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火恋の山 ‐ヒレンノヤマ‐  作者: 遠矢九十九
7/8

血の道

北の山を抜けるのなら、その途中にある自宅に少し寄る程度の余裕はある。山に入る前に、一応軽く食事はとっておきたかった。


この時間ならアリシアはもう寝ているだろうが、むしろその方がいい。何か話せば、きっと彼女はすぐに普段ならぬ気配を感じ取ってしまうだろうし、自分も、彼女の顔を見たら、命を落とすかもしれないこの任務への、覚悟が揺らいでしまうかもしれない。


祈りのような気持ちにもなりながら家に着き扉を開けると、灯りは消えていて、家の中は静まり返っていた。


訓練によって、甲冑がこすれる音をできるだけ鳴らさないように動くことはできるが、しかしさすがに食事の準備をして食べるとなると、それなりの音が無音の家の中に響いた。


ならばせめて、と、炒めたコメ料理と山鹿のスープを、ほとんど噛みもせずに一気に流し込む。


と、飲み終えて顔を下ろすと、その姿を怪訝に見詰めるアリシアと目が合った。


一瞬、息が止まってしまうラドリッドに、


「やぁねぇ、はしたない。灯りもつけないで、甲冑も脱がずに…、あっ、ってことは、お風呂にも入ってないでしょう。なぁに?そんなにおなかすいてたの?」


と笑うアリシア。


結局出会ってしまったか…。


ならばせめて早々に出立するしかない。


「あ、あぁ。これからまたすぐに出なきゃいけなくてな」


ラドリッドは立ち上がり、テーブルに置いていた大きな兜を、マントの中に隠すように小脇に抱えると、


「ごちそうさま。今日も本当に美味しかった」


と一礼し、歩き出す。


「あら、大忙しだわね…。お粗末さまでした。でもなぁに?なんだかいつもより…」


その後ろ姿にアリシアが何か、通常と違う何かに気付きかける。


「いや、何か違うか?いつも通りの、通常の夜間警備だ」


とあわて、振り返らずに早足で玄関の扉に手をかけた時、


「うーん、そうだわ、それ、そのいつもと違う重装備はなぁに?」


だめだ、アリシアの鋭い観察眼は誤魔化せない。


平常時には左に下げた長剣と、背中側、腰に備えた短剣のみの武具、そして兜なども簡易なもので、着用しないことも多いぐらいだったが、今日は長剣が左右に一本ずつ、兜も鋼鉄製の大きな、首元まで隠せる戦闘用、さらには、動きにくいため普段ほとんど着用していないマントをはおり、マントの裏には投擲用のくさびが数十本、収納されている。そして長距離移動のため、腰には普段絶対に持っていない水筒も下げていた。


武具や兜はマントで上手く隠しているつもりだったが、確かにいつもとはだいぶ違って見えてもおかしくない。


しかも長剣は、マントのすそからはみ出していて、アリシアからはその先が二本とも確認できていた。


「これは…、ちょっと、その、今夜はちょっと必要なもので…」


ラドリッドが、言い訳が上手いはずがない。


「あら、いつも通り通常の夜間警備じゃなかったの?なんだか、今夜だけは特別、みたいな感じじゃない」


もうひと押しで口を割るはずだわ、何かしら、王様や外国からの来賓の警護とかかしら。


悪戯心も働き、アリシアは笑みを浮かべながら、ラドリッドを問い詰めていく。


「い、いや、いつも通りだ。ただ、そう、騎士とは、本来こうして正装すべきものだしな。普段が軽率過ぎだったのだ」


もはや苦しいラドリッド。


「あら、そんな格好の騎士さまなんて、街で一人も見たこと無いわ。なんて軽率な騎士団なのかしら」


ゆさぶるアリシア。


「騎士団は軽率などではない!」


ついラドリッドは振り返ってしまった。


しまった、と思った時には、アリシアはもう目の前にいた。


「じゃあこの重装備の正装はなぁに?こんな格好、本当は誰もしないでしょう?」


「ぬ…い、いや、いくさ場に向かうのであれば、むしろこれでも正装というには足りぬほどなのだが…」


思わぬ近距離に焦ったのも手伝って、ラドリッドは「いくさ場」などと口走ってしまった。


「いくさ場?いやだわ、戦争が始まるの?」


アリシアが顔をしかめる。


「い、いや、戦争は始まったりはしない。むしろ、これから停戦に向かうのだから……、と、いや、とにかくだな、そうだ、この重装備で、これから俺は重要な任務にあたることになっているのだ。だから、急ぐから、頼む、もう行かせてくれ!」


