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太平洋の突風  作者: 鶴岡
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三式襲撃艇・退き口

 1943年9月23日。

 インド攻略の第一作戦、インパール作戦は三式襲撃艇の部隊配備を待ちに待ち、初期計画から半年の遅れをもって開始された。


 もちろんその半年の間何もせず待ちこねていたわけではない。

 インドとビルマの国境にそびえるパトカイ山脈のビルマ側に道路を建設し、チンドウィン川には戦車の通行さえ可能な鉄筋コンクリート製の全長200m超の長大な橋が2本も架けられたのだ。


 この進撃路を英領インドを目指して行軍する陸軍地上部隊を援護するため上空を飛ぶのは一式戦や二式戦からなる陸軍航空隊の制空部隊だ。


 またインパールのイギリス軍基地へ爆撃せんと向かう九九式双発軽爆や百式重爆と、その援護に就く一式戦もいる。

 しばらくして彼ら戦爆連合の機影がパトカイ山脈の向こうへ消えて、さほど間を置かずして山脈の向こうから先の戦爆連合と同規模の機影が現れ近づいてくるのが見えた。

 初め、誰もが先ほどインパールに向かった戦爆連合が引き返して来たのかと思った。そして、何故引き返したのかと考えた。


 だが目の良いパイロットが気付いた。


「エンジンが4つの、四発爆撃機がいる!奴らイギリスの戦爆連合だ!」


 そう、その機影はパトカイ山脈の向こうで日本陸軍の戦爆連合とすれ違ったイギリス空軍の戦爆連合だったのだ。

 その陣容は四発重爆のランカスター16機、双発軽爆のブレニム16機とボストン8機、そして護衛戦闘機のスピットファイヤ47機である。

 すぐさまこの急報は地上に伝えられ、地上を行軍する陸軍地上部隊は対空射撃を任とする機関砲中隊らを除いて蜘蛛の子を散らすように辺りの森の中へ逃げ込んだ。一番慌てたのはチンドウィン川に架かる橋を渡っていた部隊だ。敵機が到達する前に橋を渡り終えるか引き返すかしなければならない。皆が顔を青くして走った。


 そしてチンドウィン川で駐機していた三式襲撃艇にも擬装の間に合わない機には空中退避が命じられた。

 悲しきかな、初実戦が空中退避である。パイロットらは悔しさに身をふるわせながら機体を離水させ、イギリス戦爆連合へと機首を巡らせた。


 ……イギリス戦爆連合へと機首を巡らせた。いや、何故だ?

 三式襲撃艇は形こそ一式戦艇に似ているが、その内実は操縦席周りの12mm厚の鋼鉄製装甲に37mm機関砲を搭載する重量級襲撃機であり戦闘機では無い。

 さらにいえばイギリス戦爆連合のスピットファイヤは三式襲撃艇と同等の速度ながらも優れた旋回性能を併せ持つ優秀な戦闘機である。あれらと空中戦をしようものならあっという間に後ろに付かれて撃ち落されてしまう。

 それなのに何故、敵中に向かうのか。

 飛行場中隊らは困惑を顔に浮かべるのみであった。

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