生き残るまでニューゲーム
更新いつになるでしょうね…
ハハ!
雨が降っていた。
聞こえてくる音は、耳鳴りのように五月蠅い。
「―――――!」
赤い雨は、服を真っ赤に染める。
神よ…どうして、私なのでしょう?
目を覚ました。ここは何処だろう?見覚えの無い風景である。
まるでイングランドの草原のような風景だった。私がいるのは、小高い山。目の前には、真っ青な池が広がっている。後ろを振り抜けば、青々とした森があった。空には雲一つなく、暖かな日差しがさしていた。
私は何故、こんなところにいるんだ?イングランドに出張にでも来ていたのだろうか?記憶が曖昧な点がある。昨日飲みすぎたのかもしれない。ならば十中八九、田中部長の所為だろうな…。ったくあの田中部長め!
グー、と腹がなる。腹が減っているようだ。現時刻は…時計がない。そういえば、鞄もない。靴や服は自分のものではなかった。
ひったくりか!?やられた…20は入っていたんだが…。
落胆しながら空から「ヒュー」と鳴る音が聞こえた気がして、見上げる。
しかし、そのときには…眼前に迫る火の玉が、私に当たる直前だった。
目を覚ました。ここは何処だろう?どこかで、見たことのある気もする。
指に刺さる草木、その感触に至るまで覚えのあるという、奇妙な場所だった。
私は何故、ここにとどまっているんだろう?
何故か、その思考がよぎって立ち上がる。しかし、立ち上がっても見える風景の高さが大した変化がない。もしかしたらまだ、酒が回っているのかもしれない。
グー、と腹が鳴る。
街は何処にあるだろうか?とりあえず池の周りを歩いてみる。
しかし、先ほどから何か妙だ。
進む距離が明らかに短い。
それに視力も少し前より上がっているような気がする。
コンタクトでもつけていたのだろうか?
あまり詳しくないが、コンタクトは寝てつけると危ないとか聞いたが大丈夫だろうか?
きっと、山城あたりが寝ている俺に着けたのだろう。あいつに聞いてみるか。
と、携帯を探すも、ポケットにないことに気づいた。
そうだった…ひったくりにあったんだった…ってあれ?
ここまで来て、やっと何かおかしな点に気づいた。
これは…と、空を見た瞬間に全てを理解させられた。
「ヒュー」と迫るその火の玉…否、流星群のようなそれは、私の眼前に迫っていた。
目を覚ました。立ち上がる。
一度見た流星群は、とてもじゃないが数えられるほどの量ではなかった。
森に走る。今一度頭の中を整理していきたいが、そんなことよりも走ることを優先させなくてはならない。
しかし、それでも確認しなくてはならない事項が一つ。私の体だ。見下げるといつもの5倍は近くに、地面があった。
息を切らさない内臓器官。
小さな道さえ通り抜ける体。
そして、短い腕、短い足、小さな体。
まるで5歳の子どもじゃないか!
それに動揺しながらも走っていると森が終わっているのが見えた。どうやら小さな森、林という表現の方がよかったかもしれない。
ドカーン、という爆発音が後ろの方から聞こえてきている。そして後から来る爆風が襲い来る。
軽くなった私の体は簡単に吹き飛ばされる。
まずい!
吹き飛ばされる。
木々にぶつかりながら、私の体は宙を舞う。
必死に手を伸ばす。
なんとか生のびようと、木にしがみついた。
しかし、その生の執念をあざ笑うように、眼前にはまた、赤い火の玉があった。
目を覚ました。
走った。ただ真っすぐに、林をいち早く抜け、大地を駆けた。
目を覚ました。
池に逃げ込んだ。深く深くまで、息ができないことなどかまいもせず。
目を覚ま――
穴を掘り、地面に逃げ込んだ。血だらけになりながらもただ必死だった。
目を覚――
希望などないことに気が付いた。どうあっても死ぬ。これは変える事はできない。
目を――
足が動かなくなった。もはや生きる意味はない。そもそも、生きているとは、言えないが。
目――
思考が止まった。次の瞬間に死ぬとわかっている。もう眠ろう。
―
目を醒ました。
何度死んだんだろうか?
