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2年生4月:思惑

「なぜ王族の留学など。」


ファンの苦言に学園長は書類から顔も上げずに答える。

「王家からの申し出を断れるわけがないだろう。」

「あの第2王子、剣士のくせになんでダリアに。」

「騎士と魔術師はお互い協力する関係、話の筋は一応通っている。」

第2王子セドリックは魔力はあまり多くないが、生粋の剣士で騎士としての実力は折り紙つきだ。

「現王家はうまく廻っているはずだ。お前は引き続きミス・マーカーの警護にあたってくれ。」


「それですが、クラレール先生から彼女のダンジョン実習について申請が出ました。」

「他の実習メンバーは?」

「2年A組でレベル25を超えたのは3名です。」

アリスに加えて、レナード・ダイス・オマールとベリアル・イド・ランスの申請も上がっている。

「とりあえず難易度Cまでを許可するが、必ずお前も同行してくれ。」

「‥はい。」

アリスの警護が仕事なのでこの指令は仕方ない。


「それからマギ・ブライドの行方はわかったか?」

「すみません、手がかり無しです。」

「捜索班は継続する。それと別動班を組んで『魔人』の情報を集めることにした。」


この半年の間に、滅んだはずの『魔人』2体が確認された。

「大神殿の戯れ言を信じてるわけじゃないが‥。」

学園長にしては歯切れが悪い。

『聖都』に封印された『魔王』のことはダリア魔法学園の管轄外のことで、学園長も充分な情報が手に入らない。

「『聖女』が復活したからな‥念のため『魔王軍』の動向も調べておく。」


「‥学園長はどうして彼女が『聖女』だと知っていたんですか?」


「今さらだな。」

学園長はそこでようやくペンを止めてファンの顔を見た。

「だいたい、お前は『聖女』だと信じていなかっただろう?」

「自称『聖女』なんていくらでもいたので。」

高い魔力を持った聖属性使いの女魔術師が『聖女』を名乗ったことがあったが、どれもスルーされてきたはずだ。


「ミス・マーカーはダリアと同じ『聖域サンクチュアリ』を使う。」

「違う、アリスが『聖域サンクチュアリ』を使う前から『聖女』だと言っていたはずだ。」


「‥なあファン、なぜ急に彼女が『聖女』だと信じた?」


ファンはうつ向いて答えない。

自分のステータスに『聖女の騎士』が追加されたことは誰にも言えない秘密だ。


「聖女ダリアの『遺言』だ‥僕は絶対に『聖女』を大神殿に渡さない。」

「だったらこれ以上余計なことを増やさないでください。」

正直、ハンス・クラレールの相手だけで手一杯だ。

「第2王子の面倒まではみません。」

「ああ、お前はミス・マーカーを護ってくれ。セドリック王子は‥あれは放っておいて大丈夫だよ。」



大神殿の奥、人払いがされた個室で囁かれる艶かしい声。

「ダリアって全寮制じゃなくて?」

滑りのよいシルクのシーツに放り出された白い裸体。

隠すことを許さず、セドリックはそのまま腰に手を滑らせる。


「王族の俺があんな部屋で暮らせるものか。」

「そうね‥学院は従者付きですものね。」

女は細い指でセドリックの胸筋をなぞる。

「たったお一人で過ごすなんて‥おかわいそうな王子様。」

「お前が俺を送り込んだんだろう、シスター・マリア。」


王城に戻るまであと1時間。

「大神殿でこれは‥背徳感がたまらないな。」

「ええ、王子様‥。」

「セドリック、だ。俺の『聖女マリア』‥。」

「ええセドリック様‥あの女は貴方の王国を滅ぼす悪しき者ですわ。」


学園の聖堂を突き破り、冬の星座をバックに少女を抱き抱えて浮かぶ『魔王』。

レベル6聖属性魔法『聖書バイブル』がみせた1ページ。


大神殿も、王国も、全部手に入れる。


「あんな女、早く殺してしまってくださいな‥。」



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