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太平洋の突風  作者: 鶴岡
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十五試水戦・諸元

○十五試水上戦闘機要求仕様

・最高速力:574km/h以上(高度5000メートル)

・航続性能:巡航速度で6時間以上

・武装  :20mm機銃2挺+7.7mm機銃2挺、乃至13mm機銃2挺+7.7mm機銃2挺、乃至7.7mm機銃4挺

・爆装  :30kg爆弾2発


 十五試水戦。東京飛行機十五試水上戦闘機は、1940年(昭和15年)9月に提示された上記、十五試水上戦闘機要求仕様に従って東京市荒川区にある東京飛行機によって下記案が提案された事で全てが始まった。


○東京飛行機十五試水上戦闘機(案)

・全幅  :15.4m

・全長  :13.1m

・全高  :5.8m

・主翼面積:36.7m2

・自重  :3020kg

・発動機 :川崎航空機ハ9-II乙

      水冷V型12気筒800馬力(双発)

・最高速力:時速537km/h(高度5,000メートル)

・航続性能:巡航速度で6時間

・武装  :20mm機銃2挺+7.7mm機銃2挺

・爆装  :30kg爆弾2発


 これが海軍内で議論を呼んだ。

 誰も知らないような新興航空機メーカーが海軍向け戦闘機に陸軍のエンジンを載せるというのだ。

 確かに800馬力を双発にすれば合算1600馬力で、液冷エンジンと適切な空力設計を施せば優速なる水上戦闘機が誕生するだろうし、そのための同等出力の液冷エンジンが海軍に無いのもまた事実であった。

 だがやはり陸軍のエンジンである。

 判断に困った海軍はとりあえず、陸軍から海軍へのハ9の供給が可能ならば試作許可を出そう。と決めた。

 どうせ陸軍さんも俺ら海軍なんて嫌いだろうし無理だろう。と考えての事だったのだが―――


「水上戦闘機にハ9?水上戦闘機って何に使うの?」


「侵攻した島嶼で滑走路設備が整うまで陸上機の代わりに使う?」


「ああ、なるほど。それならコッチのエンジンと融通が利いた方が良いな」


「幾つ使うんだ?川崎に連絡しとくよ」


 ――という流れで、陸軍が滑走路建設するまで海軍が航空支援を行う為の戦闘機だと勘違いしたのか、もっと何か別の理由があったのか、まああっさりと川崎航空機からハ9-II乙と技術者がやってきた。


 そして昭和16年(1941年)8月には早くも初飛行を済ませ、去る9月5日の試験飛行では九六式艦戦相手に巴戦では適わないものの、急降下と急上昇を組み合わせた一撃離脱戦法によって見事に翻弄してみせたのだ。

 さらにはあの急降下飛行中の速度が750km/hを超えていたらしく、海軍のとある最新鋭艦上戦闘機に対しても一撃離脱戦法ならば秀でるのではないかとの見方もあるほどだ。


 結果として、東京飛行機十五試水上戦闘機は晴れて東京飛行機N1T1一式戦闘飛行艇として制式採用され、共に十五試水戦の競作に名乗りを上げていた川西航空機での開発は一向に進まないまま中止となった。


 一説には、「無名で陸軍被れの東京飛行機」と「無名の航空機会社よりも開発が遅れている川西飛行機」に海軍が痺れを切らして三菱に最新鋭艦上戦闘機にフロートを取り付けた水上戦闘機の試作を命じていたなんて噂もあったほどだった。


 余談であるが、新興メーカーであった東京飛行機では生産能力が不足し、その不足分を川西飛行機で補う事となったのは皮肉であろうか。

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