扉を開けるラドリッドに、


「停戦?じゃあやっぱりどこからか偉い人が来てるのかしら?その人の秘密の護衛の仕事でしょ。ねぇ、当たり?ねぇラドリッド!」


アリシアがカマをかけてみるが、当たってはいなかったし、これ以上の長居は都合が悪いため、ラドリッドは足早に扉の外へと踏み出していった。


「うーん…」


違ったかなぁ、とその背を見送りながら首をかしげるアリシアに、大股で数歩進んだラドリッドが急に立ち止まり、振り返り、


「食事、今日も美味かった。帰ってきたらまた頼む。……行ってくる」


と軽く頭を下げ、返事も待たずに再び大股で歩き出した。


「あ、うん、行ってらっしゃい……」


街とは反対の方に行くんだ……、


と思いながら、アリシアがその背に小さく手を振る。


「うーん……」


なんか変なんだけど……、「帰ってきたらまた頼む」?今までそんなこと一度も言ったことないのに、なんだかずいぶん遠いところに行くみたいな…。それに、街へ行かないってことは、北門の方?もしかして、門のところまでもう誰か来てて、それを迎えに行くとか…。まさか北の山の向こうまで迎えに行くんじゃないでしょうねぇ。それなら確かにそこそこ遠くと言えば遠くだけれど、うーん、それにしても……。


宙を睨んでしばし考え込み、


じゃあ、北門ぐらいまでこっそり追いかけてみようかしら。なんだか眠気も覚めちゃったし、それにどんなお客様が来るのか見てみたいものだわ。もしも村を襲った連中だったら、遠くから石ぶつけてやるんだから。


アリシアは悪戯っぽく一人笑うと、ラドリッドの去った方へとそっと小走りに駆け出した。


ラドリッドはすでに遥か遠くの闇の中に消え入りつつあったが、どうやらやはり北門へと向かっているようだった。


そのままの距離を保ったまま、アリシアはなるべく物陰に身を隠すように、道のはじを歩いて追う。


夜風が思ったよりも冷たい。


やがて北門が見え始め、門番とやり取りをするラドリッドが、軽く手を挙げて門の外へと出て行った。


あら、外に行っちゃうんだ。


門の陰になるのでしばらくはお互い見えないはずと、アリシアは軽く走り出し、一気に北門まで辿り着いた。そしてそっと門番の様子を伺い、幸か不幸か今日もまたあの例の中年の姿があることを確認し、ラドリッドが近くのどこにもいないか見回してから、


「こんばんは」


と前に出た。


門番のいる辺りでは火も炊いているため、外よりはだいぶ暖かかった。


「おや、あんた、アリシアちゃんじゃないか。こんな時間に何やって……、ははぁん、ラドリッドを追って来たんじゃないの?」


相変わらず下世話感の減らない人だわ、と思いながらも、この口の軽そうな中年なら、それなりに何か知っていて聞き出せるかもしれない、と、


「あぁ、えぇ、実は…、そうなのよ。こんな時間に帰ってきて、と思ったらまたすぐに行ってきます、でしょ?しかも見送ってたら、なんだか門の方へ向かっていくじゃない。何かおかしいわ、と思って、ついここまで追いかけて来てしまったの」


アリシアの言葉に、中年は待ってましたと言わんばかりの笑顔で、


「ぬっはっは、門の外で浮気でもしてるんじゃないかって?くくく」


めんどくさいなぁ、もう。


「そうなのよ、だったら許せないわ。ねぇおじさん、何か知らない?今出てく時、あいつ何か言ってなかったかしら?」


どうかしら。


他人の惚れた腫れたがよほど好きなのか、嬉しそうに笑っている中年を覗う。


「そうさなぁ、まぁ、心配するようなことじゃない、と思うぜ」


「あら、どうしてわかるの?」


「いや、なに、あいつにそんな甲斐性があるわけないだろう」


「わかりませんわ」


「大丈夫だって。今日は山越えの長旅で特別な何かっつって、上からも……」


「おぉい!」


もう一人の警備兵が、調子に乗ってきた中年兵士をさえぎる。


あぁもう、あと少しだったのに……。


とは言え、邪魔は入ったものの、どうやら上からの特別な命令があって、山を越えてどこかへ行くらしいことはわかった。


だが、北の山を越えた先には…。


自分の村と、その道中を思い出すアリシア。


今さらあんな方へ一人でこんな夜中に急いで行く意味は何?どうして?あんな重装備で、まるで戦争にでも行くみたいじゃない。


「いくさ場」というラドリッドの言葉を思い出した。


そしていつも忘れがちなのだが、彼は第一○一騎士団の『翼』の騎士。通常の人間では遠く及ばない、特別で特殊な強さを持った鬼神のごとき戦士。


普通なら大人数で行くようなところへでも、一人で充分行けるのが、ラドリッドたち。


そう、例えばいくさ場のようなところへ。


まさかね……。でも……、こうなってくると、せめて本当のことを本人の口から聞きたいわ……。


「ねぇおじさん」


「ん?なんだいアリシアちゃん」


まだまだ話し足りないところを制されたので、再び話しかけられて嬉々とする中年兵士。


それを隣で見張る若い警備兵。


「ちょっとだけ……、ラドリッドのあとを追ってはだめかしら。ほんのちょっとよ、せいぜい一、二時間だけ。特別な何かだなんて聞いたら、なんだか余計に心配になってきてしまいましたの」


