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1年生9月:筆記テスト

四日間の前期テストは、前半二日間に筆記、後半二日間に実技が行われる。

前後期の成績で、2年生のクラスが決まる。

とくにB組の生徒はA組昇格を狙って必死に挑むらしい。

逆にA組からクラス落ちになった生徒は、だいたいが自主退学してしまうとか。

だからA組の雰囲気もピリピリしている。


三連休は寮にこもってテスト勉強をしていた。

勉強に集中していると、余計なことを考えずにすんで楽だったし、計画どおり勉強が進むと攻略みたいで面白かった。


今日の教室には四隅に結界柱が設置されて、魔法が封じられている。

自動で答えを書くペンや、人の思考を聞き取るピアスや、お互いに話ができるバッジといったカンニング用魔道具があるらしい。

そういうものもシャットアウトしてしまうそうで、それでもカンニングを行う猛者が学年に何人かいるとのこと。


今日も明日も2科目ずつ、お昼まで。

範囲どおりの出題だったから、それなりに書けたはず。

イマリと食堂でお昼ご飯を食べたあと、一緒に明日の勉強をしようと図書館へ行く。

受付はまたベリアルだった。

テスト期間なのに大変ねと声をかけると、勉強しながらできるから平気と返ってきた。

自習室の個別ブースはいっぱいだったので、大きなテーブル席に向かい合わせに座る。


「明日のレポート系、面倒よね。」

テキストに線を引きながらイマリが小さな声で話す。

自習室では小声トークOKになっているので、友達と話ながら勉強している人たちも多い。

「回答用紙の7割くらい埋めたらいいのよね?」

高校のテストではあまりそういうのはなかったのでちょっと不安だ。

「そうそう、7割切ると点数低くなっちゃうから。」

埋めるためには定説をいくつか書かないといけない。

テストテーマは授業で発表されてるから、定説とからめて自分の意見をまとめておこう。


「この先生はこちらの定説が好きですよ。」


頭の上からの柔らかな声に、身体が緊張で固まる。

ざわり、と自習室が音をたてたような気がした。


「貴女らしい、まっすぐで美しい文字ですね。」


空いていたわたしの左隣の席にエリオスが座った。

「しばらくお会いできず申し訳ありませんでした。」

「いえ、そんな‥。」

謝られる覚えはないんですけど!


「ああ、そうだ。」

エリオスと一緒に来ていた副会長を手招きする。

「彼が貴女にご迷惑をかけてしまってしまい、すみませんでした。」

「‥なんのことでしょう?」

「夏の、二人の秘密のことですよ。」


聞き耳をたてていた人たちからまたざわりと音がする。


「イマリ、ちょっと外で話してくるね。」

「どうぞー。」

後で聞かせてね、とイマリの唇が動いた。


図書館の出入口は1ヶ所しかないので、また受付を通って外に出て、建物の陰、人の目があまりない場所で話をする。


「すみませんでした。」


会長についてきた副会長が、深々と頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「私が迂闊なことを言ったばかりに、マーカーさんの名誉を傷付けてしまいました。」

「なんのお話しですか?」

「妹が1年生にいるんですが‥。」

年子なのかと思ったら、副会長の制服のタイは緑色。

執事のようにエリオスに付き添っているけど、3年生だった。


副会長の話を要約すると、

研修所での騒動は先生から箝口令が出されたものの、帰宅したときに妹に話してしまった。

エリオスの大ファンだった彼女はすぐファンクラブのメンバーに報告したので、大騒ぎになってしまったとのこと。


「会長のファンから嫌がらせをされたと聞きました。本当に申し訳ありませんでした。」

「わざわざ謝っていただくことではありません。」

「‥よければ彼の謝罪を受け入れてもらえませんか?」

頭を下げ続ける彼から目をそらしたわたしの背に、そっとエリオスが手を添える。

「わたしはなにも困っていませんわ。」

「それならなおさら、彼を楽にしてあげてもらえませんか?」


「‥謝罪を受け入れます。」


副会長はようやく顔を上げてくれた。


「このためにいらしたのですか?」

「いいえ‥彼が気にしていたのはそうなのですが、一番は貴女に会いたかったからですよ。」


そのまま背中から、ぎゅうっとエリオスがわたしを抱きしめた。


「「ーーー!」」


不意打ちにわたしの顔が真っ赤になり、それを正面から見てしまった副会長も口をぽかんと開けて固まってしまった。


「こういうわけですから、自分たちのことを邪魔しないよう、妹さんにちゃんと言い含めておいてください。」


「は、はいっ!」

副会長がピシッと礼をする。

「とくにこれ以上アリスに迷惑をかけないように、『くれぐれも』言い聞かせてくださいね。」

そこでエリオスが、腰のホルダーから銃を抜いて副会長に向けた。


「会長?!」

「エリオス先輩?!」


副会長が一歩後ずさる。

わたしを左腕で抱き留めたまま、パシュッと銃口から弾が撃たれた。キィンと何かが襟元から弾き飛ばされる音がする。


「そのピンバッジを贈られた方にも、『最後の』お願いを伝えてくださいね。」

「‥申し訳ありません。」

副会長の顔色が明らかに蒼白になった。


「これでもう大丈夫です。」

「きゃあっ!」


耳元で囁くのはやめてください!


「ではテスト勉強、頑張ってくださいね。」

するりと腕をほどくと、エリオスは副会長を連れて校舎の方へ戻っていった。


‥うん、なにかいろいろ意味深だったけど、今日はテストに集中しよう。

できるだけ感情をフラットにして、わたしはイマリのところへ戻った。

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