんだから没落すんだぞお前。

 

「今回は死んでも待たないけど」


 ユユキちゃんが言う。

ダンジョン内で死んだからといってダンジョンの入口で復活はできない。街に戻される。

〔パライオン遺跡〕って結構遠いし、流石にこれまでのように待ってられない。いや待ってられなかったけども。


「勿論ですわ。今度こそ死にませんことよ」


「全然戦ってなかったけどレベルは?」


 私は身も蓋もないことを聞いた。

お嬢様はふんすとする。


「大丈夫です、生産系統のスキルを鍛えているので16はありますわ」


「何でお前それで雑魚に殺られてんの?」


 謎だわ。本人のレベルが上がればステータスが上昇する。なのにどうしてこれまでポンポン死ねていたのか。


 ユユキちゃんが一つ息を吐く。


「じゃあ、まあとりあえず行きましょうか。けど、本当に待たないわよ?」


「承知の上ですわ」


 大丈夫かなぁ。私は不安になった。



――――



「ぎゃー!助けてくださいましー!」


 案の定だった。

私は推奨レベルと同じくらい。ユユキちゃんは私と強さを合わせる為にあえて弱いスキルで戦ってる。レベル差という暴力を行使しているのはお嬢様だけだった。なのにこれだ。なんだお前。


「ってもね……!」


 こっちはこっちでモンスターに囲まれてい助けに向かえない。ユユキちゃんも同じだ。

これは死ぬな、南無三。そう思った時だった。


「どうも奥の手を使うしか無いようですわね……!」


 オータムフォールお嬢様はそう言って目をキリリとさせた。

そのままインベントリから黒い球体を取り出す。そしてそれを襲いかからんとする敵へ投げつけた。


 結構な音を立てて、その球体は爆発する。その一撃でお嬢様を取り囲んでいたモンスターは消え去った。


「えっ何今の」


 私は何が起こったのか分からずに呟く。お嬢様は胸を張った。


「これは私の知人の錬金術師に作ってもらった爆弾ですわ!」


 いやお前が作ったんじゃないんかーい。

つーかそれ最初から使えよ!私はモンスターと戦いながら文句を言う。

お嬢様は吠えた。


「嫌ですわ!これ一発1万ゴールドもするんですわよ!?」


「いや、オータムフォールさんってお嬢様でしょ?」


 ユユキちゃんの冷静なツッコミにお嬢様は言葉を詰まらせた。

そういやそうじゃん。というかあの人のお嬢様要素段々消えてきてない?


「そ、そんなことありませんわ!ほら、早く先に行きましょう!」


 私達がモンスターを片付けたのを見て、アイデンティティを失いつつある人は私達の手を片方づつ掴んで奥へと引っ張っていった。


「で、深部のアテはあるの?まさか無いとか言わないよね?」


 私はお嬢様にこっそり耳打ちする。

オータムフォールお嬢様は頷いた。


「ありますわ。〔パライオン遺跡〕の今見つかっている中では一番下の階層。そこはまだあまり詳しく調べられていませんからね」


「そうなんだ」


 調べるなら徹底的に調べそうなものだけどね。私はそう思った。

すると、そんな私の思考を読んだのかお嬢様がこう言う。


「あの場所はモンスターが強くて、普通に戦うだけでも結構な消耗を強いられるんですわ。マップがちょっと狭いくらいしか手がかりが無いのに、無理して調べるやる気も起きないですからね」


「なるほどなぁー」


 そういやそうだったわ。私とオータムフォールお嬢様は〔パライオン遺跡〕に深部があるって知ってるけど、他のプレイヤーはそんなの全然知らないもんね。


 そう秘密会議をユユキちゃんの目の前で行っていた私達。流石にユユキちゃんから尋ねられた。


「……そろそろ、何が目的でここに来たのか教えてほしいのだけれど」


 お嬢様は慌てふためく。いやなんでそんな慌ててんの?もしかしてバレないで済むとか思ってたの?それは希望的観測がすぎない?