「ほぅ、そうかい、まぁそうだよな、わかるよ。でも、さすがにこの先は……」


真夜中の山中での逢引きかっ、とますます眼を輝かせる中年ではあったが、漆黒の影としか見えない山の方を見やり、


「それにこの山でそういうのはちょっと……」


と北の山の現象を思い出させる。


「お願い、山のアレのことはちゃんと気を付けるし、ちょっとだけ追いかけて、もう遠くへ行ってしまっているようだったら、あきらめてすぐに引き返して来ますわ。だから、ね?お願い」


「うーん」


と、中年は隣の若い警備兵の顔色を覗う。


若い警備兵は、おっさんに巻き込まれて自分も責任を取らされるのは御免だ、といった様子で横に首を振った。


が、下世話な好奇が上回った中年兵士は、


「わかった、本当に、ほんの少しの間だけだからな、なるべく早く済ませて戻ってこいよな。あと、俺から聞いた話は無しだぞ、ラドリッドの任務については何も知らないことな」


と顎で山の方を指す。


「おいおい、俺は知らねぇからな…」


若い警備兵はあきれてため息をついた。


「ありがとう、ごめんなさい。大丈夫、本当にすぐ戻るわ。もし何かあっても、私がいつの間にかこっそり門を抜けてたことにして構わないから」


アリシアは門の外へと走り出す。


ラドリッドの姿が見えなくなってから、もうだいぶ時間が経っている。ラドリッドの強靭な肉体を考えると、こんな山道でも歩速は緩まないだろう。


どのぐらいの距離が空いてしまっただろうか。


振り返って二人の門番の方へと大きく手を振ると、アリシアは山の闇の中へと消えていった。


「俺は、便所に行ってて何も見てないし何も知らないんだからな、おっさん」


若い警備兵が愚かな中年を睨んで言ったが、中年は若い二人の山中での情事を想像し、もはや何も聞こえてはいなかった。


それからどのぐらい走っただろうか。


いつまで経ってもラドリッドの姿は見えず、だいぶ荒れてきた道に足をとられそうになり、いったん立ち止まると、アリシアはしばらく呼吸を整えた。


どうしよう、思ったより先へ行っちゃったのかしらね…。引き返した方がいいのかしら。


街の方を振り返るが、深い木立にはばまれた闇の中に、街の灯りは全く見えなかった。


と、その時、山のさらに奥の方で、何か音が、そして人の声が、聞こえたような気がした。


ラドリッド…?


再び、何か甲高い金属同士がぶつかり合うような音。アリシアは、音の聞こえた山頂方向へと歩き始めた。


しばらく進むと、音や声は、途切れ途切れながらも、だんだん大きくなってきている。


しかしなにやら争っているように聞こえる物音に少し怯え始め、それでも、また一歩踏み出したその時、ずるりと足元が滑り、思わず地面に手をつくと、何かぬるっとした液体の中に手を突っ込んだ。


