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12月31日:友

『ダリア魔法学園高等部生徒各位


12月31日正午をもって高等部を当面閉鎖する。

再開時期についてはおって連絡する。

私物を回収したい生徒は、12月31日午前9時から11時の間に済ませること。』


昨日の夕方、生徒全員に風魔法で届けられたメッセージ。

スーザンは寮の自室に入ると、まず大きく窓を開けた。

少し開けたままにしたドアに向けて冷たい風が流れ込んでくる。


そして窓の外に見えるのは、これまで聖堂があった場所にそびえる漆黒の箱。

近接する講堂より大きなそれは、壁なのか建物なのかよくわからない。


(これからどうなってしまうんでしょう…。)


生誕祭の夜、イマリの死体を見つけた後の混乱について、スーザンはほとんど情報を得られないまま1週間が過ぎていた。

突如ラストダンスが中止され、生誕祭に来ていた生徒は強制的に寮に帰らされた。

翌日も昼までに全員学園から退去させられて、イマリにもアリスにも会えないまま。

身体に負担がかかってしまったのか実家に着いてすぐ高熱を出してしまい、両親にも婚約者にもとても心配をかけてしまった。


少し膨らんできたお腹に手を当てる。

出産まであと4か月、最近は胎動も感じるようになった。

この子が1番大切だけど。


トントン、とドアが小さくノックされた。

「スーザン、来てるの?」

どうぞと言う前にドアが開かれ、リリカが入ってくる。


「来れたのねー。体調大丈夫なの?」

「リリカさーん!!」


リリカにがしっと抱き着いて、スーザンはただ頭をその胸にすりつけた。

「リリカさんリリカさんリリカさんっ!!!!」

「わわ、ちょっと待って。イマリ!」

勢いに押されて後ずさりしたリリカの背中から顔を覗かせたのは。


「イマリさんっ!!!!」


少しきまり悪そうな表情のイマリを見て、スーザンの目から涙が溢れた。

「よかった、よかったですぅ…。」

リリカに抱き着いたまま泣くスーザンを、イマリは背中からそっと抱きしめる。


「ごめんなさい。」

「だからわたしは離してって、」

「わたしが馬鹿だったの。心配かけて本当にごめんなさい。」

「いいんですぅ、わたしもイマリさん止められなくてごめんなさいぃ…。」

「イマリが馬鹿なのは前からでしょ。わたしも止められなかったのにスーザンには無理よ。」


悪態をつきながら、リリカはイマリの背に手を回す。

2人がかりでスーザンを抱きしめると、よけいに泣き声が大きくなった。


「あらあら、ずいぶん賑やかねぇ。」

「アリスさまっ!!」


3人目の声に期待したスーザンは、ずかずかと入ってきた銀髪の少女に目を丸くする。

自信に満ちた気の強そうな顔立ちをした私服の少女に、見覚えがあるようなないような。


「…どなたですかぁ?」

「まあ、わたくしのこと忘れたとおっしゃるの?!」


スーザンとイマリは彼女の顔をじっと見つめるが、いまいち思い出せない。

知ってる?と顔を見合わせる2人に、リリカが助け舟を出す。


「元クラスメイトのキャサリン・アーチャーよ。」

「「えっ?!」」


「…あなた、王都追放されたんじゃなかった?」

イマリはあまりキャサリンにいい印象がない。

高飛車な金持ちのお嬢様で、アリスにやけに突っかかっていた。

スーザンはほとんど話したことがないので、どうして自分の部屋にキャサリンがいるのかわからないでいる。


「えーっとね。」

リリカは2人から手を放すと、まあまあとなだめる仕草をする。

「キャサリンは今、ランス先輩のお手伝いをしてくれてるの。」

「それで王都に戻ってきていますのよ!」


正確にはエリオスから個人的に依頼された魔装具調整の対価として強引に王都への一時滞在許可証をもぎ取ったのだが、エリオスの依頼も結構アレな内容だったのでこのくらい当然だとキャサリンは割り切っている。

キャサリンが造ったアリスの魔装具へ、小さなプレートを取り付ける依頼。

呪文が刻まれたプレートの効果は教えてもらえず、しかもアリスに極秘で、即日で。

アリスに害を為すことは決してないとエリオスが誓うのと彼があまりに必死だったから引き受けたのは、今月の初めのことだ。


「それで、何で学園にいるのよ。」

「アーチャー商会の仕事ですわ。納品に来たついで。」


…リリカがどう過ごしているか気になっていたから。

楽しいと本人は言っていたけれど、ダリア魔法学園に入学したのはキャサリンの我儘に巻き込んだからだった。


(心配いらなかったわね。)


「あまりここに長居しないほうがよろしくてよ。」

立方体キューブ対応にあたり、アーチャー商会は回復薬ポーションや装備でかなりの協力をしている。

そのためキャサリンは生徒たちの誰より状況に詳しい。

昼間に魔物が出たことはないが、絶対とは言い切れない。


「必要な物を取ったら早めに…」


「しぎゃああああ!!!!」


悲鳴のような、動物の叫び声が学園に響き渡った。

どぉんと何かが墜落した衝撃と人の騒めきが聞こえる。

「なに…?」

「警戒して! 防御魔法の準備を!」

キャサリンは3人に怒鳴ると、窓に駆け寄って外を見渡す。


立方体キューブの天井に学園長の白竜が墜落していた。


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