表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/339

1年生10月:反撃

聖女レッド紅印・キス

騎士のHP、MP、ステータス異常を完全回復し、さらに10分間、物理攻撃力と魔法攻撃力が倍増する。

聖女の口づけで発動するが、1度使用すると24時間は発動不可能。


「火事場の馬鹿力‥いや、別れのキスってこれ死亡フラグだろう‥。」


エリオスはアリスから身体を離し、クリアになった思考をフル回転させる。

さっきの天の声は自分とアリスにしか聞こえなかったようだ。

ステータス画面でようやく効能が確認できた『聖女レッド紅印・キス』。


「酸欠か。」


アリーナの1階部分は透明なドーム状の結界で覆われている。

その中で大量のサラマンダーが炎を吐き、今も半面が赤く燃えて焦げ臭い煙が充満しているのだから、酸素がなくなるのは時間の問題だった。

エリオスの意識が朦朧としたのは、魔力欠乏だけでなく一酸化炭素中毒を引き起こしかけたからかもしれない。


「アリス、残りの魔力はどれくらいですか?」

「ええと‥。」

アリスもステータス画面を確認する。

「3,500くらいです。あの、ステータスにタイマーがあるんですけど、あと9分くらいってなんのことですか?」

「アリスにも出てる?」

「はい、『活動限界』って。」


おい。


なんだか聞いたことのあるフレーズだけど深く突っ込んでいる暇はない。

せっかくのボーナスチャンス、どうする?


「いやー、さすがにマズい感じだねー。」

相変わらずヘラっとした口調のハンスに、ベリアルがムッとして言い返す。

「ハンス先生、なんで楽しそうなんです?」

「だってガチの実戦とか初めてだし~。ローズとアネモネの学園長が指揮ってるからちょっと休憩させて。」


口調とは裏腹にハンスの顔色は悪い。

「戦況が悪いのか?」

どこからかファンが現れてハンスに尋ねる。

「あー、サラマンダーが残り20で教師が10人だけど、魔力が足りない。救護班が1階にあったらなー。」

対抗戦用に準備された回復薬は『α結界』の外、2階にある。


「魔人の影響でサラマンダーが強化されてる。早く魔人倒してくれないとヤバい。」

「学園長3人かかりで押さえ込んでいるが‥。」

「右側のローズ班はあとちょっとでクリアできそう。左のアネモネ班は‥あ、また倒れた。」


エリオスからは一面炎で、学園長たちやその周りの戦況がわからない。

「あのあたりで誰か倒れてるんですか?」

「あ~、アネモネの先生が2人。学園長が庇いながら戦ってるけど、あの先生も炎系だし効率悪い。」

各学園の教師、代表選手みんなそれなりの魔法攻撃力があるけれど、サラマンダーに効くのは水系、氷系のみ。


「回復できるのもマーカーくんだけだし、みんな実戦経験無いから連携悪くて。」

魔王が封じられてから15年間、魔物も魔人も、どちらも街に現れなかった。

聖戦に駆り出された当時20代の魔術師たちはほぼ全滅したので、中年の経験豊富な魔術師がいない。


あと7分。


最優先は競技ステージ左側、アネモネ魔法学園メンバーの救出と回復だろう。

エリオスはいつも左脇に納めているオリジナル魔装具の拳銃を右手に構えた。

攻撃力倍の状態ならサラマンダーの核を撃ち抜けるかもしれない。


「アリス、ランスくん、協力してほしい。アネモネの援護に向かう。」

「はい。」

「はい。」

「ダメ。」

2人の返事にすぐハンスがかぶせた。

「生徒は避難指示が出てるよね。」


戦闘開始後に生徒はすぐに1ヶ所に集められたのだが、その過程でもそこそこの被害が出ていた。

何人かの教師とエリオスたちが防御を固めていたのだけど。


「このままじゃ全滅だし、俺も出る。」

「ブレイカーくんは中等部だし、もっとダメ。」

「その先輩回復してるし、勝算あるんだろ?」


たしかにハンスの魔力感知でも、エリオスの魔力は十分に残りのサラマンダーに対抗できそうだった。

ベリアルはほとんど消耗していない。

ディックも水系魔法があと数回は使えそうな魔力残量。

アネモネ班はまだ生きているが、かなり押し込まれている。


(生徒が死ぬと僕の責任がなぁ‥。)


「ハンス先生。」

アリスは難しい顔をするハンスの手をとって『治癒キュア』をかけた。

「まだ間に合います。わたしは助けに行きます。」


『聖女』とは、なんだろうか。


「ありがと、気分が楽になったよ。」

ハンスはいつもの笑顔を作る。

「‥ブレイカーくんはローズ班と合流して右側を平定する。ウォールくんたちには僕もつくから、ここの防御はファンくんが指揮して。」


「ダリアよ、ずいぶん弱くなったな。」

魔人の炎撃は学園長の結界に散らされるが、周りのサラマンダーがそれを吸収して体が大きくなってしまう。


「わずか15年の平和で呆けたか。」

「お前こそこんな老いぼれ相手に、情けないなあ!」


ダリア学園長は封じの魔法を魔人の上から叩きつける。

15年前の聖戦ではかなりの魔術師がこの魔人に殺された。

さらに二人の学園長も封じの魔法を重ねてかけると、魔人の両足がステージに沈んだ。


「ふん、小娘の身体だとこの程度か。」


まあいい、目的は達した。


「好きに暴れるがいい。その狂気を我が主に捧げよ!」


紅印の効果、あと5分。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