いやだ、ぬかるんでるわ、でも最近雨なんて降ったかしら……。


と、手を服の裾で拭い、立ち上がろうとしたその時、手をついていたすぐ脇に、何か大きな黒い塊が転がっているのが目に入った。


暗闇で目を凝らすが、真っ黒でよくわからない。目を慣らしながら辺りを見回す。


と、こちらを睨みつけている目と視線が合った。


「わっ」


と驚いて後ろへ飛び退り地面に腰が着いた。


しかしその目は、大きく見開かれたまま、アリシアではない、虚空を睨みつけている、というか、これは…、


「ひっ……、いやっ……!」


アリシアは思わず声を上げ、へたり込んだまま後ろへと逃げた。


アリシアと目の合ったそれは、その隣に転がる黒い塊から切り離された、人間の首であった。


となれば、まさかさっきのぬかるみは、まさか……。


アリシアがあわてて自分のてのひらを見ると、そこには服では拭い切れぬ、黒ずんで粘り着く何かがべったりとこびりついており、何か、生臭いにおいが鼻についた。


「いやっ…!何、なんなの!?何なのよこれ…!ラドリッド!?ラドリッド!!」


頭が真っ白になり、全身が震えて上手く立てない。


背後の木にしがみつき、やっと立ち上がると、地面に転がる首をもう一度一瞬だけ確かめ、ラドリッドがいると思われる、音のする方へと、震えふらつきながらも走り始めた。


その頃、やや開けた河原で戦闘となっているラドリッドが斬り捨てた黒装束の敵兵は、一体何人目だっただろうか。


「くそっ、街のこんな近くにまで敵兵が潜んでいたというのか!?それとも今回の作戦はすでにもう筒抜けか!?」


また一人、下段から肩口へ斜めに斬り飛ばしながら歯噛みするラドリッド。


「これではこの作戦の根拠自体が揺らぎかねない……」


敵国が『翼』の騎士のことなどほとんど知らない、というのが前提だったはずだ。


しかしもしこの作戦が筒抜けであるというのならば、敵は我々が想定しているよりも多くを知り、この作戦を潰すため、即ち『翼』の騎士・ラドリッドを倒すための充分な戦力を、今ここに投入している可能性がある。


さらには、実戦での『翼』の騎士の動きや戦闘方法の特徴などの情報を、この機会に収集しようということか。


だが、振り返りざまに風のように背後の敵の懐へと入り込み剣を突き立て、蹴り飛ばしながら、


「……いや、ならばこれはむしろ好都合か。向かうものすべて斬り捨てて、『翼』の騎士の恐ろしさ、思い知らせてくれる!」


さらに二人の敵を瞬時に斬り捨てるラドリッドの目が光る。


目に見えて把握できる限りは、残る敵兵は三人。


それから他にもまだ、向こうの林の中にも何人か潜んでいる気配がする。


一瞬の膠着。


が、ふいに遠くの林の中から鳥の鳴くような声が聞こえると、ラドリッドと対峙していた三人がじりじりと後退し始め、次の瞬間には、飛び去るように闇の中へと消えていった。


一時退却したのだろうか。


ラドリッドは剣を構えたまま、神経を尖らせ研ぎ澄まし、辺りの物体、動き、音、におい、すべてに感覚を集中させた。


一面に転がり横たわる何人もの敵兵は、もはや動くものも無く生臭い死臭を撒き散らし、川のせせらぐ音、風で木立が揺れる影と音、遥か遠くに、遠ざかっていく複数の獣の足音、いや、これは恐らく逃走した敵兵か、呼吸、鼓動、これは自分自身の、他に何か、その音を放つものは、


……もう、いないか、


と構えを崩し剣を収めるラドリッドだったが、数歩も進まぬうちに、先ほどまで自分も歩んでいた山道の、麓方向から、何かが、動物にしては警戒心の薄いというか、無頓着に近付いてくるような気配を感じた。


敵か…?いや、それにしては堂々とし過ぎている…。罠か…?


ラドリッドは再び感覚を研ぎ澄まし、辺りにも警戒しながら、マントの中の投擲くさびに手をかけ、その方角へと狙いを定めた。


やがて気配は足音へと変わりさらに距離を縮め始め、河原から崖を登った山道、ラドリッドの視線の先の木立ががさごそと揺れ、その気配の正体が姿を現しかけたその時、ラドリッドはくさびを投げ放った。


が、くさびが手から離れようというその瞬間に、その何かが見知った者の人影らしきことに気が付く。


「ちっ」


直前でなんとか指先を返しくさびの軌道を変える。


「キャッ!」


くさびが二本、アリシアの隣の木に深々と突き刺さった。


「アリシア……!なぜお前がここに……!」


驚くラドリッドであったが、絶対に有り得ない可能性では無いことも思い起こされ、とにかく彼女のそばへと走り寄り、兜を脱いで脇に抱え、アリシアの顔を覗き込む。


「ラドリッドぉ……。うぇえぇぇえぇ……、何なのよもうー……、ラドリッドぉー……」


ラドリッドの顔を確認すると、とたんにアリシアが泣き崩れ始めた。


「すまない…、大丈夫か…。というより、なんでこんなところに…」


ラドリッドが問うが、アリシアは泣きじゃくるのみで答えない。


しかしここでこのままでは……。


「アリシア、大丈夫だ、俺がついてる、もう大丈夫だ」


諭すが泣き止まないアリシア。


泣きながらその場に座り込んでしまった。


いったん街へ戻るか……、しかしそれにしても……。


「仕方無い、いったんとにかく休んで落ち着こう、少しすまないアリシア。あまり周りを見るなよ」


座り込んで泣きじゃくるアリシアを肩にかつぐように抱き上げると、一気に斜面を駆け下り、死体だらけの河原を駆け抜け、上流へと走る。


少し進んだ対岸に、ひらけてはいるが、身を隠せそうな大きな岩のある河原を見付け、膝ほどの深さの急流を横切り、川側からの目と星明かりの及ばない岩陰に、そっとアリシアと、兜を降ろす。


