複数ある分岐ルートのうちの共通ルート始め
「それじゃぁ、そろそろ選んでもらいましょうか。」
静寂の中、完全な修羅場に俺一人と年下女子二人、同年代女子二人、年上女子一人。
「でも、どうやって選んでもらうんですか?何か考えているんでしょう、花南先輩。」
「そうだよ、はななちゃん、自分以外選んでいるのを目の当りにしたら泣き崩れるでしょう?」
「その呼び方やめてって言ってるじゃないですか!」
「良いじゃないですかはなな先輩、独特な呼び方の方が印象が付きやすいですよ。」
「まぁほら、考えがあるなら話そうよ、花南ちゃん。」
「あぁもう、助けて秋二|。」
「あぁ、ずるいですはななせんぱーい」
そんなことを言ったりしながら、みんなしてくっついてきた。
俺はどうしてここに来たんだっけ?
そうだよ、ボランティアで公民館の大掃除をしに来たら疑惑の配分でこうなったんだよ。
「とりあえず、さっさと大掃除始めませんか?」
そう、こうなったのは、一か月前の、11月の末の事。
他人に興味を持たずに生きようと決めていた俺の心を揺るがしたのは、ただ何でもない日に、俺の鍵付きロッカーの中に、「図書準備室に来てほしい」という内容の手紙が五つ入っていたことだ。誰がどうやって南京錠壊さずに暗号解いたの?怖いよ?暗号すごく単純だけど。
ともかく、俺は手紙に書いてあった図書準備室に行くことにしたのだが、普段は、鍵がかかっていて司書さんに頼まないと開かないはずなのだ、そしてそのカギは図書室内部にあり、図書室のカギを開ける必要がある。つまり、この五人の中にピッキング能力のある人がいる・・・
「なんであかないのよ?」「え、先輩開かないのも知らないであの手紙書かせたんですか?」「あほね」「あほだね」「あほですね」「みんなして何よ!みんな賛同したじゃない!」「てっきり何か考えてるものかと」「鍵がかかってるのに何があるのよ!?」「ピッキングとか、ドアぶっ壊したりとか」「そんなことしないし、できないわよ!」
前言撤回、五人の中にあほが一人いる。
「あ、来ちゃったのか~」
ばれた。
「あら、意外と早かったわね。」「ここでグダグダしてたからじゃないの?」「先輩が考えなしに人気のないところなんて言うから。」「秋二先輩だ~」
一人だけ勢いよく飛びついてきたが、正直もう慣れた。
「一応聞いておきますけど、皆さん此処で何をしてるんですか?」
「図書準備室を開けようとしてるの。何か手はないかしら。」
「司書さんに頼めばいいじゃないですか。」
「え、頼めば開けてるくれるの?」
「そりゃ、開けてくれますよ。」
そう言って、俺は図書室に入り
「すいません、準備室開けていただけませんか」
「はい、ちょっと待っててね」
五人の元に戻る。
「なんで、準備室なの?」
「それはまだ言えないわ」
答えはさっき透が言っていたが、触れる必要もないだろう。
司書さんが開けてくれたので、入っていく。開ける理由を聞かれたが、「こっちで探したいものがある」とデマを言い流す。
そして、六人だけになり。
「好きよ、秋二君。」
「抜け駆けなんてずるいです石硝先輩!」
「秋二、この中じゃ選択肢にも入らないかもしれないけど、好きだよ。」
「な、朱音まで!なんでそんなにすらすらいえるのよ!」
「好きです!秋二先輩!」
「私も、すき、です。」
「な!二人まで、なんでそんなに・・・」
「ほら、次は花南ちゃんの番でしょ、頑張りなさい。」「がんばれ。」「頑張らなくてもいいですよ」「がんばらなくていい」
賛否両論とはこのことか。
「す、すきよ」
正直に言おう、この中で一番顔を赤くしてるのは俺だ。失礼な話、全員友人としてかかわってきたのだから。
「どうしたの秋二君?」「どうしました先輩?」「どうした秋二」「どう、しましたか?」
後になって聞いた話だ、この時俺は気絶していたらしい。
次に目を開けたとき、白い天井、少しぼろい木のような感じ、右に三人、左に二人。
「やっと起きた。」「やっと起きたわね。」「おはようございます。お兄様。」「おはようお兄ちゃん。」「おはよう秋二。」
「俺はいつの間に妹が二人もできたんだっけかな。まぁ、そんなことはさておき、どうしてこうなってるんだ?」
皆恥ずかしがって言わない、その中で蛍だけが元気に答えてしまった。
「先輩はみんなに好きって言われて気絶しちゃったからですよ」
みな、唐突にカーテンを開け周りをきょろきょろと見渡す。よかった、誰もいないようだ。
「しっかし、なんで告白されただけで気絶なんてするのよ。気絶するほどうれしいならまだわからなくもないけど。」
「いや、小学生の時に振られてからだんだん他人に興味を持たなくなっていったから、告白なんて別世界の事のようだから・・・」
「ふうん、そうなんだ、まぁ、関係ないけど。で、誰を選ぶの?」
「え、誰も選ばないよ?」
皆、目に見えてびっくりしている。
「それに、俺、恋愛なんてわかんないからさ。俺なんかよりいいやついっぱいいると思うぞ。」
まだみんな固まってる。
「俺、そんなに変なこと言ったか?」
「結構変なこと言ってるよ?」「そうねぇ、年頃の男子が女子に興味を示さないとは・・・」「先輩、今まで私たちのこと、どんなふうに見てきたんですか?」
半ば呆れたようにいろいろ言われた。
「普通に友達だと思ってたけど?」
「女性の体とかに興味はないのですか⁈」
「男としてないとは言わない、まぁ、普通の人からしたら興味は薄いだろうけどな。」
「せんぱい・・・」
「なんだ?」
そう言うと透は俺の体に体重をかけ始め、
「私が、先輩の事、落としても、いい?」
そう言って、抱き着いてきた。
意外と大胆な物言いにみんなが驚いていたが、本人はあまり気にしていないようで。
「明日、休みだから、デート、したいな。」
くっそかわいい。みんなもそう思ったのだろう、透の事を見ていた。俺の返事はというと
「わかった、行こうか。でも、どっか行きたいとことかあるの?」
「うん、ある、デートプランなら、もう出来てる。」
結構ノリノリだな、こんな透を見れるのは中々ない。
「でも、蛍は一緒じゃなくても大丈夫なのか?」
デートというのだから多分、二人きりなのだろう。いつも、蛍と一緒にいる透は一人で待てるだろうか。
「大丈夫、中三の時から、蛍離れ、頑張った。」
「私が知らない間にいつの間に?!」
「ほたる、いつも友達に囲まれてる、私の出る幕がない。だから、せざるを得なかった。」
「気づけなくてごめんね。これからはいっぱい遊ぼう。」
「だいじょうぶ、おかげで、先輩がいい人だって、わかった。」
「うぅ!自分のせいで自分のライバル増やしたのか・・・」
相変わらずかわいらしい二人のやり取りを見ながら、朱音が声をかけてきた。
「どうせなら、私も秋二を落とすチャレンジしてみようかな」
「え?」
「ってわけだから、日曜日は私の番ね。」
唐突の事で、驚いているのだが。
「ちなみに、どこか行きたいところでも?」
「私はそういうの特にないから、秋二の家で、ゲームでもしよ?」
「了解」
正直こっちの方が気が楽だ。この時の自分はそう思ってた。
読んでいただいてありがとうございます。よろしければ気楽にコメントを残していただけると幸いです。
まだまだへたくそな文章ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。