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1年生6月:魔装具(4)

ダンジョンから魔水晶を持って寮へ帰ってこれたのは夕方だった。

ダンジョンの管理事務所でお昼を食べているとエリオスとファンさんも冒険者もどきを捕まえて戻ってきて、襲われたときの聴取なんかで少し時間をとられてしまった。

これで週明けの授業で魔装具が作れると思ったのだけど、魔水晶も使うので特別な魔法陣が必要だから明日学園本部に来るように、と言われてしまい、日曜日なのに朝からまた制服を着て、学園本部棟の1階受付に来ている。


「アリス・エアル・マーカーさま、ご案内します。」

受付の美人なお姉さんについて、豪華な螺旋階段を2階に上がる。

「お連れしました。」

重厚な樫の扉をノックすると、中から男の人が開けてわたしを招き入れる。

「マーカーくん、おはようー。」

部屋の中には数人の男の人と、スーツを着たハンス先生。

「失礼します。」

一人がわたしの胸に赤い花のコサージュを飾る。

ハンス先生の胸にも同じコサージュ。


「お二人様、お連れしました。」

次に入ってきたのはベリアルと、中等部3年生のディック。

「アリス、おはよう。」

「ああ、あんた久しぶり。」

ベリアルがディックの頭をはたく。

「先輩相手になんだその言葉遣いは。」

「俺よりレベル低いし。」

「いいの、気にしてないから。」

だけどどうしてディックも?


「すみません、遅れてしまったようですね。」

さらにエリオスも現れた。

「これで6名のみなさまお揃いですので、学園長室へご案内します。」

6名というと、わたし、ハンス先生、ベリアル、ディック、エリオスと、誰?

あら、スーツの男の人達の中にファンさんがいる。

学園長室とはどういうことだろう?


「それでは、表彰状授与式を始めます。」

白いスーツに真っ赤な薔薇を胸に飾った学園長が朗々と表彰状を読み上げる。

「ハンス・クラレール殿、貴殿は魔物出現の際に冷静かつ的確な行動で危機を回避し、我が学園の安全に寄与されたことに感謝し、ここに表します。」

ハンス先生が学園長から賞状と金一封を受け取って礼をする。


「ま、堅苦しいのはこの辺にして、みんなよくやってくれたね!」

学園長がわたしたちに向かって両手を大きく広げた。

「15年ぶりの魔物侵入を完全撃退、これぞ僕の目指すダリアだよ!」

学園長はハンス先生の両手を強く握りしめた。

「クラレールくん、学生のときから優秀だったけど、さらに魔術に磨きがかかったね! 見事な切断面だった。これからも生徒たちをよろしく頼むよ!」

「ありがとうございます、学園長。みな向上心の高い優秀な生徒です。」

ハンス先生の口調が丁寧で先生らしくない。

「そうかそうか! 指導に必要なものがあったら何でも言ってくれよ。」


それからファンさんの肩を抱き、

「ファンくんも生徒を守ってくれてありがとう! ガーディアンチームのホープと聞いていたけどさすがだね。チームの方にはお酒を贈ったから。」

あ、はい、とファンさんが言葉短く返す。


「君たちもよく頑張ってくれた。本当は全校集会で称えたいところだけど、魔物出現のことを大っぴらにできないからこういう形になってしまってごめんね。」

「いえ、お心遣いに感謝いたします。」

わたしたちの最年長、エリオスが丁寧に頭を下げるけど、

「しかしみんなはともかく、自分は何も。」

「そんなことないよ、君がいなかったらマーカーくんが死んでしまっただろうからね。」

死‥?

「君たちの誰かがいなかったらきっと犠牲が出た。本当にありがとう。」

学園長が大袈裟な礼をして、表彰式は終わりとなった。


学園長室から出て、とりあえず1階ロビーに降りる。

「金一封~♪」

ハンス先生が浮かれている。

「先生、わたし魔装具を作ると聞いて来たのですが。」

「覚えてるよ大丈夫~、3階に準備してるから、ランスくんも行こうか。」


「それでは自分たちはこれで失礼します。」

エリオスがハンス先生に挨拶をしてからわたしの手をとると、

「貴女を助けることができたのなら、こんなに誇らしいことはありません。」

優雅に手の甲にキスをする。

「きゃあっ!」

「素敵な魔装具ができるといいですね。」

みんな見ているのに、相変わらず王子様はマイペース‥!

「俺も帰る。眠いし。」

「仕事なので、失礼。」

ディックとファンさんも散ってしまったので、わたしたちは3人で3階の部屋に向かった。


小さな部屋の真ん中に円形と三角形を組み合わせた魔法陣が描かれていた。

授業で使っていたのは円形の魔法陣だったはず。

「まずランスくんからねー。」

ベリアルの赤い魔石、魔水晶、授業のときよりだいぶ多い魔鋼が魔法陣に配置され、真ん中にベリアルが立つ。

「いい、得意な魔法を思い浮かべてねー。『起動』。」


魔法陣が赤い光を放ち、炎の柱のように見えた。

円柱の真ん中に向かって光が収束すると。

「これが俺の魔装具?」

手に20センチくらいの金属棒が現れていた。


「魔力通してみてー。」

「はい。」

ベリアルが魔力を込めると、棒の延長状に炎の刃が揺らめく。

「剣の柄、みたいな感じですね。」

「そうみたいだねー。使い方は自分で研究してねー。じゃあマーカーくんね。」

ハンス先生が素材を魔法陣に置き、わたしが魔法陣に入る。

「『起動』」

今度は月の光のような銀色の柱が、わたしの中に取り込まれて消える。

さあいでよ、クロスペンダント!


わたしの手の中には、小さな十字架をヘッドにしたプラチナのペンダントと、やはり十字架をモチーフにした指輪がひとつ。

「指輪?」

「マーカーくんも魔力を。」

促されて魔装具を装着し、魔力を込める。

ペンダントトップから楕円形の光が溢れて、結界のようにわたしを覆い、とりあえず右手の薬指にはめた指輪はー。

「カイザーナックル?」

華奢な指輪が、指4本を通して握りしめる打撃用武器に変化する。


ナックルを見てベリアルが爆笑した。

「アリスが魔物をタコ殴りにするってことだね!」

「いやいやいやいや、おかしいでしょ!」

どこの世界に敵をタコ殴りにする聖女がいる!

ナックルを握りしめる右手を開いたり閉じたり、使いやすそうではあるけど。


「ペンダントは結界を作れるみたいだねー。指輪のほうは謎だなー。そんな魔装具見たことないよ。」

すみませんたぶんただの打撃用武器です。

「明日からの授業でいるから、どんな魔装具なのを調べておいてねー。じゃあまた明日ねー。」

これで終わったーとハンス先生にそそくさと追い払われてしまい、わたしとベリアルは魔装具とともに寮へ戻ったのだった。


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