アリシアは、まだしゃくり上げてはいるが、もう先ほどのように泣いてはいなかった。


どうやらラドリッドの肩の上で、彼のはやてのような足と、その足が生み出す景色に驚いて、逆に落ち着いたらしい。


ラドリッドはほっとして、近くに落ちていた大きな流木を拾い上げると、岩陰に置き、そこにアリシアを座らせ、ふぅ、と息をついた。


辺りは静まり返っており、今のところ、敵の気配は無さそうだった。


と、アリシアを見ると、服に血の染みがある。


「どうした!?どこか怪我をしているのか!?」


アリシアの前に座り、血のついている辺りに触れる。


「や、ちょ、ちょっと…、どこ触ってるのよ!」


と服を引っ張るアリシアだったが、ラドリッドが本気で心配そうに顔を見つめてきたので、


「だ、大丈夫…。これは私のじゃなくて……、途中で…その…」


と言いながら目の合った首を思い出し、再び震え出し、涙が溢れる。


「そうか、とにかく、怪我は無いのだな、大丈夫だ、俺がいる。わかるか、アリシア、今はもう大丈夫だ」


ラドリッドがその肩を強くつかみ、アリシアに諭すと、アリシアはラドリッドの目を見つめて涙をこらえ、うん、うん、と頷いた。


ふぅっ、と息をつき、アリシアの肩から手を離すと、ラドリッドも並んで流木に腰掛けた。


さて、どうしたものか…。やはりまずはいったんアリシアを連れて家に戻るしか無いか…。


隣のアリシアをちらりと見やると、アリシアは唇を噛んで泣くのをこらえながら、うるんだ瞳でラドリッドの顔をじっと見つめていた。


はっと急に照れくさいような気持ちになり、目をそらしてしまうラドリッド。


やっぱりなんだかんだ言っても、女の子なのだな…。


これまでの、ディーゴと並ぶような聡明な知性や、街や家での明るく気丈な振る舞いなどからは想像もつかなかった、まるで迷子の幼子のような顔をしたアリシアに、ラドリッドは改めて感じた。


そうだ、だから、守らねば。俺はそう約束したのだ。絶対にアリシアは、俺が守る。


今回の作戦は、どこからかはわからぬが、もはや敵に知れていると考えた方がいい。


敵兵が狙っているのは恐らく自分一人。


だとすればアリシア一人で帰る方が安全なのかもしれぬが、かと言ってこんな状態のアリシアを、一人で帰らせるのも有り得ないこと。


となれば、アリシアをかついで一気に麓まで駆け下り、門の警備兵に託すか、いや、家まで、ディーゴの元まで送り届けて、俺はまた任務に戻る。それしかなさそうだな。


城へ戻って、この作戦が漏れていることを伝えたところで、意味は無い。


総長は俺に、向かう敵はすべて斬り捨てよと命じた。


それはつまり、作戦が漏れていようがいまいが、目的地に辿り着く前に道を阻む敵がどれだけいようが、関係無いということだ。


この作戦の目的は、『翼』の騎士の恐ろしさを敵に知らしめること。


ゆえに、俺はただ、目の前の敵をあまねく撫で斬り、前に進むのみ。


それが、俺に与えられた任務なのだ。


ラドリッドの目が暗闇に鋭く光る。


「ラドリッド……」


そんなラドリッドのただならぬ気配を感じて、アリシアが小さく声をかける。


「あ、あぁ、なんだ?」


振り返ると、アリシアがラドリッドの手を、甲冑の籠手越しにぎゅっと強く握っている。


ラドリッドは再びどきっとしたが、怯えて震え、目をうるませているアリシアに、ゆっくりと、手を重ねた。


「ラドリッド……、…帰ろう…?いや…もういや……、早く、うちに帰ろう?」


アリシアが幼子のようにせがむ。


「あぁ、そうだな、帰ろう。大丈夫だ、俺がついてる。俺が絶対にお前を守る」


ラドリッドが握る手に力がこもる。


「もう…、痛いよ…」


少し笑いながらアリシアが言うと、


「あ、あぁ、すまん」


あわててラドリッドが手を離し、立ち上がって、アリシアに手を差し伸べた。


「ありがと」


アリシアが微笑んでその手をつかもうと腕を上げた。


その時。


ラドリッドの背後から、何かが音も無く猛烈な速さで飛んで来る気配がした。


アリシアを抱きかかえると、一気に横っ飛びにかわすラドリッド。


今まで彼らがいた場所に正確に飛んできたそれは、岩に命中し、大きな鈍い金属音を響かせてはじかれた。


両刃ではあるが大きく湾曲した、三日月のような形をした、ちょうどその三日月の内周で人の首が狩れそうな大きさの、見慣れない武器が、十ほど転がった。


「ちっ、俺としたことが…」


アリシアに気をとられていたとは言え、決して油断していたわけでは無かった。


最初にふいの戦闘が始まった時から、気はずっと張り詰めっぱなしで、それは訓練の時など比べようもないほどで、鎮めようとしても決してそう簡単に鎮まるようなものでは無かった。


にも関わらず全く気付かなかったということは、どこの国の兵かはわからぬが、我々と同じような特殊な訓練を積んだ、特殊な兵が存在するということか。


そうなってくるとますます、『翼』の騎士の比類無き力を示すという今回の作戦の意義が薄れるようだが、しかし、やはり同じこと。


すべて斬る…!


