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1年生6月:授業(3:歴史)

恥ずかしさに逃げ出しても、教室ではベリアルと隣の席なわけで。

午後は教室で魔法歴史の授業。

仙人みたいなおじいちゃん先生が担当だけど、喋りははきはきと普通だ。


王国に『魔王』が現れたのは、約150年前のこと。

冷夏による大飢饉の年だったそうだ。

それまで村まで入り込むことがなかった魔物たちが凶暴化し、人を襲って食べるようになった。

村が壊滅して家族を失った人が溢れる中、それでも怠慢で傲慢な貴族がいて、積み重なる絶望はやがて一人の『魔王』を生んだ。


北にあった彼の領地は、一晩で焦土と化した。


混乱が続き、いつしか『魔王』に従う『魔人』が生まれ、そして魔人たちが魔物を率いて町を襲う。

たった1年で王国の2割が消失した。


当時の国王は国中の魔術師を集めて防衛線を引き、魔王と対峙した。

攻撃力の高い者たちは前線で魔物と戦い、低い者たちは国内で魔術師の養成を始めた。


5年ほど戦うと10年くらい穏やかな時期が続く。

いくつもの魔法学園が設立され、その中で史上最強の魔術師『聖女ダリア』を輩出した学園が彼女を学園長に迎えて名前を『ダリア魔法学園』と変えたのがこの学園の始まりだ。

来年が創立100年になる。


魔法、魔装具、魔道具の開発が盛んに行われたが、魔王を倒すことはできなかった。

ようやく15年前、結界都市『聖都』を丸ごと潰し、魔術師と騎士100名からなる討伐隊の全滅と引き換えに、魔王が封印される。

以来、魔物たちは山の奥に逃げて人里に寄り付かない。

この15年前の聖都での戦いは『聖戦』と呼ばれる。


その鍵として散ったのが、魔術師団長だったジャスパー・イオス・マーカー子爵(享年25歳)。


「なぜ彼が封印に成功したのかわかっていない。」

『聖戦』に参加した者は、誰一人生きて帰れなかった。

都市丸ごと爆発してしまい、メンバーの遺体すら確認できていない。


「ダリア魔法学園は聖女ダリアの遺志を継ぎ、魔物から人々を守ることを第一義とする。平和な時代であっても、君たちには人を守る力を身に付けてほしい。」


教科書には父のパーティーの写真が掲載されていた。

魔術師、魔法剣士、騎士、治癒師だそうだ。

写真が小さくてそれぞれの顔まではよくわからない。

真ん中の人は剣を構えているからその隣の人かな。


「来週の授業までに『聖戦』のことを調べてレポートを出すように。」


(お父さん、なんだよね。)


父はわたしが生まれる前に死んでしまったと言われて育った。

わたしの誕生日は、魔王が封印される少し前。


父は、わたしが生まれたことを知っていたのかな。


生きていてくれたら、母もわたしも大事にしてくれただろうか。

それともやっぱり身分が違うから、祖父に追い出されていただろうか。

母はこれまで一度も父の話をしたことがない。


次に帰省したら、父のことを聞こう。

どんな魔法を使えたのか、どんな修行をしたのか、なんで魔術師団に入ったのか。


そして、どこで二人は出会ったのか。


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