1年生6月:迷宮(2)
魔法の属性レベルは、その人が使える魔法の最上位レベルを表す。
1個でもそのレベルの魔法が使えればいい。
そして魔法レベルはその魔法の消費MPで区分される。
レベル1はMP49まで、レベル2は50以上、レベル3は100以上‥といった感じ。
レベル10魔法のMP消費量は5,000以上。
5,000以上は全部レベル10にまとめられるけど、そもそもそれだけのMPを保有する魔術師が皆無なのだとベリアルが説明してくれた。
「アリスのMPってどれだけ‥?」
「それはちょっと、言いたくないです‥。」
「そっか。頼もしいよ、今日は怪我の心配いらないな。」
ベリアルは気楽に笑ってくれた。
ダンジョンの受付でハンス先生が5人分の申請書を出す。
「はい、ウォール様ご一行、入坑を受理します。未成年者を含みますので夜7時までには退坑してください。」
「他のパーティーはいる?」
「今朝はあなた方が一番のりです。今日は雨なので入坑は少なそうですね。」
雨だと、ちょっと魔物が強くなるらしい。
「そっかー、じゃあダンジョン進み放題だねー。」
「ええ、それではよい冒険を!」
受付嬢が渡した腕輪を着けると、ダンジョン入口の結界を通り抜けられるそうだ。
さて、ここで目的の確認。
わたしとベリアルは魔装具を作るために純度の高い魔鋼が必要。
魔鋼はこのダンジョンで採掘できて、入坑料と採掘料が必要。
ただしダンジョン管理者のウォール公爵家の人は完全無料。
だからウォール家のエリオス先輩も一緒に来ている。
『ダリア魔法学園物語』はRPG要素もあるので、こういったレベル上げイベントが定期的に発生する。
アイテムはどこどこの洞窟で、その島に渡るには銀貨が必要で、その銀貨を稼ぐために魔物退治を村から依頼されて、といった感じだ。
「魔鋼が採れるのは地下3階からだからねー、無理に戦闘しないでまずは3階まで固まって進もうねー。」
ハンス先生から地図をもらう。
「地図があるんですね。」
「あ、マーカーくんはダンジョン初めてだったかー。まあランスくんについていってくれる? じゃあみんな入るよー。」
鉱山の入口に張られている結界を腕輪の力でずるりと通り抜けると、狭い坑道が続いていた。
先頭をハンス先生が歩き、エリオス、ベリアル、わたしと最後がファンさんだ。ハンス先生が魔法の灯りを掲げているけれど、あまり広範囲は照らせない。
ファンさんは庭師のつなぎではなく、スーツのような服装だった。
「庭師をやめられたんですか?」
わたしが聞くとファンさんは首を横に振り、
「アリーナで偽装がばれた。」
そういえば本部の調査員としてあちこち走り回っていた。
「緑化委員会ではありがとうございました。」
「仕事だし。前見て。」
わたしたちが歩いている坑道は途中で分かれたり曲がりくねったりして、最後は下に降りる階段へつながっている。
地図だともうすぐ地下1階への階段が見つかるはず。
「それじゃ地下1階に降りるよー。」
階段を降りる前に、エリオスが拳銃をホルダーから出して構える。
地下1階からは坑道の幅が広くなった。
靴音を響かせないように歩く。
先頭のハンス先生が立ち止まり、エリオスに合図を送る。
エリオスは曲がり角の先を伺うと、弾丸を3発撃ち込んだ。
プシュッ、プシュッ、プシュッ!
べちゃっと何かが潰れる音が続く。
「おー、スライム3匹瞬殺だねー。」
ハンス先生が小さく手を叩く。
「これくらいはいつものことです。」
「先生、俺もやりたいです!」
「ランスくんの心意気はいつもいいねー。」
ハンス先生はちょっと考えて、
「じゃあ地下2階でレベル上げしようかー。」
地下2階の広めの部屋で、エリオスとベリアルが魔物相手にコンビプレイを繰り広げていた。
スライム、ウォーウルフ、ゴブリンたちが遅いかかってもなんなく倒してしまう。
わたしはファンさんに守られながら壁際でうずうずしていた。
(わたしも闘いたいなあ!!)
スライムに正拳突きがきまったら気持ちいいだろうなぁ!
そんなことを考えていたら、スライムがベリアルの足元を抜けて、わたしのほうに向かってきた!
わたしより早くファンさんが動いた。
ファンさんの投げた小刀が正確にスライムの核を貫く。
「ありがとうございます。」
「もっと下がって。」
とファンさんに腕を引かれてよろけてしまい、壁に手をついたところになにかスイッチがあって。
パカッ!
「きゃあっ!」
わたしの足元が突如なくなり、暗い奈落にわたしは吸い込まれて落ちていった。




