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2年生5月:討伐実習(2)

討伐実習はステータスアップのためのミニゲームだった。

ゲームはいわゆる落ちゲーで、ハイスコアをポイント換算してステータスに振り分けることができた。

(落ちゲー、苦手だったなぁ‥。)

連鎖を組むのが苦手でスコアが伸びなかった。

あまりやりこまず、すぐストーリーに戻ってしまったのだけど。


今回はリアルに魔物討伐だし、レベルアップを期待したい。

レベル25からは実戦を経験しないとレベルアップが難しくなるとか。

最低でもレベル50を目指すなら、討伐実習で成績を出して実習回数を増やして、夏休みに『組合ギルド』で仕事ができるくらいの実力になっておきたい。


実習成績が悪いと学内講義に戻されてしまうから、初回の今日は特に気合い入ってます!


「そろそろ着くから、降りる準備しておいてねー。」

ハンス先生が操る馬車に乗って学園から1時間半。

4人で向かい合って『白濁湖ミルキー・レイク』攻略の最終確認をした。

前衛のベリアルとセドリックは剣主体の攻撃スタイル。

レナードが防御魔法を2人にかけて、わたしは結界と治癒を担当する。

レナードの土系魔法の攻撃は死霊系魔物にあまり効かないらしいので、その代わり防御力強化や盾の魔法を使う予定だ。


「じゃ行くか。」

ベリアルが初めに馬車を降りる。

「すごい霧‥。」

湖まで1キロほど手前の街道沿いまで白い霧が届いていた。

この霧は湖から発生していて魔物を呼ぶ効果があるため、付近の街道は魔物避けの結界が整備されている。


「今日は初めてだから僕も同行するけど、よっぽどヤバくないと手を出さないからみんながんばるんだよ~。」


「ハンス先生はどれくらい強いんだ?」

先頭を進むセドリック王子がレナードに聞いた。

セドリック王子とレナードが前、ベリアルとわたしが後ろに続く。ハンス先生は離れてついてくるみたいだった。

「『炎矢フレア・アロー』は見たことありますよ。」

「レベル3魔法だろう、たいした魔法じゃない。」

「20本同時に出現させてました。」

「ーそれは凄い。単純に計算するとMP2,000の大技か‥どんな魔物相手に?」

レナードがわたしに振り返る。

「学園のテストで、アリス相手にですよ。」


「学園の授業でそこまでするのか?!」

「そういう学園だからな。」

「ベルのその感覚はおかしい。」

それともダリアはみんなこんななのか、と首をひねるセドリック王子にベリアルがため息をつく。

「‥王様感覚のセドリックには言われたくないな‥。」


わたしはそういえば進級テストでそんなことがあったなぁと思い出した。

「ベリアルが庇ってくれたのよね、あの時はありがとうございました。」

「庇ったわけじゃないよ。あの時はハンス先生がちょっと変に感じたから。」

「そう? ハンス先生はいつもあんな感じと思うわよ。」


「みんな、そろそろ警戒したほうがいいよ。」

レナードの警告で周囲に意識を向ける。

わたしに魔力感知の力はないけど、なにかあやしい気配はわかる。

具体的には『殺気』とかが。


「止まって。」

わたしは前を歩くレナードのシャツを引っ張り足を止めさせる。

「『聖域サンクチュアリ』。」

ちょうど4人が入る大きさの結界を、魔力を注ぎ込んで最高濃度で起動させる。

「これが『聖域サンクチュアリ』か‥。」

濃度を高めたせいでまぶしいほどに輝いた結界にセドリック王子が目を細めた。


「『破邪ブレイク』!!」

この空間を魔力任せで押し広げる!


「キシャアァァァー!」

人のようにも聞こえる叫び声がいくつも響いた。

押し広げていく結界にぶつかった何かが消えていく手応えがある。

弱い魔物ならこの結界の力で滅することができるけど、10mくらい広げたところで結界の壁がひっかかった。


(ー押しきれない!)

「右手、2時の方向に強い魔物がいるわ!」


「『聖銀帷子シルバー・メイル』!」

レナードの魔法でベリアルとセドリック王子の身体が銀色に輝いた。

「『火炎剣フレア・ソード』!」

ベリアルの魔装具から炎の刃が立ち上り、セドリック王子は白銀の剣を抜いて構える。


白い空間に、死神のような黒いローブを纏った骸骨が立っていた。


「あれが魔物なの?」

「『死霊レイス』‥未練を残して死んだ魔術師の骸骨だと言われているよ。」

わたしはレナードと背中合わせに辺りの警戒を続ける。

聖域サンクチュアリ』の効果範囲からは霧が消えて視界がクリアだけど、ベリアルたちの戦闘エリアは魔物が邪魔をして結界に取り込めない。

「魔物のレベルによるのかな。」

「『死霊レイス』はD、強くてもCだ。あの2人なら問題ないよ。」


「せいやっ!」

ベリアルが炎の剣で魔物を袈裟懸けに切りつけた。

カッコいいけど、最近のベリアルは魔術師か剣士かパッとわからなくなってる。

剣自体が魔法でできているから『魔術師』に分類されるそうだけど。

骸骨の骨がバラバラに地面に散らばり、そのひとつにセドリック王子が剣を突き立てる。

「『魔核コア』破壊!」

「よし次だ!」


ベリアルたちが襲ってくる魔物を倒しながら湖に向かって進んでいく。

今回の討伐目標は、永く湖に住みついている人の形をした魔物。

美しい歌声でここに自殺者を呼び込んでいる元凶ー通称『はぐれセイレーン』。


このまま勢いで倒させてもらいます!


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