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鑑定してみよう!

 システムメッセージが流れる。


[最低価格‐8万ゴールド]

[最高価格‐11万ゴールド]

[値段はどうしますか?]


 ……は?

おい待てや。これどう考えてもすっごいレアで滅茶苦茶高いアイテムって流れじゃん。

普通にさ……安くない?何なの?舐めてんのか?


「……すぞ」


「どうしました?」


 思わず危険なワードを呟きそうになった私へ、オータムフォールお嬢様が話しかけてくる。私はお嬢様に泣きついた。


「お嬢様!このアイテム滅茶苦茶安いんだけど!最高11万!安すぎ!」


「いや……それ高い方ですわよ?」


「えっそうなの?」


 私はオータムフォールお嬢様にたしなめられた。

どうも、お嬢様の創り上げた雪の結晶のアクセサリー(80万)が異常に高すぎるだけらしい。というか、効果こそゲーム中随一だが値段もゲーム中最高レベルだそうだ。なるほどなぁ。


「諦めます」


 私はオータムフォールお嬢様製のアクセサリーを買うのは諦めた。もう一生分の運を使い果たした気がするし、その運を使って手に入りそうな金が最大で11万だ。今日はもうそろそろ終わるし、どう考えても明日までに80万稼ぐのは無理でしょ。


「懸命な判断ですわね」


 じゃあなんで止めてくれなかったの?


「え、ビギナーズラックで何とか稼いでくださるかなって……」


 こ、こいつ……。

私がそう殺気を飛ばしていると、お嬢様はわざとらしく咳払いを一つしてこう言った。


「ま、まあ。頑張ってくださったのですし、何か代わりのアクセサリーを作ることくらいはしますわよ」


「え、良いの?流石オータムフォールお嬢様!」


 私は手の平返しを炸裂させた。流石お嬢様は格が違うなぁ。憧れちゃう。


「とりあえず工房まで付いてきてくださいな」


 そういうことになった。



――――



「ここどう見ても他人の工房じゃない?」


「言わないでくださいまし!落ちぶれた者の定めですわ……」


 お嬢様はおよよと泣く。泣くこた無いだろ。

ちょっと気になったので知らない人に軽く話を聞いたところ、どうもプレイヤーは相当なゴールドが無いと自分の工房を持つことができないらしい。まあそりゃそうか。


「それで、貴方はどんな素材をお持ちで?」


「えっと……石炭が結構と、謎の鉱石が二種類……」


「謎の鉱石ですか。少し見せてくださいな」


 私は渋々お嬢様に採掘した『硬い鉱石』二種類を渡す。

オータムフォールお嬢様はそのアイテムをピカッと光らせた。どうも〈鑑定〉したらしい。


「なるほど、『鉄鉱石』と『銅鉱石』ですわね。よくある鉱石です」


「そっかぁ……」


 実は伝説級の鉱石だったりはしないかぁ。


「では、この鉱石を精錬しますわね」


 お嬢様は腕まくりをする。

移動中にこのオータムフォールお嬢様先輩から聞いたが、金属系のアイテムは鉱石を一度精錬し、インゴットとかにしたものを加工することでアイテムが完成するらしい。

ちなみに鉱石によって特殊な効果が付いたりもするとか。


「……ふむ。純度こそ微妙ですけれど、私の腕にかかればどうということは無いですわ」


「純度?」


 私はUPで聞いたことがない単語が出てきたのでお嬢様に聞いてみた。


「ええ。おそらく鉱石の使いやすさとか、金属が含まれる割合とかですわね。ちなみに貴方が渡したものは下の中レベルですわ」


「マジかー」


 というかアイテム一つ一つにそういう要素あるんだね。

凝ってんなぁ。

というかそんなゴミ使って大丈夫なのお嬢様?


「ええ、まあ。ある程度精錬する時になんとかできますから」


「さっすが」


 お嬢様は鉱石を近くにあった炉の中へ放り込む。

いや投げ方雑っ!最早炉を見てないんだけど!


