2年生4月:レベル
進級に合わせて2年生棟に引っ越しをした。
1年生と同じように4階が女子フロアで、割り当てられた部屋も同じ420号室だ。
部屋は1Kタイプになってキッチンがグレードアップしたのが嬉しい。
寮のご飯はとても美味しいけれど、たまに和食が食べたくなる。
お味噌は無いけどお醤油っぽい調味料はあるから、煮物とか、シンプルに塩焼魚もいいな。
アリス・エアル・マーカー(レベル26)
称号:聖女(中級)
HP:2,830
MP:9,999
魔法攻撃力:2,100
魔法防御力:2,790
魔法属性:聖
修得魔法:
『復活』(MP消費5,000)、
『聖域』(MP消費2,000/100m3/10分)、
『聖刻印』(MP消費2,000~)、
『蘇生』(MP消費500)、
『修復』(MP消費300~)、
『慈愛』(MP消費100)、
『回復』(MP消費50)、
『治癒』(MP消費10)
武闘技:『聖拳突(MP消費10~)』
装備:聖女の護印、聖女の刻印、召喚の輪、節約の腕輪、白銀の魔法衣(制服型)、ショートブーツ
所持品:MPポーション(銀)×3、絶対零度×1
使徒:クララ(クラーケン)
騎士:エリオス・J・ウォール、フレッド・ファン・ウッド
卒業式の日、魔人との戦闘でようやくレベルが上がって25を超えて、HPが解放された。
このHP2,830って多いのか少ないのかわからない。
ファンさんもいつの間にか騎士に認定されていた。
魔人『悲哀』との闘いでディックを復活させた後。
『アリスいじめるのダメー!!!』
本気になりかけたクララの召喚を解除してすぐだった。
『うわあああーっ!!!』
魔人を取り囲んでいた一団から悲鳴が上がった。
『どうした?!』
学園長が慌てて駆け寄ると、地面から生えた黒い何かが魔人をすっぽりと覆っていた。
『離れろ!』
学園長の指令で輪が広がる。
みんなが遠巻きで警戒する中、黒い塊は地面に沈んで消え、魔人『悲哀』の身体も消えていた。
ディックは一度死んだことを知らない。
結局、学園長はディックが毒で意識を失っていたのだと情報をコントロールした。
『いつか、助けられないときがくる。』
学園長は淡々とわたしに告げた。
『魔法は万能じゃない。ミス・マーカー、それをわかっていないなら、魔術師になる資格はない。』
わたしの魔法ってなんだろう。
万能だなんて思ってない。
何もできなかったあの闘いを思い出すと、右拳に力が入る。
「聖女ダリアはどんな気持ちだったんだろう‥。」
わたしは『聖女』。
いわゆる攻撃魔法は使えず、治癒魔法と聖属性魔法が使えるだけ。
『聖拳突』は飛ぶ魔物相手に届かないし、クララを倒した『聖刻印』は大技すぎて周りを巻き込みかねない。
‥できることが少なすぎる。
それでも、わたしは魔王を倒せるはずなのだ。
(レベルが足りないのはわかってる。)
魔王討伐の目安レベルは最低50。
レベルが上がれば新しい魔法が増えるかもしれないし。
「情報が足りない‥。」
学園の図書館の本は調べ尽くした。
『魔王』のことも『聖戦』のことも、詳しい記録は残されていなかった。
『聖戦』はまだ16年前のこと。
『魔王』を『封印』した勝ち戦でも、派遣された王国軍も全滅したためその戦いは闇の中だ。
聖女ダリアの記録も曖昧だ。
活躍したのは100年ほど前、王国をあげての『生誕祭』まであるのに。
朝、入学式で会ったディックの笑顔を思い出す。
わたしはやっぱり、また同じことをするだろう。
「死ぬのは怖い‥。」
前世の最期、冷たい雪に広がっていくわたしの紅い血だまり。
(誰も死なせたくない‥!)
わたしは『聖女』アリス・エアル・マーカー。
ー必ずみんなを守ってみせる。