表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/339

2年生5月:討伐実習(1)

王国では『レベル25』が実力のひとつの目安だ。

ここをクリアすると一人前とみなされて、魔物討伐に参加できるようになる。

学園の討伐実習に参加できるし、『組合ギルド』に登録して個人で仕事を請け負うこともできる。


放課後、A組の実習参加予定者はハンス先生の部屋に集められた。

レナード・ダイス・オマール、ベリアル・イド・ランス、セドリック・アドラ・ディ・グラッド第2王子、そしてわたし、アリス・エアル・マーカー。


「初実習はこの4人のパーティーかー。自己紹介しとく?」

「それいりますか?」

「じゃあ細かい情報共有はあとでやっといてね~。」

ハンス先生がテーブルに地図を広げた。


「まずは日帰りできる難易度DかCまでのところって条件だから、まあこの3ヶ所かな。どれにする?」


・ウォーラ鉱山

白濁湖ミルキー・レイク

ブルー洞窟ケイブ


「ウォーラ鉱山は去年ランスくんたちが行ったとこね。難易度Dだから。」

どこも学園から馬車で1時間から1時間半でたどり着けるそうだ。

「俺は外のほうがいいな。『白濁湖ミルキー・レイク』はどうですか?」

「俺も壁崩したりしそうだから、外がいいです。」

火系魔法のベリアルと土系魔法のレナードが言う。


「んー、難易度がC+あるからちょっときついかもよ?」

「俺がいるから問題ない。」

セドリック王子のセリフにハンス先生が苦笑する。


「マーカーくんは?」

「ええと、いけそうなら挑戦したいです。」

わたしはとにかくレベルを上げたい。

それには魔物討伐が一番効率的だし、難易度が高いほうが経験値も高い。


「んー、無理じゃないと思うけど。じゃあ『白濁湖ミルキー・レイク』で申請するから、ちゃんと調べて準備しておいてねー。」


ハンス先生の部屋を出て、寮の談話室で打ち合わせをしようということになった。

セドリック王子が寮に入ってみたいと言い出したからだ。


「思ったより広いな。」

2年生棟の談話室はセルフでコーヒーや紅茶が飲めるようになっていて、持ち込みもOK。

なんとなくフードコートみたいな感じだ。


「セドリックは寮に入らないのか?」

「ここで寝泊まりするには、さすがに警護の問題がな。」

「寮生活も面白いけど、王子様だと無理か。」

「だが来月の修学旅行は楽しみにしているぞ。夜通し語り合うというのをやってみたいんだ。」

「それ、俺が付き合うのか‥。」

無邪気に言うセドリック王子にベリアルがこぼす。


「殿下もご参加されるのですか?」

「君はオマール伯爵の息子だったな。」

「レナード・ダイス・オマールです。」

「ベルと一緒に生徒会役員をしているんだろう。気軽にセドリックと呼んでくれ、レナード。」

「は、はい。ありがとうございます!」


それでは、とレナードが資料をテーブルに広げた。

白濁湖ミルキー・レイク』は死霊系魔物が溢れる自殺の名所らしい。

「死霊系なら俺の火系魔法が有効だな?」

「そうだね、ベルの魔法が有効だと思う。セドリック王子は聖銀の武器をお持ちですか?」

「セドリックでいいし、敬語もいらん。戦いのとき枷になる。」

「こいつ本気で言ってるから、レナードも普通にしてやってくれないか?」

少し不機嫌になったセドリック王子をベリアルがフォローする。


(王族にタメ口って、かなりハードル高いよね‥。)

王子が留学してきて1ヶ月、主にベリアルが相手をしているけれど、わたしも席が近いから会話に苦労している。


「わたしの聖属性魔法も効くかしら?」

「マーカーさんの結界魔法、頼りにしているよ。相手の数が多いのもあるし、時期によるけど大型の『死魂』が出ることもあるらしいから。」

「‥真面目なのは美徳だが、俺達は共に戦いに行くパーティーだ。固い態度は好かん。」

わたしとレナードの会話にもセドリック王子が不機嫌になるってどういうこと?

「だからセドリック、人にはそれぞれ自分のペースがあるんだよ。」

「アリス!」

「は、はい殿下!」

「セドリック!」

ベリアルが声を荒げた。


「俺達はパーティーだが、お前のパーティーじゃない。お前のは暴君の態度だぞ。」

「そうか?」

「そうだ。お前は王子だし、俺たちは貴族ー王家の臣下だ。」

「ベルは友人だろう。」

「俺はお前と2年付き合ってる。出会ったばかりのレナードたちに『友人であれ』と命じるのは対等な友人のすることか?」


「ーそうだな、俺が焦りすぎた。」

セドリック王子がわたしたちに謝った。


「俺は肩書で呼ばれることが多い。」

それがとても寂しいのだと。

「だから城の外では名前で呼びたいし、名前で呼ばれたい。」


「ーわかりました、セドリック。」

わたしはレナードに笑顔を向ける。

「親しくなるためにも、わたしたちお互いを名前を呼ぶことにしませんか? ね、レナード。」

「ああ、その方がいいなら‥よろしく、セドリック。」

「ありがとう、レナード、アリス。」

パッとセドリック王子が笑顔になる。


「‥俺だけだったのにな。」


「さあベル、打ち合わせを進めよう!」

ご機嫌なセドリック王子の声で、わたしを見るベリアルの呟きは届かなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