「私の〈精錬〉スキルのレベルボーナスがかかるので、まあインゴットにすれば……おそらく中の下くらいの品質にはなりますわね」


「すごっ」


 実際どれくらい凄いのか分からなかったけれど、とりあえず私はお嬢様をヨイショした。

オータムフォールお嬢様は誇らしげにしている。


「ふふん。ですけれど、本番はここからですわ。これを加工することが私達鍛冶師の一番の仕事ですから」


「なるほどー」


 私は適当に相槌をうった。まあ普通にどういうことするのか気になってるんだけどさ。

割とね、私って多分鍛冶師とか向いてないんだよね。

私全然器用じゃないの。なんなら滅茶苦茶不器用な部類だと思ってる。まあ器用さが求められる作業なんてやったこと無いんだけど。


 そうこうしている内に、お嬢様がカンカンとインゴットを叩き始めた。


「どういう感じのアクセサリーにする予定で?」


「ガワだけ欲しい、って最初にあのアクセサリーを見た時言っておられましたわよね。ですから、なるべく雪の結晶らしくなるようシステムにリクエストして作るつもりですわ」


「察し良~」


 流石だわこのお嬢様。アイテムを盗らないのに加えて気配りもできる。満点じゃん。私勝ち目ないよこの人に。


 そう勝手に敗北している私を尻目に、お嬢様は金属を叩き続ける。

そんな時、オータムフォールお嬢様が私に質問をしてきた。


「聞いてよろしければ、の話ですが。どうやって、そしてどこであのアイテムを手に入れたので?」


 げっ。やっぱ「つい……」じゃ誤魔化せなかったか。あれ手に入れた場所なぁ。絶対曰く付きのヤバいところでしょ。簡単に人に話して良いことじゃない気がする。

私は適当を言った。


「採掘してたら急に巨大なゴーレムが出てきたの。で、それをツルハシ一本で私がなぎ倒すとそこから――」


「嘘はいいので」


 チッ。バレたか。

あそうだ。良いこと思いついた。


「ねぇ、オータムフォールさん。どうしてさっきの言葉が嘘って分かったの?」


 沈黙が流れる。これは……どうだ?


「いや、どうしてカマをおかけに……私何も知りませんわよ?というか、そもそも採掘中にゴーレムが現れる訳ないでしょう」


「それもそっすね」


 カマかけ失敗したわ。クッソ、成功したら白雪ちゃんに威張れることが増えたのに。

お嬢様は一つ息を吐く。


「言いたくないのならそれで良いのですけれど。少々気になったことがございまして」


「気になったことって?」


 なんだろ。私の友達が実は白雪ちゃんしか居ないってバレたとかかな?


「貴方は初心者がまず最初に挑むダンジョンはご存知で?」


「全然」


「そうですか。まあ、大きく分けて〔パライオン遺跡〕と〔ケルサ密林〕の二つがあるんですけれど、貴方が発見したあの石版片。あれ、パライオン遺跡に関連してるテキストが書いてありまして」


「えぇ?」


「炭鉱に行ったのに、どうして〔パライオン遺跡〕のアイテムを手に入れたのか。それが気になったのですよ。実はダンジョン潜ったりは……幾つか鉱石をお持ちですし、してませんよね」


「うん」


 んん?どういうこっちゃ。

ってことは、あの謎の八角形っぽい壁がそのパライオン遺跡って奴の一部なのかな?


 そう考える私を尻目に、お嬢様は話をどんどんと進めていく。


「初心者用のダンジョンですし、あそこから出るアイテムにしては販売価格が高すぎたので。どうもおかしいな、と」


「〔パライオン遺跡〕って、今の所最高でどれくらいの値段のアイテムが出るの?」


「おそらく2万ゴールドですわね。というか、11万ゴールドで売れるアイテムなんて、普通初心者が運良く手に入れられるものでは無いですし」


「あ、そうなんだ……」


 私の中での価格基準がどんどん変わるんだけど。

結局あのアイテムってまあまあ高価なアイテムってことで良いのかな……。


「んー……。あ、お嬢様。そういや何かもう一種類アイテム手に入れてたんだった。それ鑑定してもらっても良い?」


「もう一種類、ですか?ええ、分かりましたわ」


 確か、あの時『謎の石版片』の他に『幾何学模様の球』ってアイテムも入手してたよね。

どうせ私じゃ鑑定できなさそうなアイテムだし、渡しちゃっても良いでしょ。

私は『幾何学模様の球』をお嬢様に渡した。


「では、〈鑑定〉っと。……なっ。これは――どういう!?」


 そのアイテムを鑑定した直後、お嬢様がガタッと立ち上がる。

えっ、なに!?どったの!?

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