なんて、考えるのも馬鹿らしくなるくらいに死んだ。
これは所謂、死に戻りというやつなのだろうことは、もうわかっている。
転生、なんて言葉を信じる気にはれなかったが、体は5歳児のように若かった。
死ぬたびに同じ場所が戻され、景色を戻しているとは思えない。
しかし…
回避手段が一切存在しない。
何百と死んでわかったことだが、ここは断崖絶壁の島のようなところ。
空気が薄いことからここはかなり高いところにあることは確実だ。
大地の広さはそれほど大きくはない。
しかし、島の端は海ではなく、下が見えないほどの濃い霧が立ち込めていた。
何度か落ちて死んだことがあったが、霧の中でいつの間にか死んでいたために原因不明。
しかも、ここが世界のどこか、皆目見当が付かない。標高が高い、と思われるのだが、それにしては、木々が場違いなほどに生い茂っている。
わからない。
次に振ってくる火の玉、流星群だが、これは隕石ではないかと思う。
ひねりのない解答だが、落ちてくるこれは、確認するより早く消滅してしまう。
もし、これを回避したとしても、爆風により、木々に体が打ち付けられて死ぬことも多い。
死に戻りが起きている原因不明。
自殺による死に戻りも起きているため、生涯、死に続けることになることは確実だ。
私が何を…何をしたって…
これを地獄というのならそうなのだろう。
死ぬまで殺される。いや、死なないからなんとも言えない。
心はとうの昔に殺された。
粉々の心では、体は動かない。
しかし、嘆くことはなんの意味もない。
ああ、もう死ぬんだな…
ただ、たった数分の生を、枯れない涙を浮かべながら、嘆いた。
目を醒ます。
これは、必ず体が、心が、いくら拒否しても、目を開けなくてはならない。
ただここが、リセットされるセーブ地点であり、その所作は必然だった。
それがとても憎い。
目を開ければ、美しい景色に交じって、地獄の映像がフラッシュバックする。
吐き気を抑えることもなく、何も入っていない腹から胃酸を吐き出す。
この島に生物は一匹として存在しない。
孤独。
木の実すらない。
腹が鳴る。
これも恒例だ。
そしてこの約三〇秒後に死亡する。
私は世界を恨んで何度も死ぬ。
――八八万九〇九五回目の死亡――
痛みはまだ感じる。
心は氷のように、体はさびた金属のようにぎこちない動きだ。
目には光を移さなくなっている。
虚ろな目が、何を考えたのか空を見上げた。
空から降ってくる火の玉を、しっかりと捉える。
時間の流れはこの瞬間だけゆっくりと進み、私の手は、その火の玉に吸い込まれるように伸ばしていた…。
左手が吹き飛ぶ。
しかし、“死んでいない”。
不可解にも左腕だけをふっ飛ばして、火の玉は突然と姿を消した。
「……ふふふ」
ゆっくりと立ち上がって右手をまた火の玉に向ける。
右手が吹き飛ぶ。
しかし、“死なない”。
またしても右手のみをふっ飛ばして火の玉が消える。
「ふふふふふ」
何を悟ったのかなど理解できるはずもない。
それはただ、体が生きている事に笑ったのだから。
それは、初の勝利と思ったから。
死に戻り、などという不可解極まりないこの世界で、憎き火の玉に勝った、その瞬間の高揚を私は忘れない。
火の玉が迫る。足を犠牲に生き残る。
笑みはこぼれない。
自分の体がどうなっているかなどは大した問題じゃない。
木をぶつけても、岩石をぶつけても、止まることがなかった火の玉が、何故か止まったのだから。
火の玉が迫る。
もう盾にする体は無い。
しかし、それも大した問題じゃない。
この身は死、ごときでは果てない。
果てるのならばそれに越したことはないのだから。
不確かな希望を抱いてまた死ぬ。
だが、次の目覚めは、目醒めとは違う。肉体を伴って、ぎこちない体を一つにできる確信をもって死んだ。
目を覚ます。
これまでで一番の目覚めかもしれない。
起きて早々に左腕を引きちぎる。
「ぐあああ」
痛みを感じる脳を凍結させるように考えを止めた。
大量の血が流れ出すが、かまう必要もない。
腕をさらに細切れにして脱いだ服に詰めた。
腹が鳴る。
後、二八秒五七で火の玉が訪れる。
腕の包みを口に加え、左腕の肉塊を右手に持った。
火の玉が目の前に来る。
それに肉塊を投げた。
すると火の玉が消え去った。
「やはり…」
原因は分からない。
ただ、肉体の一部が火の玉の中心をとらえるとそれのみを破壊して「バァン」という音ともに火の玉が消え去った。
他のところに落ちている火の玉の爆風に見舞われるが、木を背にして耐える。
肉塊に当たる以外は、普通に爆発を起こして、熱風を巻き起こす。
その後も火の玉は落ちてくるが、左腕だったもので耐える。
しかし…
(三七発目…一体どれだけ…)
残りの盾は小指と中指。サイズは関係ないようだった。
しかし、中心を捉えないと、消えはするが爆風が起こる。
(まるでシューティングゲームみたいだ…)
自分の命を懸けたクソゲ―の始まり。
しかし、第一回シューティングゲームはこちらの敗北で終了する。
(盾が…)
三九発目を右腕で防ぐ。
四〇、四一発目をそれぞれ足で止めた。
しかし、四二発目により死亡。
――八九万七五○回目の死亡――
目を覚ます。
起きればすぐに手足の爪をはがした。
それを細切れにする。
擦りつぶした爪に土を混ぜこみ団子を作成する。
その数二八九個。
迫ってくる火の玉にそれをぶつけながら団子を作成。
足りなくなった場合、左腕を切断。
すりつぶして土に混ぜる。
残り七九発。
一心不乱に火の玉を防ぎ続ける。
そして…
「よっしゃぁぁああああ!」
火の玉により地形が元のそれとは変わってしまったその土地で、
私は生きていた。
なんですか?文句でもあるんですか?
そうですか?わかりました!
そう言うなら、私はなにも言いません!
ふっふっ、今更復活!ほったらかしにして約5カ月!帰ってきて書いたのは新作ではなく改訂のみ!
…
反省してます!!!(土下座)
ただし新作を書くとは言ってない