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太平洋の突風  作者: 鶴岡
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三式襲撃艇・諸元

 先日のキ九三の初飛行は成功裏に終わったが、その後に行われた試験には多くのトラブルが生じた。またそのトラブルの多くが37mm機関砲ホ二〇三に起因していた。

 東京府西多摩郡の陸軍航空審査部で行われた飛行試験では、37mm機関砲を射撃した際の衝撃に操縦席のモノコック装甲が耐え切れず、格納式降着装置の基部をも巻き込んで変形。降着装置を展開できなくなったキ九三が多摩川に不時着水するまでに至った重大事故まで発生していた。

 しかも37mm機関砲ホ二〇三自体が、対戦車用途には徹甲弾の貫通能力が不足するほか、そもそもの信頼性に欠けることが判明したのだ。


 これには東京飛行機も陸軍も慌てた。これではインド攻略作戦に間に合わない。


 そこで急遽陸軍はありったけの機関砲をかき集めた。日本国内のみならず、支那の八路軍にソ連軍からの鹵獲機関砲、果ては半年前まで敵だったアメリカの機関砲までも取り寄せた。

 そして万国博覧会の様相を呈した射撃試験の結果、キ九三に搭載可能かつマチルダ2型歩兵戦車の75mm装甲を射貫可能との判定が下ったのは以下の機関砲である。


・ラインメタル3.7cmFlaK18(中国国民革命軍から鹵獲)

・ボフォース40mm機関砲(英米軍から鹵獲)


 さらに追記するならばタングステン鋼徹甲弾を用いて300m以内で射撃した場合のみ射貫可能という条件があったし、ボフォース40mm機関砲に至っては重量過大でキ九三には1門しか搭載出来ないという問題があった。

 しかし幸いにしてラインメタル3.7cmFlaK18は以前、ラインメタルからライセンスを購入して一式37mm高射機関砲として少量ではあるが生産していたという経緯もあり、ラインメタル3.7cmFlaK18及び一式37mm高射機関砲がキ九三の搭載機関砲に決まったのであった。


 また東京飛行機でも、強度の不足している操縦席周りの装甲板を8mm厚から12mm厚に増厚させた他、アメリカから溶接技師を雇い入れて溶接品質の改善に努めた。


 だが、何も悪い事ばかりでは無かった。

 確かにこれらの設計変更によって試作一号機よりも重量が嵩んだ結果として相応の性能低下が見られたのだが、それを帳消しに出来る程の良い誤算もあったのだ。


 それは、アメリカからの輸入が再開された高オクタン価ガソリンと、ハ9-IIIエンジン開発で培われたマーリンエンジン由来の過給器技術である。

 ドイツから輸入したダイムラー・ベンツDB 601エンジンのカタログスペック上の出力は1175馬力であったのだが、これを川崎航空機でハ40としてライセンス生産する際にハ9-IIIの過給器へ換装し、さらにアメリカ製高オクタン価ガソリンを使用した結果、なんと1400馬力を超えてしまった。

 その結果キ九四は、重量増による性能低下など無かったと言わんばかりの高性能機になってしまったのだ。


 そしてキ九三はめでたく制式採用、三式襲撃飛行艇の制式名称が与えられた。

 その諸元は以下の通りである。


○キ九三東京飛行機三式襲撃飛行艇

・全幅  :16.4m

・全長  :14.1m

・全高  :6.2m

・主翼面積:39.2m2

・自重  :4240kg

・発動機 :川崎航空機ハ40

      水冷V型12気筒1420馬力(双発)

・最高速力:662km/h(高度2800メートル・非爆装)

      607km/h(高度2800メートル・爆装)

・航続性能:巡航速度で5時間

・武装  :37mm機関砲×2及び12.7mm機関砲×2

・爆装  :250kg爆弾×2及び50kg爆弾×4

・装甲  :12mm厚表面滲炭装甲(操縦席周囲)

・備考  :水陸両用

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