僕は芳賀弥
はじめまして!
【チマー】、始まりました…
超常現象バトルものになるかと思いますが、生温かい目で見守って頂ければ幸いです。
芳賀弥は噂話が大好きな人間だ。
それも都市伝説やら怪奇現象の類のものが特に。
高校では“怪奇研究会”なる同好会に参加する生粋のオカルトマニアと言える。時折テレビで流れる都市伝説番組は弥にとっては既知の情報に過ぎないが、愛読書は都市伝説や心霊現象を主に扱う“チマー”という月刊誌だ。これを弥は近所の小さな書店で年間定期購読を申し込むほどにオカルト分野に関してはひどくのめり込んでいた。
時折、両親には「高校生にもなってそういうのは恥ずかしい」と嘲笑われるが弥は一度たりとも気にしたことはない。
中学時代に一番仲の良かった友人も今ではすっかり両親と同じ意見を弥に言うようになってしまった。それもそうだ。傍から見れば“中二病”を引きずり続ける痛ましい少年としか言い様がない弥の行動は、皆を呆れさせた。
部活動では毎日意気揚々と「今月のチマーに載っていた都内に現れる奇人の正体は多分、西洋から伝わる化物の一種で…」と考察を小一時間、いやそれ以上も語るので、軽い気持ちで入部した部員たちは完全に弥と距離を置いている。
芳賀弥は今日も愛読書を片手に足取り軽く校内を駆け回る。
弥が部内で“幽霊とはなんたるか”を説明した次の日のクラスは、昨夜に放送された人気心霊ドラマの話題で溢れていた。
今流行りの、“街に溢れる凶悪な幽霊を霊媒能力を持つ少年少女が熱いバトルで倒す”といったストーリーのドラマは世間では老若男女に受け入れられている。主演の俳優がクラスの女子に人気のアイドルを起用しているものだから、恐らくクラスの女子の大半は例のドラマを視聴しているのだろう。
かく言う弥は例のドラマを毛嫌いしている。弥自身も「ドラマ相手に文句を言うのもナンセンスだが…」とは思ってはいるが、オカルトマニアとしては“霊とバトル”なんて設定は正直に言えば有り得はしない。それに“戦う(それも肉弾戦)”という形でいかにも霊ではなくモンスターと化したナニカを“霊”と名打つのもどうかと思っている。
かく言う弥の両親は流行には敏感なので毎週きゃあきゃあとはしゃぎながらそのドラマを見ているのだが。
昨夜は「弥も一緒に見ようよ」と母親に誘われたがきっぱりと「そう言ったパチモンは見ないよ」と断った。
無理してクラスメイトの話題に付いて行く気がそもそもない弥はクラスに溢れる有象無象を軽く聞き流した。耳に装着したヘッドホンから流れている音声は、先月号のチマーに付属していた“降霊しやすくなる音楽”だ。ちなみにこれを聞くのは今回で二百を超えるが、降霊が成功したことは一度もない。