「ま、ユユキちゃんは悪い人じゃないからさ。教えても良いんじゃない?」


 私はお嬢様に言う。お嬢様は観念したようだった。



――――



「そういう訳なんすよ」


 私は雑に説明した。


「ええっ……!?前々から言われていた〔パライオン遺跡〕が少し狭くてその狭まっているところに何かがあるという噂が実は本当で、シィが見つけたアイテムの鑑定文に〔パライオン遺跡〕の深部がある、そう記載されていたからそれを確かめるためにここへ……!?」


 めっちゃ説明するじゃん。

いやというか私そこまで詳細に説明してないんだけど。ユユキちゃんの物わかりめっちゃ良くない?


「まあ……それなら納得だけど。なら、行くのはあの場所で良いのよね?」


「ええ、そうですわ」


 二人は頷きあう。

うーん、置いてけぼり感が否めない。私も混ぜてー!


 お嬢様とユユキちゃんは「あー」と言いたげな顔をしてこちらを見た。え、何?何なの?


「今から行く場所は、相当敵が強いんですわ。だから貴方が行っても囮くらいにしかなりません。いや元々そのつもりでしたけれど」


「正直、〔パライオン遺跡〕最下層は今のシィのレベルでは厳しい場所よ。まあ……シィのことだから、行くんでしょうけど」


「お、よく分かってるね。あとお嬢様、後で屋上来て」


 あいつは裏でシメるとして。

それだけ難しい場所なのか。ユユキちゃんが言うってことは相当だよな。そう若干ビビっていると、ユユキちゃんが助け舟をくれた。


「オータムフォールさん。爆弾を少し分けない?私は必要ないけれど」


「あぁ、それはそうですわね。これならシィさんも戦えますわ」


 え、ちょっと待って?

それ普通に思いつくことだよね?何お嬢様「それを聞いて初めて考えつきましたわ」みたいな反応してんの?

マジで私囮にしか思ってなかったの?今ん所どっちかっていうとお嬢様の方が囮だよ?


「はい、シィさん」


 私は内心ツッコミたくてしょうがなかったが、我慢して爆弾を貰った。

……3個じゃん。私はガンを飛ばした。


「ひっ。い、いや……5個しかなかったので。それにさっき1つ使ってしまいましたし」


 シケてんなぁ。とはいえタダだったので私は特に文句を言わずに貰った。


「それじゃあ行きますわよ!」


 そういうことになった。


 お嬢様が立てた作戦はこうだ。

まず、私とユユキちゃんが敵の注意を引かせながら敵をなるべく倒す。その間にお嬢様が深部についての情報を調べる。以上。これ作戦か?


 私達は、危険と大きく張り紙がされている扉を開け放つ。瞬間、内部に居た機械達が一斉にこちらを向いた。


 そこからは、これまでと比べ物にならないレベルの戦闘が待っていた。

レーザーが飛び交い、ユユキちゃんのなんかよく分からない派手なスキルが飛び交い、お嬢様の悲鳴が飛び交う。


 というかこれユユキちゃん本気出してるよね。ユユキちゃん並のプレイヤーでようやくギリギリ優位に立ててるって、このエリアどんだけなんだよ。しかしそうツッコんでる余裕はない。目の前をレーザーがかすめた。


 私は慌てて近場の瓦礫の山に隠れる。他の場所以上に荒れ果てているおかげで、遮蔽物が多くて少しだけやりやすい。まあ敵の火力が強すぎてそんなちょっとしたメリットなんて消え去るんだけども。


 そう瓦礫を盾にしている時だった。足元から、機械の動く音が聞こえた。

うーん?私は下を向く。


「げっ」


 つい言葉が漏れた。ガッツリモンスターを踏みつけていたみたいだ。そのモンスターは私の方に照準を合わせ、レーザーのチャージを始める。

やべー。死ぬじゃん。


 私は慌てて爆弾を取り出して発射口へ押し付けた。そのまま思いっきり後方へバックステップする。


 次の瞬間、爆弾が爆発した。近くの瓦礫の山を吹き飛ばしながら、モンスターをポリゴンへと変える。

その時だった。お嬢様が叫ぶ。


「これは……シィさん!お手柄ですわ!」


 え、何?急に褒めないでよ、嬉しいけどさ。

いや私マジで何したの?そう混乱する私をよそに、お嬢様がレーザーの群れを抜けてさっきまで瓦礫の山があった所へ駆け寄る。


 あ、そういうことか。私は察した。

瓦礫の山の下。そこにヒントがあったってことね。

お嬢様は、恍惚とした表情で床に刻まれた文章を見ていた。

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