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またイベントがあるらしい!

 まあどうすれば生還できるかなんて悩むほどでも無いんだけどさ。

普通に撮ってた動画をフルで見せれば済むことでしょ。


「どうどう。落ち着いて落ち着いて。誤解だから。とりあえずあの動画をフルで見て欲しいんだけど」


 とりあえず私はさっきの動画をフルで流した。当然、メイドという言葉の意味が素材を集める仕事を担うプレイヤーという部分を含めてだ。


「本当ですか?」


「それ、付け足したりはしてないでしょうね」


 なんでお前ら疑ってくるんだよ!

クッソ、お嬢様なんで逃げたんだ。居ると居ないのとでかなりこの場を切り抜ける難易度が変わってくるのに。


 そう困っていた時だ。

一触即発の雰囲気が漂っていた空間に、恐れを知らぬプレイヤーの声が響く。


「2人共、信じてやりな」


 全員はその声の元を見る。そこにはまあまあガラの悪そうなプレイヤー、即ちナツハさんが立っていた。


「あたしは最初から見てた。オータムフォールの言うメイドってのは字面通りの意味じゃなくて、さっきの動画の通りの意味さ」


 な、ナツハさん……!味方してくれるんですか!

その加勢により、風向きは大きく変わる。


「ナツハ、本当?」


「ナツハさんが言うなら……」


 あ、というかユユキちゃんもナツハさんと面識あるんすね。まあそれなら話は早いだろう。急に知らん人が出てきて言うのとじゃだいぶ違うし。


「ほら行った行った。シィにも用事があるんだ、くだらないことで引き止めんじゃないよ」


 ナツハさんが優しく2人を諭す。2人は渋々としながらも頷いて、それぞれ別の道へと去っていった。

ナツハさん……かっけぇっす……。


「あ、姉御……ありがとっす」


「いや、姉御って何さ……普通にナツハで良いから」


 ナツハさんは少し恥ずかしそうにしながら頭をかいた。

いやほんと、マジで助かったっす。あざっす。


「別に、お礼なんて言わなくて良い。当たり前のことをしただけだからね」


 スゲェ……イケメンだ。これからは勝手に姉御と呼ばせてもらおう。

そして私はそのままお嬢様が勝手に使ってるどっかの工房へ行こうと思ったが、その前にナツハさんに肩を叩かれた。


「……今はまだ良いさ。けど、最後に2人を不幸にしたら――絶対許さないよ」


 ひっ怖い!というか最後にって何なの!?

え、というか2人って話の感じからしてリーフスプリングさんと後……ユユキちゃんだよね?じゃあナツハさんとユユキちゃんってどういう関係なんだ?

そう混乱する私をよそに、ナツハさんはすたすたと立ち去っていく。



――――



「こちら、ツルハシですわ」


「そうだな」


 私は椅子にふんぞり返ってツルハシを受け取った。

私は貰ったばかりのツルハシの能力を見る。


――――

『錫のツルハシ』{100%}

製作者:オータムフォール

アイテム:装備

採掘力+217

――――


 採掘力+217か。

おじさんの持ってる鉄の奴が+130程度と考えると、結構上がるな。


「本来錫のツルハシはプラス190が平均なのですが、私頑張ってプラス217にしました」


 なるほど、お嬢様の力か。やはり一流の生産職だけあるな。


「ふむ、良いことだ。下がってよいぞ」


「は、ははーっ」


 ……と、ここまでやった後。遂にお嬢様が文句を言ってきた。


「あ、あの。立場……逆転してません?」


 いやだってさぁ。お嬢様逃げたじゃん。

逃げなかったらめっちゃ楽に説得できたよ?というかなんで逃げたの?


 私は問い詰める。お嬢様は答えた。


「いや、だって怖かったですから……」


 は?

