歩きだす郵便受け
あれはどこに行ってしまったのか。みんなはとうになくなっている。私は昔の手紙を頼りに変わらぬ日々を繰り返す。大きな大きなめぐりに出会うが誰もがそれに気が付かない。導もなくして来た道に私だけが立ち尽くす。
変わらない私だけが取り残される。みんな何かに引き寄せられるように、何処か遠くを目指して行ってしまう。私ももっとすべきことがあるはずなのに、ただそれを眺めている。 私は机の上にある手紙にそっと手を重ねた。
青々と茂る若葉から薄茶けた一葉へ…纏う衣が移りゆくように私たちは、心も姿も変化していった。手紙の束をハンドバックに入れて外へ。探しにいかなくては。凍えた地面に、役目を終えた枯葉がはらはらと舞い降りた。
今ではもう手紙は来ない。けれどまだ残っているはず。私をつくり、変えたもの。今ではこうして歩くことができる。今度は私から会いに行こう。枯れ葉を踏み足跡を残しながら、私もめぐりめぐり何処かに向かっていく。