「アリシア、俺は少し離れたところに敵を誘導し、すべて倒したらまた戻ってくる。それまで、あの岩陰の流木の後ろに隠れていてくれ。そこに俺の兜も置いてある。かぶらなくとも、胸に抱くなりしておけば、ある程度の護身にはなるはずだ」


腕の中で震えるアリシアに言うが、涙をこぼすアリシアは、無言で行かないでと訴えている。


「頼む。必ず戻る。お前を守ると、騎士として、男として約束したのだ。約束は絶対に守る」


震えながらも、ゆっくりと何度か頷くアリシア。


「よし、では……、走れ!」


アリシアを岩陰の方へ押し出すと共に、ラドリッドは反対方向へと走り出した。その足元に、先ほどとは違う小刀のような何かが立て続けに飛んできて、ラドリッドを追うように次々に地面に突き刺さる。


アリシアも、恐怖に力の入らない足を必死で上げながらなんとか走り、流木の後ろへと飛び込んだ。


こちらには何も攻撃は来なかったが、ラドリッドに言われた通り彼の兜を探すと、流木の反対側に置かれているのが見えた。


そっと片手を伸ばし兜の頭をつかむが、鋼鉄製で首元まで覆う大きな兜は持ち上がらない。


「重い…」


こんなものかぶって戦うだなんて…、やっぱりどうかしてるわ…。


だが、その常人離れした強靭な肉体だけが、今は頼もしく信じられる存在だった。


やむを得ず兜を両手で引っ張り上げて、できるだけ音がしないように手元へたぐりよせると、兜はなんとか持ち上がり、流木の上を転がり落ちてきた。


アリシアはそれを強く胸に抱き締めながら、


お願い…!早く戻ってきて…ラドリッド……!


ぎゅっと目を閉じて祈った。


そのアリシアとは反対方向へ駆けて行ったラドリッドは、ほんの数秒で、かなり離れた場所まで移動していた。


そこで立ち止まると、再び音も無く、四方からラドリッドに向かって正確に、いくつもの黒い影が飛来する。


瞬時に剣を抜き放つと同時に、その三日月刀をすべて叩き落とし、


「こんなものでは何度やっても私を倒すことなどできぬぞ!」


ラドリッドが闇に包まれた山林に向かって叫んだ。


一瞬の、静寂。


が、さらにまた四方から同じように三日月刀が飛んでくる。


「無駄なことを!」


と剣を構えた視界の端に、三日月刀の後を追うようにこちらに疾走するいくつもの黒い影をとらえた。


速い。


三日月刀を投げたのとは別の一隊か。空中を高速で移動する影とほとんど変わらぬ速さで、ほぼ同時にラドリッドの元に飛びかかる。


「ちっ!」


ラドリッドは一気に十数歩分ほどの距離まで飛びのきながら、その方向から疾迫していた三人を斬り捨てる。


ラドリッドが先ほどまでいた場所で大きな金属音が鳴り響き、四方から飛んできた三日月刀が、すべて同時に同じ位置でぶつかり合い、跳ね飛ばされ、さらに、その下では、四人の黒装束が、細長い長剣で互いに互いの首元を貫いて静止していた。


「なんだこいつらは…」


俺を倒すためならば同士討ちの危険など気にも留めないというのか。


しかし考える間も無く、残る影が一斉にラドリッドに斬りかかってくる。


すでに剣の届く距離にまで来ていた何人かを、右から左へ一閃するラドリッドに、背後からもいくつもの刃が襲いかかるが、いつの間にか抜いていたもう一本の剣を背に回し、まるで後ろにも目があるかのような正確さですべての斬撃を受け止め、振り向きざまに次々と斬り倒す。


まさか、こんなに早くに二本目を抜くことになるとはな…。


本当は一本目が使い物にならなくなってから使うはずだったのだが、と、両の剣を握り締める。


あまり、二刀流は好みでは無いのだが……。


再びあらゆる方向から迫る、三日月刀と敵兵に全神経を集中させると、それを充分に引き付け、まるで剣舞を踊るかのように、普通の人間ならば片手で簡単に掲げることすらもできないような重く長い剣を、水鳥の羽でも振るように軽々と、それはまさしく『翼』の騎士の名にふさわしい、翼をはためかせ華麗に舞う竜の如き剣さばきで、すべての空中の三日月刀をはじき飛ばし、跳ね返ったその刃は、ラドリッドにめがけて剣を繰り出してきた敵兵の頭や首を、刺し貫き、切り裂いていた。


が、静止したラドリッドが見回すと、あとほんの腕の一伸ばしで標的を貫いていたであろう切っ先が、ぐるりとラドリッドの首元を取り囲んでいた。首が落ちてもなお、狙いを定めたまま動かない正面の敵を蹴り飛ばし、剣の輪を払いのけて駆け抜けるラドリッド。


敵兵があとどれだけ残っているのかわからぬが、そういえば、アリシアは……!?


