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1年生10月:魔人『憤怒』

憤怒ダブル双輪アンガー

怒りの感情を魔力に変換するバングル型の魔装具、という売り込みだった。

対抗戦の受付で『オリジナル』と表示されたペアのバングルを両腕に着けていると、自分だけでなく周りの怒りの感情も吸い込んで、キャサリンの中に魔力が無限に溢れ出してきた。

今まで全魔力を注いでも足りなくて発動できなかった氷系魔法レベル5『絶対零度ゼロ・ゼロ』。

あっさりとキングゴブリンを氷漬けにする。


ああ、なんて美しい魔法!


自慢の銀の髪を指で巻きながら、キングゴブリンの氷像をキャサリンはうっとりと眺めた。

そしてこの氷像を、ベリアルの炎が砕くところを想像する。


ベリアル・イド・ランス。

彼こそがわたしの隣にふさわしい。


わたしの冷たい氷を溶かすことができるのは、彼の熱い炎しかないのだから。

いきなり現れたあんな女が、わたしの邪魔をするなんて間違っている。


わたしより身分が高いなんて。

わたしより魔力が多いなんて。

わたしよりベリアルが気にしているなんて。


許さない。

許さない。

許さない。


そんな心の隙に、魔が入り込む。


呪いの腕輪は囁く。

さあ、わたしをべ。

禁忌の名前、『憤怒アンガー』を。


「ああ、心地好い憎悪だ。」

アリスの目の前で、魔人は高らかに両腕を天に掲げた。

「我にさらなる怒りを捧げよ!」


ボン! ボン! ボン!


いくつもの破裂音が響いた。

「各学園ごとに固まれ!」

ステージを囲むように配席されていたため、学園同士の連携が取りにくい。


「なんの爆発だ!」

「召喚用の擬似核ダミーコアが‥魔物です! あれは、火蜥蜴サラマンダー?! 」

予備の黒水晶から孵化したように、わらわらと火蜥蜴の群れが出来上がってゆく。


ダリア魔法学園は学園長とハンス、ファン、そしてエリオスたち代表選手5人がお互いに背を合わせて周囲を警戒する。

「クラレール、状況報告!」

学園長の指示にハンスが魔力感知を発動させる。

「サラマンダーが約100体、こちらの戦力は教師22名中1名が重症、生徒29名、民間人3名。」

「観客席の避難は。」

「3分の1程度ですが『α結界』は有効です。」

「対魔人でもか。」

「本体とは思えません。一部召喚かと。」


観客席を守るため、アリーナにはいくつもの結界が設置されている。

そのうち『α結界』が有効なら、とりあえず観客の避難は無事に進むだろう。

召喚の依代である黒水晶が含む魔力はそこまで多くない。

対抗戦代表選手の生徒たちなら、サラマンダーの処理はなんとかできる。


「ファンは生徒を指揮してサラマンダーの対応を。クラレールはこのま魔力感知を続けろ。魔人の相手は僕がする。」

学園長はトレードマークの真っ白のジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイも引き抜いてシャツの袖をまくった。


「学園長、ミス・アーチャーは‥?」


ベリアルは魔人に向かう学園長の背に問いかけずにはいられなかった。

アリーナ1階にいた生徒は、各学園の代表選手6名ずつ30名。

ハンスの報告では1人足りない。


「‥火系の魔法はサラマンダーに効かない。ランスくんは回避に徹するように。」


学園長は振り返らず、それだけを伝えた。


「地獄の炎よ、全てを焼き尽くすがよい!」


魔人の雄叫びに、100体のサラマンダーが一斉に炎を吐き、生徒たちに襲いかかった。


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