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新しいスキルを身に付けよう!

「で、その見たことないアイテムってどんなアイテムなの?」


「……正直、謎ですわ。鑑定文を読んでもあまり分かりません」


 えっそうなの。アイテムに一番詳しそうな人がお嬢様なのに、それでも分からないってどういうこっちゃ。

まあとりあえず見てくださいな、そう言われて私はそのアイテムを手渡された。


「どれどれ……」


 私は『生成石』という名前に変化したアイテムを見てみる。


――――

『生成石』{50%}

アイテム:道具


 建造物の記憶を蓄えた石。

破壊することでその記憶が放出され、石を中心に取り込んだ記憶と似通った建造物が建設される。


※特定のエリアでのみ使用可能

――――


「若干分かんないねこれ」


 若干分かんなかった。いや、なんとなくは分かるんだけどね?使ったらどうなるのかの実感が全く湧いてこないっていうか。

しかも特定のエリアでのみ使用可能って何だよ。その特定のエリアを書いてくれよ。


「とりあえず割ってみる?」


「いや……それは迷惑なのでは?」


 振りかぶった手はお嬢様に止められた。

まあ、こういう街とかで建造物ができちゃったら死ぬほど迷惑だもんなぁ。あぁ、だから特定のエリアでしか使えないのか。

となると普通のフィールドでは使えないと見た方が良いな。じゃあどこで使えるんだよって話になってくるけども。


「まあこれは放っとこ。じゃあさ、お嬢様ってこっちは分かるの?」


 私はオータムフォールお嬢様を試したくなったので『光石』というアイテムを見せてみた。お嬢様はアイテムを受け取る。


「あぁ、こっちは分かりますわ。アイテム名は『光石』。光の記憶を取り込んだ石で、破壊すると綺麗な光が出てきますわね」


「え、待って」


 私はその説明を聞いて、思わず呟いた。

お嬢様はその反応に首をかしげる。


 そんなアイテムあるの?待ってよ、それがアリならもしかしなくても、“ああいう”アイテムが作れるんじゃないの?

私はお嬢様に土下座した。


「お嬢様!『光石』使って何か作って!お金なら出すから!」


 私はお嬢様へ頼み込む。お嬢様は困惑していた。


「ちょっ、どういう流れでこうなったのかよく分からないんですけれど」


 私はそれを無視してただ頼み込む。


「お願い!」


 いや、だってさ。このアイテムで武器作りたくない?光る石だよ、光る鳴るゲーミング武器作れるじゃん。そういうのめっちゃロマンあるよね。私超作って欲しいんだけど。

だが、お嬢様からの返答は予想の斜め下を突き抜けるものだった。


「えっと……『光石』って、そもそも素材アイテムじゃないので作れませんわ」


「は?」


 は?

お前……お前、そんなことある?

私は密かに運営に対してキレた。


「そんな……そんな……」


 私は絶望した。ただひたすらに絶望した。

立ち上がる気力すらも無くし、ただその場に横たわる。


「いやそんなショックなんですか……?」


 何か言われているが全く気にならない。そして私は今、この場所が衆目に晒される露店街ということも思い出したがそこまで痛くない。おそらく後日思い出して悶える程度だ。


 そんな私の姿を見かねたのか、お嬢様を訪ねてきたらしい知らない人にこんなアドバイスを貰った。


「装備を作れないアイテムとかでも武器にできるスキルとかがあったと思いますよ。詳しくは知らないですけど」


 その情報に、お嬢様も何かを思い出したかのように賛同した。


「あぁ、そういえばあっ……たような気もしますわね」


 ……なるほどね。完全に理解したよ、これからの動き方を。

私はお嬢様と知らない人にお礼を言った後、唯一のフレンドに連絡を送りながらダッシュで駆け出した。


 駆け出す直前、お嬢様が何かしら言いたげだったけど……まあ後で良いでしょ。お嬢様だし。



――――



「【変性術】よ」


ユユキちゃんがそう言う。

変性術……聞き慣れないな。なにそれ?