走り出しながら左手の剣を収め、アリシアが隠れている大岩を振り返ると、いくつかの影がそちらに向かって駆けて行くのが目に入った。


「行かせるかっ!」


空いた左手でマントの中のくさびを数本取り出し、影に向かって投げつけると同時に、一気に進路を変えてアリシアの元へとさらに速度を上げる。


アリシアに向かう影は恐らく五人、そのうちのニ人の背と後頭部にくさびが深々と突き刺さり倒れるが、残る三人はぐにゃりとかわして走り続ける。


ラドリッドはさらに行く手を阻もうと飛びかかってくる無数の黒装束を、走り抜けざまに攻撃をかわし、斬り捨てていくが、斬られることも同士討ちも恐れぬ敵兵の攻撃は、これまでの訓練でもある程度は想定されていたとは言え、せいぜいそれは相打ち覚悟の雑兵の玉砕程度であり、こんな多数の特殊に訓練された人間が、同時にそれを仕掛けてくることなどは、全く考えられてはいなかったため、思うように倒し切れず走り抜けられない。


『翼』の騎士がいかに本来の騎士からかけ離れた存在であったとはいえ、殺し屋や突攻兵などではない。


あくまでも騎士なのだ。


『翼』の騎士を、これまでに無い全く新しい強靭で比類なき戦闘集団として、いかにディーゴたち策謀の叡士たちが知恵を絞り尽くして作り上げたとはいえ、その根本から騎士道の魂を取り去ることはできなかった。


騎士である限りは、勝利とは完全であれ、という観念がどうしても頭から離れない。


いかなる汚れた暗殺術を身に付けられようとも、その戦い方・勝ち方は無様であることは許されない、騎士として恥ずべき勝利などあるまじき、と、狭く閉じた壁の中の世界で、彼ら全員が当然の常識として、深く考えることも無く暗黙のうちに了解してしまっていた。


ゆえに今目の前に襲い来るような、一対多数でも、どんな攻撃方法でも、自らの首が落ちながらでも、仲間と同士討ちをしてでも、敵を倒すこと以外に何の目的も条件も存在しない兵の一団など、有り得ないわけでは無くとも、訓練に積極的に取り入れることは意識的・無意識的に忌避され、それで良しとされてきてしまっていた。


『翼』の騎士などと、騎士であることを捨て切れずにさらなる高みへの鍛錬を怠った、我々の甘さだ、やはりしょせんは箱庭の中で小さな背くらべをして、竜だの翼だのと慢心していただけなのか…!城に戻ったら報告し、このような者どもとの戦い方も兵法に加えねば……。


ラドリッドは歯噛みしながら、個々の意志も感情も持たぬ羽虫の集団のような敵兵の攻撃をかわし、受け、跳ね返し斬り捨て駆け続ける。しかし先を行く三つの影が、ついにアリシアの隠れる大岩に辿り着くのが見えた。


「貴様ら…!!」


鬼神のごとき表情で、再び二本目の剣を抜き、周囲の敵をまとめて撫で斬り飛ばす。


辺り一面に、大量の首やはらわたが飛散し、それが地面に落ちる頃には、ラドリッドの影は遥か先へと消えていた。


その間アリシアは、遠くで聞こえる、まるで地の揺れるような物音に震えながら、流木と大岩の隙間の陰で、重い兜にしがみつくように体を丸めながら、固く目を閉じひたすらに祈っていた。


が、ふいに辺りが静まったように感じ、流木越しに少しだけ様子を伺おうと、顔を上げ、そっと開いたその目に映ったものは、目と鼻の先でアリシアに三日月型の刃を向けている黒い影であった。


「ひ……!い……いやーッ!!ラドリッドーッ!!」


思わず叫ぶアリシアに、その影が三日月刀を振り下ろす。


鈍い金属音が響いた。


アリシアが必死に顔の前に掲げた兜で三日月刀がはじかれていた。が、同時に兜も地面へと転がり落ちる。


再び黒い影は音も無く三日月刀を構えた。


闇に浮かぶそれは、アリシアの目に、鎌を振り下ろす死神のように映った。


ラドリッド……!


