表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/339

1年生3月:卒業式(1)

3月といえば卒業式。

なので、今月の好感度イベントはもちろん『卒業式』。


卒業式の後、木陰に呼び出される攻略キャラ。

『ずっと、ずっと好きだったんです!』

胸元に卒業生のコサージュを付けた可愛い女の子が、彼を潤んだ瞳で見上げる。

『お願いします、わたしと付き合ってください‥!』

そこに偶然通りかかったヒロインと攻略キャラの目が合う。

『それとも誰か好きな人がいるんですか!?』

一度目をそらした彼は、ゆっくりと視線をヒロインに戻す。


『好きな人は‥。』


何か言いたげな口元。

切ない表情に桜の花びらが舞い、ヒロインはその先を聞かないよう足早に立ち去ってしまうー。


いや、もうくっついたらいいんじゃない?

とゲームのときは思ったけれど。


卒業式の締めの校歌斉唱、講堂に厳かな雰囲気が流れる。

ダリア魔法学園は全校生徒が270人ぐらいなので、卒業式は1年生も参加する。

在校生代表送辞は2年生のエリオス、卒業生代表答辞はこの間まで生徒会副会長をしていたマギ・ブライド。

たしか彼は、わたしと対抗戦で争った火系魔法の使い手だったはず。

いつもエリオスの少し後ろに控えていて何度か話したことがあるけど、執事さんみたいなイメージ。


『我々卒業生一同は、これからも聖女ダリアの教えを守りー、』

真面目な副会長の、精一杯声を張った答辞だった。


卒業生とその保護者が退場し、わたしたちは教室でハンス先生からちょっとした注意を受けてから解散になった。


「わたしこのまま外出するけど、アリスは?」

イマリは中等部を卒業した彼と卒業デートの予定。

新学期から彼も同じダリアの生徒になるから、いろいろ教えてあげるんだと嬉しそう。


「んー、図書館に寄ったりちょっとお散歩してから帰ろうかな。」

告白イベントがどこで誰に発生するのかわからないので、しばらく学園内をうろうろした方がいいかもしれない。

「今日はいい天気だものね、じゃあお先に~。」

「うん、いってらっしゃ~い。」

笑顔で帰るイマリに手を振って、窓から外を見ると春の暖かな陽射しが気持ちいい。


「あ、桜が咲いてる!」

中等部と高等部の間に広がる森の一角が薄紅色に染まっていて、思わず大きな声が出てしまった。


「桜?」


ひょいっとわたしの肩越しに、ベリアルも外を覗いた。

「あー、結構咲き始めたな。」

「ベリアルも桜が‥」

好き? と聞こうとして、彼の近さを感じる。

ネクタイを緩めてボタンを外した胸元から、線のきれいな男らしい鎖骨が見えて。

ふわっと香水の匂いが広がる。


「花見にはちょっと早いかな?」

「‥‥‥」

「アリス?」


強めに名前を呼ばれた。

「ーそうね、まだ五分咲きぐらいかしら。」

「中等部に古い桜の木があってさ、それがすごく大きくて綺麗なんだよ。」

ほんと大きくてさ、とベリアルは手を広げて見せる。

「‥ねえ、その木には恋愛的な噂話とかないのかしら?」

「恋愛?」

「桜の下で告白すると恋人になれるとか、そういう感じの噂。」


それを聞いたベリアルが戸惑った表情を浮かべた。

「‥ディックに呼ばれてるけど、これって告白じゃないよな?」


「ふふっ、真面目な顔でなにを言い出すのよ。」

中等部3年生のディック・メイビス・ブレイカーはすごくベリアルに懐いている攻略キャラクターだ。

「まあそうだな。」

ベリアルはあっさり肩をすくめてみせる。


「アリス、図書館に行くのなら途中まで一緒に行かないか?」


ちょっと話があるからと言われて、わたしはベリアルと一緒に校舎を出た。


‥これは、告白イベントどうなるのかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