1年生12月:生誕祭(1)
『ダリア生誕祭』
聖女ダリアの死後、彼女の誕生日である12月24日にミサを始めたのがきっかけで、今では街中を華やかに飾り付けて各地でパーティーが開かれ、家族や恋人とすごす日になっている。
‥要は『クリスマス』イベント。
もちろん聖女ダリアのお膝元である『ダリア魔法学園』も、12月になったとたんに魔法のイルミネーションが飾られて、今年最後の恋愛イベントに学園全体が浮き足立っている。
12月の授業は23日まで。
24日は生徒会主催のパーティーが開かれる。
「アリスは学園のパーティー出るよね?」
「ええ、そのつもり。イマリは?」
「帰って彼と過ごしたいけど、受験生だしどうしようかな‥。」
イマリの好きな彼はアイリス魔法学園中等部の3年生。
来年、ダリアに合格したらイマリとお付き合いが始まる予定だ。
「それなら帰ったほうが彼も安心するんじゃない?」
「えー、リリカとスーザンも出るんでしょお?」
昼休み、最近はイマリだけじゃなくてリリカとスーザンも一緒にご飯を食べるようになった。
今日はみんなで寮にお弁当を頼んで、中庭でベンチを向かい合わせて食べている。
リリカはきれいな手つきでパンをちぎると、
「わたしはアーチャー商会のパーティーがあるので、そちらに出ますわ。」
「わたしはパーティー苦手なので‥。」
スーザンはオレンジジュースをすすりながら小さな声で答える。
「そうなの? それじゃアリス一人になるじゃない。わたしも出ようかな‥。」
「ありがとう、でもイマリは彼を大事にしてあげて。大事な時期でしょう?」
「うん‥。」
「学園のイベントなんだから一人でも大丈夫でしょう?」
「もう、リリカなら大丈夫だけどアリスはなんか危なっかしいの!」
イマリが心配してくれるのは嬉しいけど、このパーティーは当然イベントなのでわたしは参加一択。
「あのね、『ダリアの歌』のダンスは本命としか踊っちゃダメだよ。他の人から申し込まれてもちゃんと断ってね。」
ダリア生誕祭、暗黙のルール。
『ダリアの歌』で一緒に踊る =『交際OK』
世間の雰囲気も恋愛一色に染まる、1年生最大の恋愛イベント。
ゲーム進行中だからカップルにはならないけど、誰にダンスを申し込まれるか、どの曲で踊るのか、好感度が左右する大事なフラグ。
「ええ、ちゃんと好きな人と踊るわ。」
「えー、アリス好きな人いたの~?!」
うっかりの一言で、残りの昼休みはずっとイマリに追及されてしまった。
‥好きな人はいない。
わたしはヒロイン、アリス・エアル・マーカー。
クラスメイトのベリアル、先輩のエリオス、後輩のディック、護衛のファン。
ヒロインを選ぶヒーローは誰?