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1年生10月:決着

わたしが結界でみんなを守りながらアネモネ班の側まで移動。

エリオスがサラマンダーを攻撃、ベリアルは治癒中のわたしの護衛。

ハンス先生は魔人の監視。

それぞれの役割を決めて行動を開始する。


「『聖域サンクチュアリ』」


狭い幅だけれどアネモネ班の位置までまっすぐ、途中にサラマンダーがかぶらないよう結界で道を作る。

「わたしの後ろを走って!」

サラマンダーの炎を無視して走り抜け、アネモネ班5人と合流した時点で残り4分。

治癒のため結界魔法を解除すると。


「空気悪っ‥。」


貧血のような頭がくらっとする感覚を我慢して、倒れている2人の呼吸を確認する。

「助かりますか?」

アネモネの学園長は高齢の女性だった。

かろうじて立っていた2人もベリアルとわたしの防御に立つ。


「『聖銀弾シルバー・ショット』!」


エリオスが放った弾丸は、サラマンダーの炎を裂いてその口内に命中すると、貫通ではなく爆発を引き起こした。

「これなら‥。」

続けて5発を連射して、サラマンダーは残り4体。


倒れているうちの1人は、顔色はきれいなのに息をしていなかった。

心臓の音も聞こえない。

とりあえずまだ生きている人に『蘇生リザシエイション』をかけて学園長に託す。

『節約の腕輪』をしていても『復活リザレクション』に必要なMPは4,000。


(助けられない‥。)

あと1,000、MPが足りない。

「MPポーションはないですか?」

大会はマジックアイテム禁止だったので、わたしのいつもの手持ちもない。

「使いきってしまって‥。」

学園長が申し訳ないと頭を下げる。


さらに4発の銃声が響き、サラマンダーが残らず塵と消えた。

「ああ、あっちも片付いたね~。」

ハンス先生の呑気な声が今は耳に障る。


「これでようやく魔人退治だ。」

戻ってきたエリオスがダリア学園長たちに囲まれた魔人に拳銃を向けた。

「残り2分か‥。」


残り2分。

活動限界がくるとどうなるの?

わたしはこの人を助けられないの?


「嫌‥。」

「アリス!?」


「ダメよ、死んだらダメ‥。」


もっと生きたかった。

お母さんを悲しませたくなかったのに。


「こんなふうに死ぬなんて、絶対ダメ!」

「アリス!」

泣きそうなわたしの手をベリアルが掴んだ。

「魔力が足りない? どれだけ?」

「1,000くらい‥。」

「わかった。」


ベリアルは手近な石で自分の手の平を傷つけた。

「ごめん。」

「‥!」

同じようにわたしの左手の平も傷つけて、じわりと血がにじんだ。

お互いの傷が重なるように手の平を重ねると。


「『共有シェア』」


触れあう手の平が燃えるように熱くなる。

思わず放しかけた手をベリアル力強く掴む。


「このまま魔法を使って。」


わたしは彼の止まった心臓の位置に右手をあてて。


「『復活リザレクション』!」


重ねた左手から、一気に魔力が流し込まれた。

いつものように黄金の光が遺体を包みこみ、胸に吸い込まれて消える。

わたしは同時に激しい頭痛に襲われ、ベリアルにもたれかかった。

残存魔力はほぼ空だ。


「『復活リザレクション』が実在するなんて‥。」

ふらふらとアネモネ学園長は彼の側に膝をつき、腕の脈を確かめる。

「ありがとう、ありがとう‥。」


「ア、リ、ス、マーカァー!!!」


競技ステージからしわがれた声がアリーナに響いた。

「まだ自我がある!?」

ダリア学園長の驚いた声が続く。

「気を緩めるな!」

ドンっと学園長の1人が『魔人』キャサリン・アーチャーの銀色の髪に吹き飛ばされ、地面に転がる。


白銀弾プラチナ・ショット!」


エリオスが撃った弾丸2発は、正確にキャサリンの両腕のバングルに命中して破壊したけれど。


キャサリンはバングルから先の両手を残して、あとは全て赤黒い肌に変わってしまっていた。

白い指先には、サファイアブルーのネイルが美しく煌めいているのに。


「タイムオーバーか‥。」

エリオスが膝をつき、手から拳銃がこぼれ落ちた。

わたしは急に夜になったような薄暗さを感じて、ステータスを確認すると状態異常『魔力封鎖(24時間)』が出ていた。


「ベリアル、今の状況を教えて。」

「魔人の姿がミス・アーチャーに戻ったけどなんかおかしい。」

「あー、完全同化してるねー。」

ハンス先生がエリオスを庇うように前に立つ。

「まあ『憤怒アンガー』本体よりましか~。学園長たちが大技使うから、壁際まで下がって。」


「アリス・エアル・マーカーァ!!!!!」


ドンっとお腹に強い衝撃を受け、わたしは強い力で空に放り投げられた。

違う、キャサリンの髪に捕まった!?

次の瞬間には競技ステージに背中から叩きつけられていた。

痛みに呼吸が止まる。


「か、はっ‥。」

なんの受け身もとれず、背中に激痛がはしった。

仰向けに転がるわたしにキャサリンが覆い被さって、首にその手を伸ばした。

「コロス‥」

「撃つな、近すぎる!」

首にキャサリンの爪が食い込んできた。

まずい、このままだと殺される!


あちこちの痛みで頭がぼうっとする。

キャサリンの手を外そうと必死に指を食い込ませるけれど、魔人化した彼女の方が強い。

嫌だ、また死にたくない!

まだなにもこの世界でできていないのに!


「は、な、せ‥。」

キャサリンに向かって手を伸ばしたその人差し指に、海皇さまからもらった指輪が煌めいた。


(ークララ!)


指輪にキスをすると、蒼い光が炸裂してわたしにかかっていた圧が消えた。


「アリス、いじめるのダメ!」

「ぎゃああああ!」


現れた小柄な少女は、鎌のような形をした両腕でキャサリンの髪と手首を切り落とした!

クララは痛みに下がるキャサリンの顔をさらに切りつけ、赤黒い血が舞った。

顔を庇うようにキャサリンが両腕を上げる。


「ファン、砕け!」

ダリア学園長が叫ぶ。


倒れているわたしの上を影が通り抜け。

キャサリンの制服のリボンの要に、銀色の柄がめり込んでいた。


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