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太平洋の突風  作者: 鶴岡
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三式襲撃艇・咆哮

 陸軍航空隊の制空部隊は苦戦していた。


 イギリス戦爆連合の護衛戦闘機であるスピットファイヤに纏わり付かれ、肝心の爆撃機に攻撃を与えられないのだ。

 それでも今、二式戦がスピットファイヤをなんとか振り切ってランカスターに迫り12.7mm機関砲4門による射撃を浴びせて主翼を炎上させ、その勢いもそのままに後続のブレニムにも射撃を浴びせている。

 他方、一式戦を見てみればスピットファイヤを振り切る速度があるわけでもなく巴戦を強いられているが、着実に1機ずつスピットファイヤを撃墜していた。


 だがそれも間に合わなかった。


 イギリス爆撃機が爆弾を投下し始めたのだ。

 路上に乗り捨てられたトラックや戦車が至近弾で横転し、直撃弾で爆砕されていく。

 機関砲中隊らも九八式20mm高射機関砲で必死に応射して少なくない命中弾を与えるが、トラックや戦車の居並ぶ一本道の路上に機関砲を据えていたのが拙かった。他の目標と一括りに爆撃されてしまったのだ。


 万事休す。誰もがそう思った。

 その咆哮が聞こえたのはそんな時だった。


 突如としてドカドカドカとけたたましい咆哮が空に響いたのだ。それも一度のみではなく何度もだ。

 その空を見上げてみれば、あのランカスターの右主翼が根元から弾け飛び、あのボストンの胴体前半分が崩落し、あのブレニムの胴体が爆発と共に消し飛んだ。

 そして火炎と黒煙を纏って墜落するイギリス爆撃機の隙間を双発機が突風の如くすり抜けた。


 あれは、三式襲撃艇だ。

 チンドウィン川に架かる橋を渡った時に見えた、あの双発飛行艇が続々とイギリス爆撃機に殺到していく。

 これに慌てたスピットファイヤが三式襲撃艇に向かおうとするが、それを逃がさぬとばかりに一式戦に後方を取られて墜とされていく。


 そうして最後まで残ったランカスターが三式襲撃艇に粉砕されて空戦の幕は降りたのだった。


 結局、我が方の損害は地上部隊の先鋒を務めていた戦車中隊や機関砲中隊が酷かったものの、道路脇の森に逃げ込んだ俺達歩兵は流れ弾以外の大した被害も無かった。

 大隊長殿は明日には敵航空基地に更なる空襲を加えるので、もうこのような空襲を受けることは無いと言っていた。本当にそうだと良いのだが。


 あとイギリス爆撃機を次々と屠っていったあの三式襲撃艇ら、戦闘機との空中戦が出来る飛行機ではないから空中退避が命じられたのに抗命して空中戦に参加したらしい。

 しかもどうやら空戦が終わって帰還した後、顔を真っ赤にして怒った飛行戦隊長の大佐に向かって「空中退避した先でイギリス爆撃機に出くわしたので撃墜した」とか、搭乗員らは口を揃えてそう言い放ったらしい。


 まったく、頼もしいことだ。


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