恐怖に金縛りのように撃ち抜かれ、声も上げられず、涙が頬を伝う。


そしてそのアリシアに死の鎌は振り降ろされ、アリシアは身をこわばらせ、きつく目を閉じた。


再び、大きな金属音が鳴り響き、何かが目の前に馳せ立ちふさがった気配を感じ、遅れて疾風がアリシアの髪を揺らした。


アリシアがゆっくりと目を開けると、 目の前にはラドリッドが立ちはだかり、 敵兵の剣を受け止め鍔迫り合っていた。


「ラドリッド!!」


思わず叫ぶアリシア。


ラドリッドはそれにも答えず、一気に敵を左の剣で下段から斬り捨てようとした、その瞬間。


鍔迫り合っている黒装束の右足を斬り飛ばしながら、下方から三日月刀が現れ、甲冑の隙間からラドリッドの左脇を深々と突き刺し、さらに右足を失いぐらりと傾く黒装束の胸を貫いて現れた一筋の影が、ラドリッドの右眼を貫いた。


だがラドリッドは顔色ひとつ変えずに左腕を振り抜き、脇に三日月刀を突き立てている敵の首を断ち、そのまま正面の敵の腕から首へとまとめてなぎ払うと、腹を蹴り飛ばした。


その勢いでラドリッドの右目から剣が抜き去られ、鮮血が飛び散る。


宙に残された腕と首が地面にべちゃりと落ちたが、まるでそれを合図にするかのように、脇に三日月刀を突き立てている首の無い黒装束の腕に力がこもり、三日月刀をえぐるように回転させた。


「ぐっ…!」


思わずうめき声を上げるラドリッド。


三日月刀は胸の中までも切り裂いて引き抜かれ、胸当てに引っかかり、その反動で滑るように手が離れ、首の無い黒装束は、そのままゆっくりと倒れて動かなくなった。


なんてやつらだ……!自分の命や同士討ち、そして仲間の命さえもなんとも思っていない、このような下賤な者どもなどに、決して負けるわけにはいかぬ…!命を捨てることが即ち強さなどでは無い!


ラドリッドが残る一人の攻撃に備えて、剣を握る手に力を込め身構えたその時、先ほど蹴り飛ばした黒装束の体が、はじかれるように再びこちらへ飛びかかってきた。


死体がいつまでも…!


ぎりっと奥歯を噛み一刀に薙ぎ払った背後から、もうひとつの影が飛び出してきた。


その影が下段から突き上げてきた細長い長剣を右の剣で受け、同時に左の剣を敵の眉間に叩き込んだ。


だが脇に受けた傷のせいで力が入り切らず、浅い。


眉間に剣を食い込ませながらも、敵はさらにもう一刀の三日月刀を繰り出し、またしても甲冑の隙間から、その切っ先をラドリッドの左足の付根に深々と突き刺した。


「ぐぅっ…!」


声を漏らしながらも、右の剣を振り下ろし敵の刃を叩き落とし、そのまま自らの剣からも手を離し、力の入らぬ左手の上に添えると、全体重を乗せ、そのまま敵の胴体までも真っ二つに斬断した。


勢い余った剣が地面に深々と突き刺さり、二体に分かれた敵がべちゃりとその左右に落ちた。


ラドリッドは剣から手を離さぬまま息を荒げ、周囲に気を張り巡らせる。


まだいるか……?ここでさらに来られたら、さすがに……。


もはや左腕はほとんど動かず、握っていたはずの剣からもいつのまにか離れ、肩からだらりと垂れ下がっていた。


傷口から溢れ出す血は体に絡み落ち、あっという間に足元に黒い染みを広げていく。


不覚にも急所ばかりを正確に狙われた。


もはや作戦の続行は断念せざるを得ないか。


こんなところで情けない……!


歯噛みし、右手で剣を地面から引き抜き、強く握りしめ構えるラドリッド。


しかし、先程までの戦いがまるで何事も無かったかのように、辺りは静寂と暗闇に包まれて、変わりのない川の流れる音だけが耳に響いた。


もう、終わりか……?


ふっと気が緩みかけたその瞬間、背後から何かが空を切って飛んで来る気配を感じ、振り返りざまに左手で受け止めた、はずだったが、左腕はすでに全く上がらなくなっていた。


しまった、と思った時には、両端が鋭く尖った太い短槍のようなものがラドリッドの腹を甲冑ごと破壊して貫き、その勢いのままぐらついたところへ、さらにもう一閃、右の胸を突き破り、ラドリッドは二本の影を胴に突き立てたまま、地面へと仰向けに倒れた。


「い…いや……」


ラドリッドの背後で流木の陰に座り込んでいたアリシアは、その光景を呆然と見つめていた。


「な……なに……これ……」


ラドリッドは倒れたまま動かない。


「ラ…ラド……ラドリ……ッド……?」


アリシアは震える声で呼び掛けながら、流木の背後からラドリッドの元へと、力の入らぬ体を引きずりながら、必死に這い寄った。






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