「物質を思いのままに変化させて戦う技ね」


「かっこよ」


 私は心からの感想を口に出した。

そんなスキルがあったとは……全然気づかなかった。知ってたら絶対そっちやってたのに。


「じゃあ私今から【変性術】ガチ勢になるね」


 私はツルハシを捨てた。炭鉱労働も楽しいけど、やっぱりMMORPGなんだから戦闘も楽しみたいよね。

しかし、その姿を見たユユキちゃんが少し申し訳無さそうに告げてくる。


「ただ、かなり大きな問題があって……」


「というと?」


 私は【変性術】をセットしながらユユキちゃんに尋ねた。

ユユキちゃんは答える。


「おそらく、収入と支出が釣り合わない」


「ふむ?」


 私はユユキちゃんの次の言葉を待った。どういうことだろ。


「具体的に言うわね。他スキルと比べると威力は1.2倍から1.8倍。ただし、使う度に比較的貴重なアイテムを消費する。それに、当てやすい技は大抵一度に2,3個消えるわ」


 なるほど、アイテムを消費するタイプのスキルなのか。

危なかった、後ちょっとで『光石』を使って【変性術】を使うところだった。

でも。私は疑問を呈する。


「別にさ、それくらいなら気にならないんじゃないの?威力だって上がってるし」


 アイテムを消費するスキルは他にもある。【弓術】なら矢を消費するし、その割には他と比べて威力が上がっていることもない。

しかし、ユユキちゃんは首を横に振った。


「消費するアイテムの価値が問題よ。【変性術】で消費するのは、主に石炭を除いた鉱石類。一番売買価格が安いアイテムですら『鉄鉱石』なの」


 いや、別に『鉄鉱石』って全然安いじゃん。そう言いかけて私は口をつぐんだ。

一番安いアイテムは、『鉄鉱石』。売買価格は大体800ゴールドだ。そして、このゲームにおいてポーションは500ゴールドで売り買いできる。


 ここで、【変性術】を使った戦闘について考えてみよう。

《大草原プライリエ》の始まりの街周辺にいるモンスターは、他のスキルを使うなら大体4回くらいの攻撃で倒せる。ユユキちゃんの言った威力の倍率が正しいとしたら、大体3回の攻撃で倒せる計算になる。


 つまりだ。消費するアイテムを『鉄鉱石』にして、1個しか消費しないスキルで攻撃したとしても。ポーションが約4瓶買える計算になる。

ちなみに、このゲームはモンスターを7体倒してポーションが1瓶要るか要らないか程度の難易度だ。


「産廃じゃん」


 ユユキちゃんは私の呟きに頷く。


「ええ。今の所はね」


 やーめた。やっぱ【変性術】とかゴミだわ。私はツルハシを拾い直した。

やっぱね、時代は炭鉱労働っすよ。というか【変性術】とかなんで存在してんの?


「……まあ、私の見解だけれど。おそらく、【変性術】はフィニッシャーやサブウェポンとして使用されるのが想定されているんでしょうね。かなり意表のつけるスキルではあるから」


 なるほどなぁ。流石ガチ勢の考えることは違う。

つまり当初の目的だった『光石』で光る武器を作ってキャッキャすることはできないってことだな。つら。


「ありがと、ユユキちゃん」


「ええ」


 ユユキちゃんは去っていく。

うーん、しかしユユキちゃんは流石だなぁ。なんでも知ってる。

という訳で私も炭鉱に帰ろうとした所、メール欄にお嬢様から一通メールが来ていることに気づいた。


 えっとなになに?件名が……『次のイベントで一緒に戦いませんこと』か。なんか面倒事の香りがするぞ。


 そう思っていると、今度はユユキちゃんが私の方を振り向いてこう言った。


「あ、それと。今度のイベントなんだけど、一緒に組まない?」


 え、ええ~!?

こ、これ……もしかして、私のために争わないでって奴!?

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