と私はキレそうになったが、よく考えたらユユキちゃんとリーフスプリングさんって物凄い有名人か。その点を考慮すればまあ確かに分からんでもないな。


 まあ仕方がない。お嬢様を爆発に巻き込んで落とした事件の菓子折りを持っていかないことで手を打つか。


「すっごいイラっとくるんですけれど」


 お嬢様が何か言ってるが無視だ無視。

あ、そうそう。というかビッグジェリーフィッシュの素材持ってこれなかったけどさ、ギガントの方でも大丈夫なの?


 私は尋ねた。ユニークモンスターを倒したって通知を見たプレイヤーに絡まれるのが怖かったので、結局ビッグジェリーフィッシュを狩らずにお嬢様の占拠している場所に来たのだ。


 お嬢様はその質問に答える。


「ええ、似たような素材なので問題は無いですわ。というか、質がかなり上がるので嬉しいと言った方が良いかもしれないですね」


 あ、そうなんだ。良かった~。

じゃあとりあえずこの依頼はなんとか達成か。色々あったが最終的にはめでたしめでたしって訳だな。


「また何かあったらよろしくお願いしますわ」


「こっちこそお願いね」


 さて、そういう訳で早速私は試し掘りのために炭鉱へ行こうとしたのだが。

お嬢様がそんな私を引き止めてくる。


「そうそう。パライオン遺跡の深部についてなんですけれど、新しい情報が見つかりましたわ」


「えっマジ?」


 お、深部についての新情報か。

なんだろ。実は別のところから入れるとか?そういうのだったら嫌だな。


「今度のイベントと関係のある話なんですが。まず、今のイベントって知ってます?」


「いや全然」


 え、今も何かやってるんだ。初めて知ったぞ。

というかさ。イベントの間隔狭くない?まだ全然バトロワ終わってから経ってないよ?こんなハイペースで大丈夫?


「いえ、そもそもバトルロイヤルも今のイベントも同時期に開催されたものですけど。……もしかしてシィさん、公式サイトとかチェックしてないんですか?」


「してないっす」


 お嬢様は額に手を当てた。

いやでもさ、ゲーム内でアナウンスとか無かったし。仕方無くない?仕方無いよね。


「ログインした時に思いっきり表示されてますけど」


「あっ」


 そういや私それ二度と表示しない設定にしてたわ。後で確認しようと思って完全に忘れてた。

いっけね。


「……とりあえず、説明しますわね。まず、大雑把に言ってしまえばこのイベントは敵モンスターが街に侵攻してくるイベントです」


「あーなるほど」


 私は全てを理解した。そういうことね。


「って思ってそうなので言いますけど、このイベントはこちらから攻め込むこともできます。攻め込む事が解禁されるのが1週間後ですわね」


「あーなるほど」


 今度こそ私は全てを理解した。そういうことね。


「って思ってそうなので言いますけど、まともに攻め込むためには各地に眠る『記憶の断片』というアイテムを手に入れる必要があります」


「あーなるほど」


 私は完璧に全てを理解した。そういうことね。


「本当に理解してます……?」


 まあ見てなって。私はお嬢様へ向かってイベント内容の予想を語る。


「要するに、敵モンスターが攻め込んでくるタイミングが決まってる。でもこっちから攻め込むことで来るモンスターの数を減らせるんでしょ?で、まともに攻め込むため――つまり敵モンスターの弱体化に必要な『記憶の断片』ってアイテムがパライオン遺跡の深部にある。どう?」


「えっ……」


 お嬢様が怯える。まあな、これが私の本気だ。

いや待てよ。これもしかして全然違うパターンじゃね?お前全然読み取れてないじゃんみたいなさ。


「ピッタリ当たってますわ……」


 当たってたわ。そんなことなかった。私はイキり直した。

まあな、これが私の本気だ。


「そういうところは凄いですわよね……とりあえず、その通りです。敵モンスターを弱体化させる『記憶の断片』があるので、もし行く時はそれを忘れないで取ってきてもらいたいんですわ。それだけ今のうちにお願いしたくて」


「なるほどね。まあ任せてよ、深部に行けたら絶対取ってくるから」


 私は胸を張った。

しかし、この時私は気づかなかった。私の力ではどうやっても太刀打ちできない、強大な魔の手が私に迫っていることに――。

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